金子厚武が両バンドのサウンドを分析
ゲスの極み乙女。とindigo la Endの「音楽至上主義」とは? 同時リリースの最新シングルから分析
6月17日にゲスの極み乙女。のシングル『ロマンスがありあまる』と、indigo la Endのシングル『悲しくなる前に』が同時リリースされた。川谷絵音が所属するこの2バンドの作品が同時に発売されるのは、昨年4月のメジャーデビュー以来。あれからまだ一年と少ししか経っていないにもかかわらず、両バンドを巡る状況は大きく変化している。それでは、2枚のシングルから両バンドの現在地を探ってみよう。
"先鋭的であることこそがポップ"ゲスの極み乙女。
ゲスの極み乙女。はこの一年で、「国民的バンド」へと片足を踏み入れたと言っていいだろう。昨年10月に発表されたファーストアルバム『魅力がすごいよ』はオリコンチャート初登場4位を記録し、楽曲はドラマやCMなど数多くのタイアップに起用され、「ロマンスがありあまる」も、話題の映画『ストレイヤーズ・クロニクル』の主題歌である。また、先日はまさに”国民的バラエティ番組”である『しゃべくり007』へも出演し、その知名度はさらに上昇。放送後の5月31日に日比谷野外音楽堂で開催されたワンマンライブでは、早速番組内で使われたネタを披露して、オーディエンスから大きな歓声が上がっていたのも記憶に新しい。
しかし、彼らはこうした状況に決して満足することなく、音楽的には4月に発表したシングル『私以外私じゃないの』から、新しいフェイズに突入。シンプルなビートや構成の曲で盛り上がるロックシーンの現状に対する、ある種の皮肉が込められた「キラーボール」がストレートに受け止められてしまったことなどもあり、ライブのあり方と向き合ったメジャー一年目を経て、2015年はよりプログレッシブなフュージョン路線へと進み、そのアンサンブルはますます研ぎ澄まされている。ファットなベースとカッティングによるファンキーな曲調に、クラシカルで耽美なフレーズを乗せ、間奏にはオペラチックなコーラスも配した「私以外私じゃないの」は新章の幕開けを告げる文句なしの名曲だったし、「ロマンスがありあまる」ではBPM170前後の疾走感のある曲調に乗せ、ギターとピアノ、さらには2台のピアノが複雑な絡みを聴かせるのが非常に印象的だ。
もちろん、彼らはマニアックな方向に突っ走っているわけではなく、メロディーはあくまでキャッチーで、曲タイトルをサビで印象的に響かせる手法にもブレはない。"先鋭的であることこそがポップである"と言わんばかりに、あくまで大衆に響く名曲を生み出さんと邁進している。その証拠に、Zeppを中心とした春のツアーを経て、6月20日と21日にはバンドにとって過去最大のキャパとなる幕張メッセでのワンマンを敢行。さらには、すでに秋のアリーナツアーの開催も決定するなど、今後も大きな会場をメインに活動を続けていく。