アジカン・後藤正文が提示する“強い表現”とは? 「殴り合ったりするとかじゃなくて、幸いにも俺たちにはペンがある」

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「何かしないとヤバいという直感がある」

――今の後藤さんはロック・ミュージシャンとして政治的な発言も引き受けたりするわけですが、10代の時の自分がそういう風になっている自分を思い描いていましたか?

後藤:全く思い描いてなかったですね。歌にしてまで人にわかってほしいことなんてなんにも無かったです。歌で自分の思いを伝えるって、なんでそんなことしなきゃいけないんだって思ってた。当時、先輩に「どうして日本語の歌を歌えないのか」と問われても、僕は「何も伝えたいことが無いから、スワヒリ語だって英語だっていいんだ」って言ったこともありますし。口に出して気持ちよければ何でもいい、と。

――でも、今は言葉を通して伝えたいものがある。

後藤:そうですね。ちゃんと歴史を振り返れば、ポップミュージックにどんな言葉を乗せていったら、どう共有されてどんな効果があるかって、いろんな人が考えながらやってきたわけですよね。日本語にしても、どういう言葉がロックに上手く合わせることができるのか、そういう先人たちのトライアルの一つの成果として現在の自分の歌詞があるはずで。そういうことも意識します。そして、何年も前から「ちゃんと書きたい」という気持ちにはなっています。というより、今は「書かずにはいられない」と言った方が近いのかもしれないですね。

――書かずにはいられない。そこには何らかの危機意識みたいなものもある?

後藤:ある種のトリガーというかフックのようなものを用意してでも、みんなが立ち止まる瞬間を作りたいと思いますね。

――それは何故でしょう。

後藤:それはもう、今がロクでもない時代だと思うからですね。僕の感覚では、生きてきた中で一番社会に閉塞感がある。これをどうにかしたい。どうやったらいいかわからないですけど。深刻さを訴えるのか、あるいは別のレイヤーで楽しみを立ち上げて人々を集めるのか、とにかく、何かしないとヤバいという直感がある。この直感に対しては正直になるのが表現者としては正しい気がするんですよね。

――いろんな曲の歌詞にも、その危機感が現れていると思います。

後藤:警報ランプみたいなものが灯っているイメージがずっとあるんです。それがただの気のせいであったらいい。余裕があって豊かな社会だったら僕も歌うことが変わると思いますよ。そうじゃないから。書くってことには、最悪な状況を描くことによってそうなることを未然に防ぐという力もあると思うんですよね。シグナルはどこからともなく届いている気がする。「書きなさい」と言われている直感がある。それだけなんですよね。ことさらに政治的なことを訴えかけているわけではないんです。

――そういう意味でも、後から「これはこのことを指していた」とわかるような言葉の使い方が選ばれているなと思いました。

後藤:「これは何のことを言ってるのかな」とか、聴いた人に考えてほしいですけどね。社会的なことはどうしても気になります。例えば、機会は公正であってほしいと思う。生まれながらに親を選べない子供達が、金銭的な理由で高等な教育を受けるチャンスが減ったりするのはおかしいと思う。そして、僕はミュージシャンだから、世の中の人が週末に音楽を楽しむ余裕のある社会のほうがいいと考えています。だから、そのためにできることがあればやりたい。そういうことを邪魔するような連中のことは率直に良く思っていないから、どうやって対抗していくかが文化の役割だという気がする。俺たちはみんなを幸せにするためにやっているんです。「そんなことお前がやらなくていいよ」と言われたとしても、自分以外の誰かが幸せになってほしい。そのためには戦わないといけないこともある。

――戦わないといけない、というと?

後藤:殴り合ったりするとかそういうことじゃなくて、幸いにも俺たちにはペンがあるんだから、ちゃんと書かなきゃいけないよね、ということです。強い表現とは何かを考えなきゃいけない。クラムボンのミトさんのインタビュー(http://realsound.jp/2015/03/post-2808.html)にあった、「強い表現じゃないと立ち向かえない」という言葉はすごく響きました。僕からすると、デイヴ・グロールのスタジオで8ビートを録ることが今のアジカンにとって一番強い表現だと思ったからそうしたわけで。歌詞についても、それに相当するのは何だろうというのはずっと考えています。今すぐに言えるような答えはわからないけれど、「こういうことを書きなさい」と言われているような直感だけはある。時間が経ってみないと、自分でも言語化できないんです。たとえばこうやって柴さんと話しながら、「そういう風に考える人もいるんだ」って、僕の中でも客観化、対象化しているところもあるし。

――これは一つの仮説なんですけど、アジカンのここ数作のアルバムのタイトルって、すごく象徴的なんですよね。CDが売れなくなった時代の『マジックディスク』、震災後の『ランドマーク』のように、あってほしいもの、なくなってほしくないものが、タイトルに掲げられている。

後藤:なるほど。確かにそうかもしれないですね。

――今回のアルバムに『Wonder Future』というタイトルがついているということに、その連続性も感じるんです。つまり、そういう未来があってほしいという願いがこもっている。

後藤:それは間違いないと思いますね。いい意味での「ワンダーフューチャー」があってほしい。そういう思いはアルバムに託しています。素晴らしい未来が来たらいいのに、と。ワンダーじゃなくてワンダフルだったらいいのにって。それは、俺たちがどうにかするしかないですよね。だって、真っ白なんだから。そういう気持ちかな。僕は少なくとも、次の世代にはよりよいバトンを渡していきたい。そしてそのためには、俺たちも受け取ることをまだやめられない。受け渡しをちゃんと続けていくことが文化だから。素敵な未来が来たらいいなと思います。

(取材・文=柴 那典)

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ASIAN KUNG-FU GENERATION『Wonder Future』

■リリース情報
『Wonder Future』
発売:2015年5月27日(水)
価格:初回生産限定盤(CD+DVD)¥3,700(税抜)
   通常盤(CD・初回仕様のみデジパック) ¥2,913(税抜)
   完全生産限定アナログ盤 ¥3,500+税 ※6月24日リリース予定

<CD収録内容>
01.Easter / 復活祭
02.Little Lennon / 小さなレノン
03.Winner and Loser / 勝者と敗者
04.Caterpillar / 芋虫
05.Eternal Sunshine / 永遠の陽光
06.Planet of the Apes / 猿の惑星
07.Standard / スタンダード
08.Wonder Future / ワンダーフューチャー
09.Prisoner in a Frame / 額の中の囚人
10.Signal on the Street / 街頭のシグナル
11.Opera Glasses / オペラグラス

<DVD収録内容>
「Easter / 復活祭」ミュージックビデオ
「Standard / スタンダード」ミュージックビデオ
アルバム「Wonder Future」のレコーディングに密着したドキュメンタリー映像

■ライブ情報
『ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour2015「Wonder Future」』
7月5日(日) 埼玉 戸田市文化会館
7月8日(水) 群馬 ベイシア文化ホール
7月11日(土) 栃木 宇都宮市文化会館
7月18日(土) 神奈川 横浜アリーナ
7月22日(水) 北海道 旭川市民文化会館
7月24日(金) 北海道 札幌市民ホール
7月28日(火) 愛媛 松山市民会館・大ホール
7月29日(水) 香川 サンポートホール高松・大ホール
8月24日(月) 神奈川 鎌倉芸術館大ホール
8月25日(火) 神奈川 鎌倉芸術館大ホール
8月29日(土) 石川 本多の森ホール
8月30日(日) 新潟 新潟県民会館
9月2日(水) 埼玉 大宮ソニックシティ 大ホール
9月5日(土) 静岡 アクトシティ浜松
9月6日(日) 静岡 富士市文化会館(ロゼシアター)
9月11日(金) 岩手 大船渡リアスホール
9月13日(日) 福島 いわきアリオス
9月18日(金) 鹿児島 鹿児島市民文化ホール第一
9月20日(日) 福岡 福岡サンパレス ホテル&ホール
9月22日(火) 広島 上野学園ホール
9月23日(水) 岡山 倉敷市民会館
9月25日(金) 兵庫 神戸国際会館 こくさいホール
10月2日(金) 岐阜 長良川国際会議場
10月4日(日) 愛知 名古屋国際会議場センチュリーホール
10月9日(金) 大阪 オリックス劇場
10月10日(土) 大阪 オリックス劇場
10月12日(月) 宮城 仙台サンプラザホール
10月15日(木) 東京 東京国際フォーラム ホールA
10月16日(金) 東京 東京国際フォーラム ホールA
10月24日(土) 沖縄 沖縄市民会館大ホール

席種 / 料金 指定 / ¥5,940 (税込)
※3歳以上チケット必要
http://www.akglive.com/wonderfuture/

『ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2015「Wonder Future」- Latin America』
Chile
Date: Saturday 14th, November
SUPER JAPAN EXPO
Movistar Arena, Santiago
www.superjapanexpo.cl
※イベントへの出演。

Brazil
Date: Sunday 15th, November
Teatro Carioca, Sao Paulo
http://www.cariocaclub.com.br/

Argentina
Date: Wednesday 18th, November
Venue: Teatro VORTERIX, Buenos Aires
http://www.elteatroonline.com.ar/vorterix/

Mexico
Date: Friday 20th, November
Venue: Plaza Condesa, Mexico DF.
http://www.elplaza.mx/

※チケット発売日及びその他詳細は後日オフィシャルサイトにて発表。

www.asiankung-fu.com

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