『ボールズ・オン・ザ・ラン VOL.2』レポート
ボールズがカジヒデキとのライブで見せた可能性 “うた”を深く追求した新曲群も披露
続いて登場したボールズは、小気味良いギターリフで幕を開ける「SING A SONG GIRL」と、山本剛義(ボーカル・ギター)のセンチメンタルな歌声と歌詞が胸を刺す「通り雨」という、メジャーデビュー作『スポットライト』からの2曲でスタートした。続いて音源化されていないものの、以前のライブから披露していた人気曲「魔法」を披露。ジャングリーなギターと、親しみのある山本の声が眩しいポップソングで、一気に会場の温度を上昇させた。
この日最初のMCでは、今年初めての東京公演ということもあってか、普段あまり話さない池田健(ギター)が暴走。唐突に自身の母がテニス肘になったという話を展開し、観客とメンバーを置き去りにして笑いを誘った。そんな池田に対し、山本は愛のこもった指摘をしつつ「新曲やります」という前置きをし、まだタイトルも決まっていない楽曲を演奏。耳なじみのあるメロディと山本の節回しがどこか一昔前の歌謡曲を思い起こさせるノスタルジックな一曲だった。5曲目はインディーズ時代からの人気曲であり、彼らの知名度を一気に上昇させた「Youth」。同曲は元来、疾走感のあるライトなポップソングだったが、かつてよりも山本の歌い方にセクシーさが増しており、バンドとしての成長を改めて感じさせられた。
6曲目には、こちらもライブでは何度か演奏しているものの、音源化はされていない新曲を披露。同曲はタイトル通りに山本と池田、星野隼一(ギター)のトリプルギターが絡み合いながら、タイトな谷口のドラムと阪口晋作(ベース)のアグレッシブなベースもしっかりと前面に出ており、バンドとしてのレベルアップを強く感じる一曲だった。
ボールズはここからまたもやこの日初披露となる新曲を連発。7曲目となったこの新曲は、これまでの彼らが持っていたレパートリーのどれにも当てはまらない、清涼飲料水のCMに使われそうな開放的でフルドライブな楽曲で、今年のボールズをさらに上のステージに押し上げる一曲になることを予感させた。続けて山本がスタートからゴールまで一切無駄のないスムーズなMCを披露したのちに演奏された8曲目(こちらも新曲)は、これまで歩んできた道を振り返るようなミディアムバラードで、良い意味でSHELTERのステージには似合わないようなスケール感があった。この日訪れた観客は、同曲が5年後、10年後にもっと大きな会場で歌われている風景を頭に描いていたかもしれない。
そしてライブ終盤では、ギターをタンバリンに持ち替えて歌う山本の姿が数年前よりも遙かに大きく見えた「Akutagawa trip」と、泣きメロを奏でるギターリフが夏の終わりを連想させる「メルトサマー」を立て続けに演奏し、ボールズは一旦ステージを後にした。