DJ KRUSH × tha BOSS特別対談 KRUSH「すべて繋がってる、バタフライ・エフェクトだよ」

DJ KRUSH × tha BOSS対談


BOSS「まだ全然若いと思わせてくれるのは、KRUSHさんとか札幌の元気な先輩だよ」

20151011-krush-03_th.jpg

 


BOSS:ところで、KRUSHさんは海外のライブ音源って出そうとは思わないんですか?


KRUSH:よく言われるんだよ、それが。


BOSS:絶対出した方がいいですよ。だって音源、ありますよね?


KRUSH:あるある。


BOSS:昔から思ってましたよ。YouTubeでKRUSHさんの海外のライブ映像とか見ると、すげぇ盛り上がってるじゃないですか。あれはしっかり伝えた方がいいと思う。


KRUSH:まあ、海外でどんな感じだったのかは知られてないからね。



ーーKRUSHさんのアブストラクトなDJミックスで海外のオーディエンスがガンガンに盛り上がってるのを見たときは、すごく衝撃を受けました。派手なサウンドで単純にテンションを上げるんじゃなく、深い部分で激しく高揚させる感じというか。こういう表現もあるんだって、目が覚める思いでした。



KRUSH:それこそ戦ってきた結果だよ。最初の頃はBPM60くらいの曲をかけると「何だこれ?」って反応で、まったく盛り上がらなかったんだから。DJ SHADOWと俺とMo’ Waxのツアーか何かで、ちょうど「トリップホップ」って呼ばれ始めていた頃だと思うんだけど、ドイツではまだぜんぜん知られてなくて、現場でポカーンとされちゃってさ。それでもめげずに何年もやってきて時代がちょっとずつ追いついてきて、「Kemuri」がチャートに入るようになったりとかして、ようやく客が入るようになった。


BOSS:ところで、SHADOWとは今も付き合いあるんですか?


KRUSH:うん。何年か前にフェスに出たときに会ったけど、子供が双子でさ。奥さんが日本語ベラベラなんだ。それからVADIM(DJ VADIM)もコンスタントに音源出してるし、CAM(DJ CAM)も最近ロシアの同じハコで一緒にまわしたよ。みんな今もいろいろやってるよね。



ーー次世代のアーティストだと、フライング・ロータスやロバート・グラスパーなどの音楽からも、KRUSHさんたちの遺伝子を感じます。



KRUSH:ただ、そっちの方に寄せて俺が音楽を作ったらダメだと思うし、あくまでも俺のスタイルが軸にあることが大切。それを踏まえつつ、テクノとかエレクトロニック・ミュージックとかの世界で気になったヤツと一緒にやることはある。フライング・ロータスも俺の音楽を好きだって言ってくれてたみたいだし、きちんと消化されて受け継がれていくのはいいことだと思う。


20151011-krush-04_th.jpg

 

BOSS:それこそバタフライ・エフェクトだね。俺もヒップホップの枝葉にはいるなと思う。ただ、さらに次世代ってなると、ラップって人生説く感じだから、年下でもよっぽどスゴいヤツだったら聴こうって気になるけど、単純に自分が年齢を重ねてくると聴いてられないところもある。「お前なんかに人生を語られたくないから」って自分が出てくる。こっちもこっちで背中を追いかけて憧れていたいじゃん。俺のHIPHOPの原点はそこだから。俺は今44歳だけど、まだ全然若いと思ってる。思わせてくれるのはKRUSHさんとか札幌の元気な先輩だよ。


KRUSH:アハハ。


BOSS:ヒップホップという音楽自体、まだまだ過程なんだよ。

ーー今回のお二人のアルバムもまた、過程であるということですね。



KRUSH:そうだね。11年ぶりのリリースだから、俺はちょっと緊張したけど。まあ、それは置いといて、お待たせしましたって感じかな。とにかく楽しんでもらいたいです。


BOSS:若いって口では言ってても、実際この年齢になると、精神的には成熟していくけど、肉体的にはだんだん衰えていくのは確か。その中でどうやってフレッシュでいられるか、好きなことに熱中していられるか……あとは逆に落ちぶれていくこともあるよね。昔はできたのに今はできなくなってしまったみたいな。人生やり直しが利かないくらいの年齢になってくると、やるせなさみたいなものも出てくる。そういうこともカッコよく歌う。それが、44歳のヒップホップかなって思っている。
DEV LARGEが亡くなったとき、当時現場に足を運んでいた人達が追悼イベントに集まって、みんな大合唱していたっていう話を聞いて、「彼らや彼女らがまだこの国のどこかで生きてるんだ」ってことがわかった。今は現場に顔を出さないかもしれないけど、彼らや彼女らがどこかで生きているってことがわかったときに、そこは死を悼むとても悲しい場なんだけど、まだ生きている俺にはそれがまた少なからず希望になったというか。そういう人達に「ちょっと聴いてみてよ」っていう気持ちはある。若いリスナーには、これが日本の純粋なヒップホップだから聴いてみて欲しい、バッチリ楽しめるはずだから。俺はKRUSHさんみたいに「お待たせしました」みたいな境地にはまだ行けないけど(笑)。


KRUSH:そうやってすぐプレッシャーかけるんだから(笑)。

(取材=松田広宣/構成=上野拓朗/写真=下屋敷和文)

■リリース情報
DJ KRUSH『Butterfly Effect』(CD)
2015年10月28日(水)発売
価格:3,000円(税込)
Es81-2015

tha BOSS『IN THE NAME OF HIPHOP』限定盤(2CD)
2015年10月14日(水)発売
価格:4,320円(税込)
THA BLUE HERB RECORDINGS / TBHR-CD-026

tha BOSS『IN THE NAME OF HIPHOP』通常盤(CD)
2015年10月14日(水)発売
価格:3,240円(税込)
THA BLUE HERB RECORDINGS / TBHR-CD-027

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる