SKE48とNMB48、なぜシングル同日リリース? 次世代への流れを”保留”した戦略を読む

 先週2月13日放送の「ミュージックステーション」(テレビ朝日系)にNMB48が出演し、11thシングル曲「Don't look back!」を披露した。同曲は3月31日発売予定、卒業直前の山田菜々がセンターを務めることで、彼女のグループ在籍期間のラストを飾る楽曲となっている。

 そもそも、先月の「AKB48リクエストアワー セットリストベスト1035 2015」で3月にシングルがリリースされる旨の報が出た際、このシングルに置かれた力点は山田へのはなむけとはやや異なる場所にあった。当初発表されていたのは、3月31日にNMB48と同時にSKE48もシングルを発売するということ、すなわち、姉妹グループ同士の「対決」を促すような意味がこのリリースには込められていた。

 しかし、NMB48がまず披露した新曲「Don't look back!」が、あくまで山田の卒業に合わせて彼女をセンターに据えるものであり、歌詞にも山田の背中を押すような前向きな言葉が織り込まれたことで、同曲の意義を姉妹グループ同士の「対決」に回収するには違和感も強くなったように思う。その印象を跡づけるようにAKB48グループ総合プロデューサーの秋元康は、「ミュージックステーション」放送翌日の14日朝に、トークアプリ「755」で両グループの同日発売について、「それぞれのレコード会社の調整がつかなかったから」とやむない事情であることを説明し、48グループの「対決」を目的としたものではないことを強調した。レコード会社等の諸事情によるものというこの説明は、同日発売となることが発表された1月23日に、すでにSKE48劇場支配人今村悦朗がGoogle+に投稿していた内容の繰り返しではあるが、48グループのトップに立つ秋元がこのタイミングで言明したことで、運営の立場があらためて示されたかたちになる。

 もとより、今回のSKE48、NMB48両者のシングルを、同じ水準で「対決」の俎上にのせるのは少し難しい。繰り返すように、NMB48にとっては昨年から表明されていた山田卒業へのカウントダウンの時期である。山田センターで発表する同シングルの焦点はなにより、初期からの功労者をいかに盛りたてるかにあるはずだ。他方、SKE48は同日発売予定の17thシングルの劇場盤を、CDとミュージックカードのセットで発売することを発表している。先に発表されていたようにオリコン・リサーチ株式会社は、今年4月6日付のデイリーランキング以降、ミュージックカードを合算集計しないことを決めている。つまり、現行の集計方針下の最後に、売り上げランキングのルールを目一杯活用した販売方法を試みようとしているのだ。この試みは、「対決」ともまた異なる事情からくるものといえるだろう。「755」内で秋元が述べているように、48グループの「対決」を主眼とするならば、両者の販売にあたってのルールや兼任メンバーの調整等、正当に「祭り」にするべくリリースに向けた環境づくりを整備した方が、メンバーや運営にとっても、ファンにとっても納得度は高いはずだ。その意味で、3月の同日発売は見かけほど、「対決」という言葉に似つかわしいものではないことがわかる。

 すでに楽曲を発表しているNMB48に関してさらに言えば、今回のシングルに山田卒業以外の意味を過剰に付与してしまうことは、彼女の在籍期間のフィナーレをぼかしてしまうことにもなりかねない。山田の卒業発表以降、NMB48は寂しさを感じる隙間を与えないかのような動きを見せてきた。山田のTwitterアカウント開設と同時に多くのメンバーのアカウントも開設してすぐさま活発なやりとりをしてみせたり、「ポスト山田菜々」のオーディションを開催し、選出された植村梓をはやくもお披露目させたりといったトピックはまだ記憶に新しい。それらは盛り上げるための話題を絶やさない機能を果たしてはきたが、初期からの貢献度に比べて充分な位置が与えられてこなかった山田の功績をシンプルに称えるうえではノイズにもなってしまう。一方で、CDとミュージックカードのセットという販売方法が先行して話題になっているSKE48だが、当然のことながら作品やメンバーのパフォーマンスをもって、次回シングルの意味付けはなされるべきである。SKE48は今週20日の「ミュージックステーション」出演が決まっており、そこで新曲の披露が見込まれる。楽曲として、またパフォーマンスとしてどのようなものを見せてくるのかによって、NMB48「Don't look back!」との対照は鮮明になるはずだ。

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