ポピュラー音楽界における「時間の流れ」は遅くなっている? 最新のALチャートから考察

参考:2015年3月23日~2015年3月29日のCDアルバム週間ランキング(2015年4月6日付)

 最近のアルバムチャートを眺めていてふと頭をよぎるのは、ポピュラーミュージックの世界における時間のスピード感の鈍化について。例えば、3年という時間の長さ。ビートルズなら『ア・ハード・デイズ・ナイト』『ビートルズ・フォー・セ—ル』『4人はアイドル』を立て続けにリリースして20世紀最大のアイドルとしての黄金時代を極め、『ラバー・ソウル』『リボルバー』、とどめに『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』を完成させて20世紀最高のアーティストの座に君臨するまで。これすべて、たった3年弱の間に起こった出来事。ポピュラーミュージックにおいて60年代の3年間はその後の20年間くらいの価値があったということがよくわかるエピソードとも言えますが、70年代にスティーヴィー・ワンダーは3年間で『インナーヴィジョンズ』と『ファースト・フィナーレ』と『キー・オブ・ライフ』を作ってポピュラーミュージックの歴史を変えて、80年代にプリンスは3年間で『パープル・レイン』と『アラウンド・ザ・ワールド・イン・ア・デイ』と『パレード』(とついでに2本の映画)を作ってまたしてもポピュラーミュージックの歴史を変えたわけで。確かな実感を込めて言えるのは、21世紀に入ったあたりから、日本の音楽シーンに限らず、世界的にも数年前のヒット曲がまるで先週流行っていた曲のように感じられるようになったこと。そう感じるのは、自分が歳をとったからだけではないはず。ポピュラーミュージックの世界において、「時間の流れ」は時代を追うごとに確実に遅くなってきています。

 というわけで、今週1位のEXILEのアルバム『19 -Road to AMAZING WORLD-』について。オリジナルアルバムとしては前作『EXILE JAPAN』以来、3年3ヶ月ぶり。EXILE史観的には、その間に「第三章」と「第四章」の断絶があり、リーダーのパフォーマー引退、新メンバーの加入、別プロジェクトの本格的な大ブレイクなどなどいろいろあったわけですが、『19 -Road to AMAZING WORLD-』のアルバムとしての概要のみを記すと以下のようになります。全14曲中、4曲は過去のベストアルバムに収録済、7曲はそれ以降のシングル曲、残りの3曲が新曲。中でも、既にベストアルバムに収録されていた曲をオリジナルアルバムに再収録するというのは禁じ手と言えるもので、それは数字としても表れました。オリジナルアルバムとしては一応これで9作連続の1位を獲得したことになりますが、初週の売上げは前作の35万枚から4割以上減の20万枚強。ピーク期だった2009年の『愛すべき未来へ』から比べると約4分の1。今年リリースされたアルバム『PLANET SEVEN』が既に80万枚近いセールスを上げている三代目 J Soul Brothersとの世代交代が起こっていて、今回の結果はプロデューサーのHIROサイドとしても半ば意図的なものなのではないかという見方もされていますが、それにしても今回の初週20万枚というセールスは、この3年間、時間の流れが遅くなってきた現在の音楽シーンにおいてさえ、EXILE本体の進化がいかに停滞していたかを証明しています。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる