YEN TOWN BAND、12年ぶり復活ライブで見せた「新しい可能性」とは? 柴那典が現地レポート

YEN TOWN BANDの「新しい命」

 YEN TOWN BANDが約20年ぶりの新曲「アイノネ」をリリースする。1996年に公開された岩井俊二監督による映画『スワロウテイル』に登場し、Chara演じる主人公・グリコがボーカルを務めた架空のバンドが、“現実世界”での本格的な活動を開始することとなった。

 9月12日、新潟・十日町市で開催された『大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ 2015』で12年ぶりとなる復活ライブを行ったYEN TOWN BAND。

 「アイノネ」はこの日に初披露された楽曲だ。

 85万枚を超えるヒットを記録した代表曲「Swallowtail Butterfly~あいのうた~」、オリコン1位を記録したアルバム『MONTAGE』と共に90年代を席巻したYEN TOWN BANDは、なぜ今の時代に復活を果たしたのか? そしてこの先にどんな展開を見せていくのか? そんな観点から、この日に行われた復活ライブ「大地の芸術祭 2015 YEN TOWN BAND @NO×BUTAI produced by Takeshi Kobayashi」をレポートしたい。

 2000年から3年に1度開催され、現在では世界最大級の国際芸術祭となった「大地の芸術祭」。この日のステージは、その会場の一つである新潟県十日町まつだいの「農舞台」だ。そもそも小林武史がYEN TOWN BANDの再始動に思い至ったきっかけも、「大地の芸術祭」の総合ディレクター・北川フラムに声をかけられたことにある。グローバル化が進み経済合理性が重視される風潮へのアンチテーゼとして、過疎の集落を開催エリアにする芸術祭と、貨幣をテーマにした映画で架空の街「円都」(=YEN TOWN)を舞台に活躍したYEN TOWN BANDのあり方に、共通のものを感じ取ったのだという。いくつかのインタビューでも、単に過去を懐かしむための復活ではないことを強調している。

 そんな意味が込められた、一夜限りのライブ。それは、息を呑むような特別な体験だった。

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