メタルの枠を押し広げた「ギターの鉄人」 9mm Parabellum Bullet滝善充の魅力を再検証する

 9mm Parabellum Bulletがニューシングル『生命のワルツ』を発表した。今年は結成10周年イヤーとして、2月の日本武道館2デイズを皮切りに、ベスト盤のリリースや全国ツアーなど、精力的な活動を行ってきた9ミリ。今回のシングルは9月に3デイズで開催された自主企画『カオスの百年』最終日の翌日、配信限定で発表された表題曲に、武道館でも披露された「オマツリサワギニ」、「EQ」という新曲2曲を加えたもので、まさに10周年を締めくくるにふさわしい一枚と言える。そこで今回は、ギタリストであり、ほとんどの楽曲の作曲を手がける滝善充に注目。9ミリ以外にも多彩な課外活動を展開した2014年を振り返り、その魅力を改めて探っていく。

 「生命のワルツ」の軸となっているのは、滝によるメタリックなギターリフであり、菅原卓郎とのユニゾンや、かみじょうちひろの2バスなども合わさって、かなり硬質な印象を与える。もちろん、こういったテイストの楽曲はこれまでも9ミリが得意としてきたものではあるが、シングル曲において滝は印象的なメロディーを弾くことが多く、リフのかっこよさがストレートな形で押し出されたのはひさしぶり。そもそも9ミリは、「エモ」や「ポストロック」といったジャンルがシーンの中軸を担っていた2000年代半ばに、その流れを受け継ぎつつも、メタルやメロコアの要素をギュッと圧縮したような高密度の楽曲によってシーンを塗り替え、ONE OK ROCKからBABYMETALに至る、2010年代のラウドロック隆盛を準備したと言える。つまり、「生命のワルツ」という曲は、そんな自らが地盤を作った今のシーンに対し、正攻法のリフ押しで挑んだ作品だと言えるかもしれない。

 もちろん、「生命のワルツ」が時代に寄り添ったメタルであるはずはなく、「ワルツ」というタイトルどおりに3拍子ではありながらも、疾走感を感じさせる曲になっているのがまず新鮮。また、マンドリンを意識してアコギを10本重ねたというイントロや、ラストのテクニカルかつフリーキーなソロからは、滝の自由な発想力とセンスが存分に感じられる。スカをベースに、オクターバーを効かせたような奇妙な音色でソロを聴かせる「EQ」にしても、やはりかなり面白い。かつてのメタルといえば、様式美とセットで語られるものであったが、滝はその様式美を今にアップデートし、メタルという音楽性の枠を押し広げたと言っていいだろう。滝および9ミリの最大の功績は、まさにそこにある。

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