野村義男が語る、ギターコレクターの心得「どんなギターにも、それぞれ全部に意味がある」

「ギターの話してるときはみんなに『バカだなぁ』って思われたい」

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──たまに見かける「誰が買うんだろ?」と思っていた奇抜なデザインのギターが、結構たくさん載っていたので「あ、やっぱり持ってるんだ!」とちょっと嬉しくなりました。

野村:そこは誰も行かないところに行かないと!

──リバースV<Gibson Reverse Flying V 2007:P71>も絶妙ですよね。

野村:リバースVは、我慢できなくて売りに出している人もたくさんいますけど。そこを我慢したからこその何かが起きるはず。

──普通に弾きにくそうですもんね。

野村:いや、ところが座ると最高に弾きやすいんですよ。ネックが上に向いた普通のギターです。そこが大事なんですよ、普通は「弾きにくそう」って思ったら買わないですよね。まず、手に入れましょう。そして、「実は弾きやすい」ということを知るのが大切。これは弾きにくいだろうと思っていたけど、意外にも弾きやすかったギターの代表です。逆に、立って弾くと、羽が邪魔して指板が見えないので弾きづらいんですけどね(笑)。ということは、こんなに角は伸ばしちゃいけないんだという、構造的な勉強にもなりましたし。

──実際、手にしてみて初めてわかることが大切だと。本書にも「“レス・ポールは実は重くない” “ネックが細い1958年もある”というのは、オーナーになってみて初めて言える」と書いていますが、実に説得力のある言葉です。

野村:「テレキャスって、パッキンパッキンだよね」という人もいるけど、「今のは、そうかもね」っていう。昔のモノ、特に50年代のモノはレス・ポールより太い音していたわけだし。だからジミー・ペイジも最初は使っていた。そういうのも自分が実際に買って、音を出して知ったこと。

──ヴィンテージもののスペックだったり、知識だけで、あたかも所有してるかのように語ってしまうと、誤解も生まれ易いですよね。

野村:オールローズのテレキャス<Fender Rose Wood Telecaster:P36>も、2本あるんだけど、69年製はセミ・ホローで、70年製は通常のソリッド。全部ローズウッドだと重たいということで、フェンダーの苦肉の策でホローボディを作ったと思うんですよ。くりぬけば軽くなると思ったら、重量は変わらなかった。これも両方持っていたらわかるじゃないですか。「オール・ローズ重たいよね、でも掘ってあるヤツは軽いんだぜ、詰まってるヤツは重いんだぜ」って言われても、「ん、想像かな?」と思う。実際はどっちも重たいんだぞと。

──たくさんのギターを所有して、持ってきたからこそわかることでもありますね。

野村:ギター以外でも、何かしらたくさん集めているコレクターの人たちはきっと同じだと思うんです。たとえば、メガネを集めている人がいたとして、興味ない人には「どれも一緒じゃん、度があってればOK」だし、当人は「そういう言い方ないじゃん」ということだと思うんですよ。「この耳にあたるところあるじゃん? ここがさー」「そんな細かいこと言われてもわかんねぇよ」みたいな。でもそこにこだわりがある。ギターも細かくそれぞれのこだわりがあるから、他のコレクターの細かいこだわりって、すごく面白くて聞いていて楽しいんです。「バカだなぁ」って、いっぱい思わせてくれる。だから僕もギターの話してるときはみんなに「バカだなぁ」って思われたい、それを本にしただけ。これ読んで「バカだなぁ」と思ってくれたら、すでに、おまえは罠にハマっている!(笑)。

──色んな人に手に取ってもらいたい本ですね。

野村:電子書籍化の話もあったんですけど、それはやりたくないって言ったんです。「本は、本でしょ」という。手軽に持ち歩きたいと言われても、昔はそうだったんだよという、頑なな昭和のおじさんなので(笑)。子供の頃に眺めていた昆虫図鑑のような、本の嬉しさってあるからさ。もっと細かく見たいのに、と思うのもわかるけど、だったら、自分で調べたり、実際に楽器屋さんに行ったりして欲しいな。

──まさに、“思わず検索したくなる”ギターコレクションですね。

野村:ギターをよく知らない人たちも、この本をペラペラっとめくって、「なんだこの形?」と思ってくれれば、それだけで嬉しい。ギターという楽器は知っていても、こんなに種類がある、こんな形もあるということを知らない人も多いので。まだまだ僕のだけがすべてじゃないですけどね。なので、第一弾として、この本が出ました。

──ということは…?

野村:第二弾は……30年後かな?(笑)。

(取材・文=冬将軍)

■書籍情報
『野村義男の“思わず検索したくなる”ギター・コレクション』
ギター・マガジン編集部
発売日:2015年6月25日
価格:2,200円(+税)
単行本(ソフトカバー): 144ページ
出版社:リットーミュージック
全ギターの前にヨッちゃんが立つ特大ポスター付き。

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