メタルの枠を押し広げた「ギターの鉄人」 9mm Parabellum Bullet滝善充の魅力を再検証する

 では、今度は9ミリ以外での滝の課外活動を振り返ってみよう。ギタリストとしては、卓郎をボーカルとしてフィーチャーしたlivetuneの「千の翼」、ピエール中野のソロ作に収録されたPerfumeの「チョコレイト・ディスコ」のカバーに、大森靖子、ミトと共に参加し、それぞれバッキング主体のプレイを披露。また、話題の映画『日々ロック』には、「スーパースター」という楽曲を提供している。そして、大学のサークル仲間で結成されたjamming O.P.が、こちらも結成10年目にして初のアルバム『broken words refuse me』を発表したことも、滝にとっては今年の大きな事件と言えよう。9ミリがブレイクした影響もあって一度は解散するも、2009年に復活し、その後はマイペースな活動を続ける中、3年をかけて遂にアルバムが完成したのだ。音楽性としては、メタルやメロコアをベースとしたラウドロックという意味では9ミリと似ているが、よりクロスオーバー色が強いのが特徴で、ファンクやジャズなどの要素も感じられる。とはいえ、メンバーが違えば当然音楽性やプレイも変わってくるといった感じで、滝としてはそこまで9ミリとの差を意識してはいないように思われる。

 さて、滝といえば、その破天荒なライブパフォーマンスにも触れないわけにはいかない。レーベルの後輩であるcinema staffの辻友貴や、最近だとヒトリエのシノダらがその暴れ回るステージングを受け継ぎ、tricotのようなガールズバンドにもその影響は大きいはず。しかし、耐久性を重視してギターを改造するなど、徹底的なこだわりによって支えられるパフォーマンスは誰もが簡単に真似できるものではなく、いまだその存在は唯一無二。31歳になった今も変わらずにステージを飛び回っていて、つい先日も12月11日のツアーファイナルで足を骨折し、全治2ヶ月を診断されたばかり。それでも、椅子に座る形で今後のライブを予定通り行うそうで、「骨折して椅子に座ってライブをやるのは初めてではありませんので、心配は無用ですよ」と、ケロッとしたコメントを寄せているのが何ともすごい。「ギターの妖精」、「ギターの仙人」など、いろいろな愛称を持っている滝だが、そのタフさから、「ギターの鉄人」という新しい呼び名を、リスペクトを込めて贈りたい。

(文=金子厚武)

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