WANIMAが驚異的動員を達成した理由ーー石井恵梨子がバンドの成長と“夢の大きさ”に迫る

WANIMAが歌う果てしない夢の大きさ

 満員御礼。ツアーファイナルとなる今回のZEPP Diver Cityのみならず、2日前にSTUDIO COASTで行われたセミファイナルも超満員だった。言うまでもなく、この2箇所は都内で有数の大型ライブハウス。昨年4月に行われた1stミニ・アルバムのツアーファイナルはO-WEST、同年夏のツアーファイナルは渋谷クアトロだったのだから、この短期間でどれだけの飛躍力か。初のフルアルバム『Are You Coming?』が破格のセールスを記録したあと、彼らが手にしたのは驚異的な動員であった。

 だがこれがピークとは思えない。2階の立見席まで埋まったZEPPだが、1階フロアに降りてみれば後方は案外余裕がある。そのぶん前方がとんでもない密度になっているのだ。腕組みして様子を見るクールくんがいない。とりあえず連れて来られたボンヤリさんもいない。みんな全力でWANIMAに飛びつき、それがすべてのエネルギーだと言わんばかりに顔を輝かせている。もはや「ノッている」なんて言葉では語りきれない光景だった。もう全員が「完全にどうにかなっちゃってる」感じ。こういう景色をライブハウスで見たのは何年ぶりだろう。凄い。凄すぎる。

160301_wa_3.jpeg

 

 若き日のKO-SHIN(ギター&コーラス)とKENTA(ボーカル&ベース)が憧れてコピーしたというモンゴル800。ゲストで登場した彼らが、MCで客席の年齢層リサーチをしてくれた。上がった手の数を見たところ、10代が3割、20代が5割、30代が2.5割か。もちろん40代もいるし両親に手をつながれた幼児や小学生もいたのだが、特筆すべきは圧倒的多数を占める10〜20代のエネルギーだ。ぴかぴかの肌に汗を滴らせ、衰え知らずの体力をステージにぶつけ、何度でも訪れるカタルシスに拳を突き上げる。目に涙をためて抱き合う女子たちも多数。思い思いの感情を爆発させる姿はなんとも美しいが、同時に小さな疑問も浮かぶ。えーと、若者ってロック離れしてるんじゃなかったっけ?

 実態は知らない。30代後半の私は週刊誌やネットに転がる話を流し読む程度だ。いわく、若者は音楽に価値を見出さない。熱苦しいロックサウンドよりも、まだアニソンやボカロのほうが親しみやすい。ネットが出会いの場だからSNSでの協調性が大事。空気を読まずに悪目立ちするとアウト。さらには酒もタバコもやらないのが普通で、セックスにもあまり興味がない。身の丈に合わない大きな夢を語るのは格好が悪い……。こういう「今どきの若者像」がどこまで本当かはわからないし、そういう枠からハミ出るやんちゃ者こそがライブハウスに集まるのかもしれないが、ただ、それにしてもズレがありすぎる。(いわゆる)「今どきの若者」の価値観と、WANIMAが歌っている夢の大きさは。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「ライブ評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる