柴 那典『フェス文化論』(特別編):『SUMMER SONIC 2015』
『SUMMER SONIC』今後のビジョンは? 「アジア最大の音楽見本市になっていけばいい」
「ライブ会場で一緒に英語で歌っている人が増えている」
――特に、今ではロックフェスにアイドルが出るのは当たり前になりましたが、『サマソニ』はそれに関して一日の長がありますね。Perfumeもいち早く出演していました。
平山:2007年のことですね。その時は入場規制が掛かってしまうくらいでした。当時はいわゆるフェスに来るような音楽ファンがPerfumeのライブを観る機会がそんなになかったと思うんです。でも、実際に観るとパフォーマンスがすごい。そこから「これはアリなんじゃないか」と思われるきっかけの一つになったんじゃないかと思います。Perfumeはいまやトップアーティストとして海外公演もしていますし、今年はソニックマニアでプロディジーと同じステージに立ちます。ももいろクローバーZやBABYMETALもそうですね。BABYMETALなんて、最初は先ほど言ったサイドショウのステージにお笑いの人に並んで出ていましたから。
――『SUMMER SONIC』におけるBABYMETALのストーリーは、すごく面白いことになっていますよね。最初はフードエリア脇の小さなステージに立っていたのが、いまや『SUMMER SONIC』がモデルとした『Reading and Leeds Festivals』のメインステージに立ってしまっている。
平山:いい話ですよね(笑)。
――『SUMMER SONIC』が始まった時には思いも寄らなかったストーリーだと思います。
平山:確かにそうですね。彼女たちもメタルファンからいろいろ言われていたわけですが、いまやレディングのステージに立つまでに認められている。『サマソニ』もいろんなアーティストを出すことによって認められて、アーティストにも大きくなっていってもらいたい。斜に構えているような人にも、話のタネにでもいいから、ちょっと見てみてほしい。それで「すごいね!」となれば、やっている側としてもありがたい。そういうのも、ひとつの理想的なフェスのあり方だと思うんです。
――今年は、ラインナップではケミカル・ブラザーズとファレル・ウィリアムズがヘッドライナーにいます。このブッキングの傾向についてはいかがでしょうか。
平山:今年は、より海外のポップシーンを意識している並びになっていると思います。アリアナ・グランデやイマジン・ドラゴンズ、マックルモア・アンド・ライアン・ルイスのように、去年のグラミー・アーティストやチャートに長く名前が乗っていたような人たちが名を連ねている。一方でケミカルとかマニックスやプロディジーといったロックフェスに出演してきた人たちも混ざっている。それが同じ『サマソニ』の土俵に乗っているというのが今年のラインナップですね。
――『サマソニ』は毎年活きのいい新人をフックアップしているわけですが、今年の注目はどの辺りでしょうか?
平山:個人的にはウルフ・アリスが好きですね。90年代のオルタナ感、ソニック・ユースみたいな良さがある。スレイヴスもオススメです。
――ここ最近では、日本でも洋楽の情報をリアルタイムで受け取っているリスナーが増えているような印象があります。現場ではどうでしょうか。
平山:インディーのバンドはまだちょっと時差があるかなと思っています。アイドルとかポップミュージックのファンの方が時差は少ない感じですね。ワン・ダイレクションに代表されるようなアイドルグループや、サム・スミスくらい大衆性のある人だと、あんまり時差がなく、海外の温度感とイコールに近くなってきているのかなという感じはします。
――それはやはりここ数年の音楽を巡る状況の変化によるところも大きいと思いますか?
平山:それはあるでしょうね。今は音楽を聴く機会が平等になってきていますからね。
――YouTubeや『Apple Music』や『LINE Music』、『AWA』などの登場によって、海外のリリースとの時差がなくなった。
平山:それは大きいですね。いろんなアーティストをフォローしていれば、言葉はわからなくてもリリースは入ってきますよね。そうすると、興味があれば聴くわけだし、今までは雑誌を介して伝わっていた情報が直接入ってくるので、それだけでも時差はかなり減っている。クリーン・バンディットやスモールプールズのように、海外でブレイクしたばかりの人たちが今年のラインナップにも入っているのは、時代性を意識してきた『サマソニ』ならではのものかなと思います。あと、言葉の問題は相変わらずあると思うんですが、それも少し変わってきているように思っていて。
――というと?
平山:見たところ、ライブ会場で一緒に英語で歌っている人が増えているんです。勉強して歌っている人もいるでしょうし、もちろん英語ができる人もいると思いますけど、とにかく大合唱が起きている。
――そうですね。6月のZEDDの来日公演でも大合唱になったと聞きました。
平山:そう。ほぼ全員が歌ってましたからね。ZEDDは今年の『SUMMER SONIC』でもメインステージに出演するので、見所の一つになると思います。