亀田誠治が“四つ打ち”曲が増えた理由を解説 「TKサウンドが若いバンドに影響を与えた」
音楽プロデューサーの亀田誠治がJ-POPのヒット曲を分析するテレビ番組『亀田音楽専門学校 SEASON 2』(NHK Eテレ)。10月16日放送分では、ゲストのmiwaとともに「元気が出るリズム学」をテーマに講義を行った。
冒頭、亀田はJ-POPの中で、あるリズムパターンが大流行していると語り、昨年の『NHK紅白歌合戦』を参考にそのパターンを洗い出していくことに。この日のゲストであるmiwaの「ヒカリへ」や、ゴールデンボンバー「女々しくて」、E-girls「ごめんなさいのKissing You」、きゃりーぱみゅぱみゅ「にんじゃりばんばん」、AKB48「恋するフォーチュンクッキー」を挙げ、亀田は「思わずノリノリになってしまうリズム、それが四つ打ちなんです」と、“元気が出るリズム=四つ打ち”であることを説明した。
四つ打ちは土台がどっしりしている
亀田は、このリズムパターンはバスドラムが1小節で4回等間隔で刻まれていることが「四つ打ち」の定義とし、1970年代に登場した海外のディスコ・ミュージックがその産みの親だと解説した。その後、日本では西條秀樹の「YOUNG MAN(Y.M.C.A)」などでJ-POPとして四つ打ちが流行したという。
続いて、「四つ打ちのリズムが本当に踊りだしたくなるものなのか?」という疑問に答えるため、番組は実験コーナーへ。亀田はmiwaに坂本九の「上を向いて歩こう」をピアノの伴奏のみで歌わせると、続いて四つ打ちビートに乗せて同曲を歌唱させた。これを体感したmiwaは「すごいイマ風な感じになりました」と感想を述べると、亀田は“四つ打ち=最先端”という感覚が芽生えるのにも理由があると語った。その理由として、亀田は「メロディーがシンコペーション(後ろのメロディが前のメロディを“食う”こと)するが、土台はどっしりしていることにより、ポジティブに聴こえる。つまり未来を向いている感覚が出てくる」と解説し、続けて「リズムを四つ打ちにすることにより、メロディや歌詞は自由度を増す」と語った。
四つ打ちバンド急増のワケはTKサウンドにあり?
番組後半では、亀田が「四つ打ちの音楽はアイドル曲にも多く用いられている」とし、ももいろクローバーZの「行くぜ! 怪盗少女」やAKB48「フライングゲット」がその一部であると説明。その理由として「ディスコ=踊るなわけだから、歌って踊るアイドルには欠かせないものになっている。リズムも等間隔だから、小節ごとに歌い分けもしやすい」と、構造やコンセプトを考えても、アイドルにピッタリのリズムであることを解説した。
続けて亀田は、このリズムがバンドサウンドのなかでも流行しているとし、BUMP OF CHICKEN「天体観測」やチャットモンチー「シャングリラ」、SCANDAL「夜明けの流星群」を例に挙げた。その後、「2000年頭から急増して止まらないくらい。今流行ってるJ-ROCKチャートを聴いてごらん。ほとんどがこんな曲だよ」と、現在のJ-ROCKが四つ打ちで溢れていることを指摘。
亀田自身もこの現象が気になっていたといい、色んな若いバンドに「なぜ君たちはこんなにも四つ打ちが好きなんだ」と訊いてみたという。すると「90年代、つまり小室哲哉さんのサウンドが流行った時代を小学生、中学生として当たり前に過ごして、四つ打ちのリズムが染みついている」という理由に辿り着き、「そういうダンスミュージックをバンドに取り入れたらどうなるかやってみようぜという意図的なものから、四つ打ちが浸透しだした」と、現在の潮流が生まれたことを明らかにした。
番組の最後には、miwaが「色んなバリエーションがあるし、『天体観測』は四つ打ちという感覚で聴いていなかった」と感想を述べると、亀田は「四つ打ちビートって“平成ビート”なんですよね。平成に入って大きく進化して、色々なジャンルが混ざり合った。まさに今が旬なビートなんです」という持論で締め、番組は終了した。
そのほか、亀田が音楽にまつわる場所を探訪する「亀さんぽ」というコーナーでは、miwaにゆかりのある下北沢ロフトを訪れた今回の放送。次回10月24日の放送では再びmiwaをゲスト講師に迎え、「お客様もアーティストです!」を講義する予定だ。
(文=向原康太)