『野村義男の“思わず検索したくなる”ギター・コレクション』出版インタビュー

野村義男が語る、ギターコレクターの心得「どんなギターにも、それぞれ全部に意味がある」

「音が変わることを気にしていたらなにも出来ない」

 

──コレクションするだけでなく、カスタマイズや改造、塗装までご自身で手がけることも多いじゃないですか。野口五郎さんから譲り受けたギターを勝手に塗り替えて怒られたという有名なエピソードもありますけど。

野村:ムスタング<Fender Mustang 1976:P42>ね。3回くらい塗り替えて、今はペイズリー柄になってますけど。

──「サンバーストと黒どっちがいい?」と訊かれたんですよね。それで、サンバーストは渋すぎるから黒を選んだ、と。

野村:その時にサンバーストと言ってたら、ストラトだったんですよ、残念。黒と言ったからムスタングだった。

──ペイズリー柄もそうですが、雑誌の切り抜きを貼ったりするカスタムもしていますね。

野村:シンディーちゃん<Ibanez RG550 "CINDY" 1987:P81>ね、これ何本も作ったんですよ。“裸のおねーちゃん”シリーズ。

──昔はペイントだったり、シール貼ったり、みんな色々やってましたよね。僕も昔、雑誌の改造特集で野村さんの記事を拝見して、「雑誌の切り抜きをギターに糊で貼って、楽器屋へ持っていってポリ吹いてもらう」というのを真似したことがあります。

野村:素晴らしい! でも、糊じゃなくて、リキテックスというメーカーの絵の具の薄め液、これを全部指で伸ばして貼るんです、段差が出来ないように空気を抜きながら。でないと、あとでポリ吹いて磨くときにボコボコになる。こっちのギター<Kramer Pacer Early 1980's:P90>は、全部で700枚くらいの切手なんですけど、それも1枚1枚丁寧に指で貼って。ただね、僕、シールを貼るのは許せなかったんですよ。

──Charさんは結構シール貼ってますよね?

野村:あー、だってあの人、ギター全然知らないもん(笑)。

──(一同爆笑)

 

──この仮面ライダーが入ってるギター<Godin Radiator Cool Sound 1999:P78(写真左)>もすごいですよね。

野村:ゴダン! 今日、持ってきてますよ! 仮面ライダーのオフィシャルバンド“RIDER CHIPS”やってるんで。ライダーなギターはなにかなと考えて作ったヤツ。

──おお〜。

野村:ちょっと振ってみたら、スペース出来たんで。(ガラガラ振りながら)ほら、あと2〜30体は入るんじゃないかと。昭和〜平成のライダーたちがひしめき合っています。

──このギター自体の構造はもとからですか?

野村:開けるまで解らなかったんだけど、もとからこういう構造だった。たぶん、そういうアコースティックな鳴りを狙って設計されたんでしょうね。でも、空洞があるならもったいないなと。透明のピックガード作って、最初は電飾入れようかと思ったんだけど、ノイズの問題があるから難しいという話になって。変わりに仮面ライダーを入れることにしました。ショッカーの秘密基地を知っているので、そこに「ライダー、300体くらいお願い出来るかな?」と頼みました(笑)。もともとはホワイトパール柄のピックガードにリッケンバッカーみたいなピックアップが2個ついていたのを、1ハムバッカーにして。そうすれば、もっとライダーたちが入るでしょ。

──これだけ詰めたら、音は変わりました?

野村:えっ!?  僕は……そんなことを気にしてギターを作ったことがないのでわからないです(笑)。音が変わることを気にしていたらなにも出来ない。色塗り替えたり、雑誌の切り抜き貼っちゃったりしてるものだから、よく「音、変わりませんか?」と聞かれるんですよ。それってミュージシャンシップに乗っ取った素敵な考え方なんだけど。でも、ギターの改造は出来上がったギターの音が、好きになれるか、なれないかじゃないですかね。良くなるか悪くなるかはやってみなければわからない。PRSは色を塗ったことで、結果的に音が良くなったし。「音が悪くなるかな?」って思っちゃう人はそもそも絶対に改造はしちゃいけない。

──改造をして、「失敗しちゃった」「やらなきゃよかった」みたいなこともあると思うのですが。

野村:白いテレキャス<Fender Telecaster 1978:P34>があるんですけど、ピックガードの下を掘ったんです、重いから。それでわかったことがある。ピックガードの下の木を全部掘っても軽くはならない(笑)。いやぁ、全然軽くならなかったねぇ。まだ重い、フェンダーは頑固だね。

──座繰りなどの木工も自分でやりますよね。

野村:ウチに木工作業のグラインダーとか、電動トリマーとかはあるんで。コンター加工、ボディーのエッジを取ったりとか、家の裏で「ガーーーーッ」と音立てながらやってます。もともと、プラモ少年だし、家が「野村モータース」というバイク屋で、工具は何でも手に入ったから。今でも修理も含めて、自分が出来る範囲ですけど、夜な夜な家で酒飲みながら弄るのが楽しい時間ですね。

──今までそうした改造で、一番苦労して作ったギターはどれでしょうか?

野村:あー、ホントに大変だったギターは手放しちゃったんだけど、さっきの“裸のおねーちゃん”シリーズのダブルネックを作るのに、ギター2本くっつけたのは大変だったかな。大工のみっちゃんっていう同級生がいたんですよ。彼の家の工場に夜行って、テーブルと一体化したような電動のこぎりあるじゃないですか。それを二人がかりで「みっちゃん、ここの線まっすぐだからね!」って言いながら、一方のギターは上切って、もう一方は下切って、ボンドでくっつけて……。それで、6弦と9弦のダブルネックを作ったんです。で、“裸のおねーちゃん”の写真を貼って、『シックスナイン』っていう(笑)。でも完成してみたら、まったく使い道がないってことで手放しちゃった。

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