Juice=Juiceの過去・現在・未来が凝縮! 初アルバム『First Squeeze!』をピロスエが徹底レビュー

<Disc 2:The Brand-New Juice>

01. Wonderful World
02. CHOICE & CHANCE
03. 愛・愛・傘
04. 生まれたてのBaby Love
05. 選ばれし私達
06. Ça va ? Ça va ? (サヴァサヴァ)
07. GIRLS BE AMBITIOUS
08. 愛のダイビング
09. チクタク 私の旬
10. 未来へ、さあ走り出せ!
11. 続いていくSTORY

 いわゆるオリジナルアルバム部分に相当するのがこのディスク。オリコン週間チャート1位を獲得したことでもおなじみのシングル「Wonderful World」「Ça va ? Ça va ? (サヴァサヴァ)」の2曲をのぞいた9曲がアルバム用新曲。それらは主要作家によって大まかに5つのタイプに分類することができる。

タイプ1:つんく♂

05. 選ばれし私達[作詞・作曲:つんく 編曲:山崎淳]

 この「選ばれし私達」は、ファンに披露された順番としては9曲のなかで一番古い。ツアー「News=News」21公演目、2014年9月21日の静岡・Live House浜松窓枠にて、ライブ用の新曲として初披露された。「伊達じゃないよ うちの人生は」も、元々はライブ用新曲としてツアー初日から披露されていたものが後日CD化したという経緯があり、本曲も今回のアルバムでようやく音源化された。

 この頃はまだつんく♂の作詞作曲が当たり前の状況だったが、結果的にこの曲がJ=Jにとって現時点で最後のつんく♂提供曲となっている。

 アレンジ担当の山崎淳はハロプロ楽曲のレギュラー編曲家のひとり。ロック調の楽曲アレンジを手がけることが多く、モーニング娘。「悲しみトワイライト」、美勇伝「恋する♡エンジェル♡ハート」、Berryz工房「サヨナラ 激しき恋」、℃-ute「JUMP」、スマイレージ「同じ時給で働く友達の美人ママ」など多数。

 そしてこの曲もヘヴィなギターが鳴り響く歌謡ロック。ワイルドさという点からいえば、後述の「CHOICE & CHANCE」と一二を争う一曲だ。J=Jの置かれた状況を暗喩しているかのような歌詞も面白い。

Juice=Juice「選ばれし私達」(40:20〜)

タイプ2:近藤薫

11. 続いていくSTORY[作詞・作曲:近藤薫 編曲:近藤薫、HASSE]

 この曲は、ツアー「News=News」の後に行われた東阪ホールライブ「Juice=Juice ファーストライブツアー2015 特別編!! 〜Special Juice〜」の初日、5月2日の中野サンプラザにて後述の「チクタク 私の旬」と共に初披露された一曲。J=Jにとって初のスローバラード曲で、彼女たちのこれまでの活動とこれからの決意が投影された歌詞も相まって、ファンの心に深く響いた。今後も大切な一曲となっていくだろう。

 作詞・作曲を担当した近藤薫は、愛知県出身の男性シンガーソングライター。シングル「ハロー&グッバイ」が『テニスの王子様』OVA版の主題歌としてヒット。楽曲提供もV6「HONEY BEAT」「ジャスミン」(共に作詞・作曲)、東方神起「Hide & Seek」(作曲)、柏木由紀「Birthday wedding」(作曲)など多数あり。また、名古屋のグループアイドル・deraについてはシングル4枚を始めとしたほぼ全曲の作詞作曲を手がけている。

 編曲に連名でクレジットされているHASSEは、近藤とのタッグも数多いコンポーザー。主な担当楽器はキーボードやピアノで、本曲ではプログラミングを担当している。

 なお、この曲と後述の「CHOICE & CHANCE」の2曲にはMVが制作されている。アルバムの特典Blu-ray Discには未収録だが、テレビやウェブ上などでプロモーションの一環として現在オンエア中。

Juice=Juice「続いていくSTORY」

タイプ3:星部ショウ

09. チクタク 私の旬[作詞:児玉雨子 作曲:星部ショウ 編曲:CMJK]

 中野でこの曲が初披露されたとき、快哉を叫んだファンも多かったのではないだろうか。J=Jのレパートリー内にはそれまであまりなかった可愛くポップでキュートな曲調。軽快なビートや目覚まし時計のSEなどは、ピチカート・ファイヴに代表される渋谷系サウンドを連想してしまう。それでいて、歌詞をよくチェックしてみると女の子の旬について言及されたシビアな内容でもあり、そのギャップも魅力の一端である。

 ライブ披露時には作家クレジットが不明だったが、のちに判明する。作詞の児玉雨子と編曲のCMJKはすでに他のハロプロ楽曲に参加しておりプロフィールもよく知られているが、いまハロプロファンの間でもっとも注目されているコンポーザーが、作曲の星部ショウである。

 星部氏の名前が最初に出てきたのは、アンジュルムの7月22日発売予定の新曲「七転び八起き」「臥薪嘗胆」それぞれの作曲者として。ライブ初披露は5月26日の武道館だったのだが、その良曲を作曲した氏のキャリアが、調べてもまったく出てこないのだ。そしてJ=Jの本アルバムでも4曲に参加しており、いずれもかなりの良曲率となっている。さらにまだ曲自体は公開されていないが、9月2日発売予定のこぶしファクトリー「ドスコイ! ケンキョにダイタン」の作詞作曲まで担当していることから、氏の正体について「誰かの変名では?」「(アップフロントレーベルマネージャー)橋本慎の変名では?」「複数人の共同ペンネームでは?」など様々な憶測が飛んでいる。

 7月7日にハロー!プロジェクトオフィシャルショップ東京秋葉原店で行われた宮本佳林トークイベントにて、「スタッフさんに「星部ショウさんって誰ですか?」と訊いたら「会ったことあるよ」と言われた」という逸話が飛び出したり、7月9日の同所でのアンジュルム福田花音のトークイベントでは、司会のアップフロント西口氏から「橋本さんではない」という発言が出たりしている。

02. CHOICE & CHANCE[作詞・作曲:星部ショウ 編曲:平田祥一郎]

 これ以降の6曲は、現在展開中のツアー「Juice=Juice LIVE MISSION 220 〜Code1→Begin to Run〜」の初日、6月21日の横浜Bay Hallにて初披露されたもの。

 「CHOICE & CHANCE」はマイナーコードのアッパー曲。デジタルロック的な曲調で、ケミカル・ブラザーズなどを彷彿させるサウンド。過去のハロプロ楽曲だと℃-ute「ひとり占めしたかっただけなのに」などを連想した。こういった曲調もこれまでのJ=Jにはあまりなかったもので、曲の激しさと共にダンスの激しさも特徴だ。次々と入れ替わる歌パートも性急さを演出している。

 編曲の平田祥一郎は、ハロプロ楽曲ではおなじみのメインアレンジャー。J=J曲を手がけることが多く、ディスク1収録のシングル12曲のうち7曲が氏の担当。

Juice=Juice「CHOICE & CHANCE」(40:55〜)

08. 愛のダイビング[作詞・作曲:星部ショウ 編曲:土肥真生]

 ファンキーなサウンドは従来のJ=Jの路線からの連続性も感じさせつつ、さらにフュージョン・タッチのビートが新鮮さをもたらしている。フュージョン的なビートの導入という点では℃-ute「愛ってもっと斬新」を連想したりもするが、こちらはより爽やかな印象。流れるようなビートと歌ラインのシンクロが聴いていて胸躍る。曲終盤にはドラムやベースのソロフレーズまである。

 編曲の土肥真生は過去のハロプロ楽曲のいくつかに参加しているが、モーニング娘。「林檎殺人事件」などのカバー曲を担当することが多い。他にはBuono!「JUICY HE@RT」など。

04. 生まれたてのBaby Love[作詞:星部ショウ 作曲:masaaki asada 編曲:松井寛]

 こちらもファンキーながら、よりソウル・ミュージック寄りのサウンドに仕上がっている。それもそのはず、編曲は東京女子流などでおなじみの松井寛が担当。是永巧一のギター・プレイも効いている。作曲のmasaaki asadaこと浅田将明は株式会社ファイブエイス所属の音楽プロデューサー(同社には前山田健一や板垣祐介、藤澤慶昌らも名を連ねている)。EXILE、HOME MADE 家族、AZUなどへの提供楽曲多数で、女性アイドルではアイドリング!!!「オレオレGO!!」、S★スパイシー「SGC★スパイシー」(どちらも作曲・編曲)など。

 本曲は高木紗友希のソウルフルな歌唱がより活かされた、陽光を感じさせるライト・タッチな一曲だ。曲終盤のメンバー一人一人によるフェイク回しは、なんと高木の考案したフレーズによるものだという。また、間奏ではメンバーのアドリブによる振り付け誘導が行われるのが定番となっており、参加した観客をより楽しい雰囲気へ誘うこと間違いなし。この曲の振り付け練習の様子は、ウェブ番組「GREEN ROOM」にてオンエアされている。

Juice=Juice LIVE MISSION 220 〜Code1→Begin to Run〜リハーサル編(18:20〜)

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