「いずれは人の声も、楽器も必要なくなる」佐久間正英が夢見る、未来の音楽とは

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 日本を代表する音楽プロデューサー佐久間正英氏が、音楽シーンへの提言を行う集中連載。最終回となる後編では、現在のアイドルシーンから"新たな音楽"の可能性までを語ってもらった。

前編:「今はライブ全盛」は一面的な見方 ライブハウスのシステムに無理がきている
中編:「僕が今もし20歳だったら、けっこう燃えていた」佐久間正英が見通す、音楽業界の構造変化

――最近のアイドルブームについては、どう捉えていますか?

佐久間:個人的にはあまり聴きませんが、今出ている作品は決して悪くないと思います。ただ、新しい音楽はなく、アレンジも含めて有り物の再構成でできているので、突出したものもない、という印象です。
 バンドの音楽は個人の音楽性によるものだから、いつの時代でも新しいものは出てきますが、商業音楽としてのアイドルの作品は、世に出る前に制作サイドがふるいにかけることになる。だから、突出したものより安全なもの、つまり過去にウケたものを再構成した作品が出てくる、という面があるのではないでしょうか。

――佐久間さん自身も、80年代前半にはアイドルの楽曲プロデュースを手がけていました。

佐久間:当時のことを思い返すと、作曲家の筒美京平さんなどには突出した才能がありました。メロディラインだったり、アレンジのちょっとしたアイデアに、いつも「なんでこんなことができるのか」と驚かされたものです。良い悪いという話ではないのかもしれませんが、それと比べると今の楽曲は、当たり障りがなく、覚えやすいけれど、半月で忘れてしまうようなものが多いように思います。

――佐久間さんは以前、ポピュラー音楽において歌詞の重要性はどんどん下がっていると指摘されています。

佐久間:歌詞に関しては、世界的に見てもあまり重要ではなくなっていますね。つまり、言葉にリアリティがなくてもよくなっている。例えば、ピンクレディーの「UFO」や「ペッパー警部」という言葉には、よく分からないけれど身近な感覚で捉えることができるリアリティがあったと思います。これも良し悪しではなく、言葉の捉え方が変わった、ということでしょう。
 その象徴が、初音ミクをはじめとするボーカロイドの流行だと思います。基本的に人の言葉は人の声を通してはじめて心に響くわけで、言葉が重要視されていたら、ボーカロイドはここまで流行らなかったはず。"言葉の意味"ではないものがリスナーに響いている時代なんだと思います。

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