17歳から主催イベントを続ける地下アイドル 姫乃たまがオーガナイザーとしての歩みを振り返る

 それからは毎年、誕生日とライブハウスから依頼された時に、主催イベントを開催してきました。地下アイドル主催と偽る事務所ではありませんが、ただの主催ではつまらないので、高校卒業だのリリースだのと、何かと理由をつけていました。むしろ主催イベントにあわせて、学業や作品制作を頑張ってきた節すらあります。

 ただし最初の頃は困難もありました。まず難しかったのは人の技術に値段をつけることです。チケットバック制でギャラの相場も決まっている同業の地下アイドルはまだ予想がつくのですが、他ジャンルのミュージシャンや、カメラマンなどの現場スタッフになるとまったく見当がつかないのでした。そのほかにも、会場との金銭的なやりとり、リハーサル時間の配分や、バンドの使用機材が理解できないと言った初歩的な問題もありました。

 たった一度だけ、目を離している隙に、出演していたアイドルがPAさんに喧嘩を売ったことがありました(後に、自分のCDリリースイベントを遊びの約束でドタキャンするという、しょうもない不祥事で解雇されていた)。あれは困ったなあ。しかし、これはかなりイレギュラーな事件であり、基本的には周囲の協力のおかげで平和にことは運んでいました。

 こうして数年、ライブハウスで音楽イベントを開催しているうちに、ライブ設備がないイベントスペースからも主催の依頼がくるようになり、その都度、コンセプトに趣向を凝らしたイベントを開催するようになりました。

 会場のために始まった工夫が高じて、ここ数年は取り壊しが決まっているビルを貸し切った10時間耐久イベントや、ストリップのお姉さんを招いた泥レス、スカパンクバンド御用達のライブハウスにレンタルした流しそうめんの機材を設置するなど、風変わりなイベントばかり開催しています。もともと飽き性なのです。同じことを継続できないかわりに、何かに熱中することもないので、イベント中も客観的でいられるのかもしれません。

 そして先日、22才の誕生日イベントを迎えました。ラッパー、昭和歌謡、ストリップ、小劇団など、例年以上にバラエティに富んだゲストさんでした。ここ数年ずっと指摘され続けてきたことでしたが、今年も問題点は私自身の出演時間にありました。コンセプトを重視するあまり、私のパフォーマンス時間が短くなっていたのです。

 こうした状況を受けて辿り着いたのが「主催イベントは雑誌編集」という考え方でした。イベントは私が編集した一冊の雑誌です。一見、出演者もジャンルレスで脈絡がなく、私のパフォーマンス時間も短いですが、編集長は私であり、全ての演者に私の趣味嗜好と観客へ伝えたいことが詰まっています。

 以前はワンマンライブをやったこともありましたが、自分ばかりパフォーマンスしていては広がりにも限界があります。そもそもライブイベントへは普段から多く出演しているので、気に入ったらそちらに来ていただければ、というわがままな気持ちもなくはないです。

 ただし、「主催イベントは雑誌編集」という考えは、誰もがピンとくる発想ではないと思います。そして解釈の理解を観客に求めるのは、私の力量が足りない証拠でもあります。しかし、あの満員の会場には、理解できてしまう観客が多いのもまた事実です。ブレイクすることは、誤解を含めて多くの人に知られることだと言います。そういう意味で私はまったくブレイクする兆しがありませんが、ある意味いまが最もよい状況であるかもしれません。

■姫乃たま(ひめの たま)
地下アイドル/ライター。1993年2月12日、下北沢生まれ、エロ本育ち。アイドルファンよりも、生きるのが苦手な人へ向けて活動している、地下アイドル界の隙間産業。16才よりフリーランスで開始した地下アイドルを経て、ライター業を開始。アイドルとアダルトを中心に、幅広い分野を手掛ける。以降、地下アイドルとしてのライブ活動を中心に、文章を書きながら、モデル、DJ、司会などを30点くらいでこなす。ゆるく、ながく、推されることを望んでいる。

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