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最速詳細レビュー! 宇野維正が『宇多田ヒカルのうた』を全曲解説

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9.「For You」加藤ミリヤ

カセットデッキからかすかに聴こえてくるオリジナルの「For You」。それに合わせてハミングする声。そして「June,30. 2000. My diary. She was my…」というモノローグで始まる加藤ミリヤの「For You」。それだけで、当時12歳だった加藤ミリヤにとって宇多田ヒカルがどれだけ特別な存在だったかがヒシヒシと伝わってくる洒落た導入部。アレンジというよりも、リズムをモダナイズしただけでほぼサンプリングの感覚に近いトラック。中盤に宇多田ヒカル「Give Me A Reason」のフレーズをさりげなく忍ばせているところも極めてヒップホップソウル的。ちなみに加藤ミリヤが13歳の時、デビューのきっかけとなったオーディションで歌ったのは宇多田ヒカルの「Automatic」だったという。

10.「Stay Gold」大橋トリオ

実は今回の作品がリリースされるまで、その一般への普及度や浸透度から比べると、意外なほど少なかった宇多田ヒカルの楽曲のカバー。そんな中で、音楽ファンの間で評判を呼んでいたのが、2010年に大橋トリオがリリースしたカバーアルバム『FAKE BOOK』に収められていた「travelling」のカバーだった。ボッサ風の跳ねたリズムで軽やかなシティポップに仕上げられていたその時の「travelling」とは一転、今回は繊細なピアノの調べでしっとりと「Stay Gold」を聴かせてくれる。ちなみに今回ピアノを弾いているのは大橋トリオ本人ではなく、菊地成孔や椎名林檎など宇多田ヒカルと縁のあるミュージシャンとも共演歴のあるピアニスト、林正樹。

11.「time will tell」tofubeats with BONNIE PINK

これまで機会があるごとに90年代J-POPに対する特別な愛着、とりわけ宇多田ヒカルのファーストアルバム『First Love』への偏愛を公にしてきたtofubeats。そんな彼がボーカリストにBONNIE PINKを迎えてカバーしたのは、宇多田ヒカルにとって事実上のデビュー曲とも言える「time will tell」。デビューシングル「Automatic」のカップリング曲として知られる「time will tell」だが、実はデビューの前、最初にクラブでのプロモーション用に配られたのは「time will tell」の12inchアナログ盤だった。1998年、アンダーグラウンドのクラブから始まった宇多田ヒカルの伝説が、その16年後、メロウでスローな2014年のクラブミュージックに収斂していくというサブストーリーを持った感動的なトラック。

12.「Keep Tryin’」 KIRINJI

2013年に弟の堀込泰行が脱退、兄の堀込高樹を中心とする6人のバンド編成で再スタートをきったKIRINJI。今回のカバーのリードボーカルを務めているのはメンバーの弓木英梨乃。最新型KIRINJIの演奏力と編曲力の凄さを広く知らしめるに十分な、考え抜かれた凝りに凝ったサウンドと、そこに浮遊するように漂う弓木の無機質な歌声。もともと、一般的ないわゆる「エモーショナル」な歌とは対極にある宇多田ヒカルのボーカリゼーションだが、「それを突き詰めるとこうなるのかもしれない」という仮説としても非常に興味深い仕上がりとなっている。

13.「Sanctuary」Jimmy Jam & Terry Lewis feat. Peabo Bryson

プリンスの盟友バンド、ザ・タイムのメンバーにして、ジャネット・ジャクソンとのタッグでトッププロデューサーとして長らく音楽界に君臨してきたジミー・ジャム&テリー・ルイス。宇多田ヒカルとは「Addicted To You」「Wait&See 〜リスク〜」のプロデューサー、そして2000年のライブ『BOHEMIAN SUMMER』での共演以来の親しい間柄にある。この「Sanctuary」は、TVゲーム『キングダム ハーツⅡ』のテーマソングとして2005年にリリースされた「Passion」の英語バージョン。当初から「キングダム ハーツⅡ」北米版には収録されていたが、音源のみで初めてリリースされたのは2009年のUtada名義のアルバム『This Is The One』(海外盤)のボーナストラックとして。今回ボーカリストとして迎えられたのは70年代半ばから活躍するコンテンポラリー系R&Bシンガー、ピーボ・ブライソン。

■宇野維正
音楽・映画ジャーナリスト。音楽誌、映画誌、サッカー誌などの編集を経て独立。現在、「MUSICA」「クイック・ジャパン」「装苑」「GLOW」「BRUTUS」「ワールドサッカーダイジェスト」「ナタリー」など、各種メディアで執筆中。Twitter

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