濱野智史の地下アイドル分析(第2回)

CD1000枚購入の猛者も…ファンを虜にする地下アイドルの“ゲーム的な仕掛け”とは

アイドルカレッジ『アイドルカレッジの伝えたいこと』(ドリーミュージック)

 アーキテクチャの視点からネット環境を分析する気鋭の批評家/社会学者で、近年はAKB48をはじめとするアイドルに関する著作や発言も増えている濱野智史氏が、地下アイドルシーンの魅力とその特徴を語り尽くす集中連載第2回。今回は自身が愛してやまない具体的なグループの魅力と、ファンが思わずハマってしまう“仕掛け”や“演出”について語った。

第1回:「僕はAKBにハマりすぎて、地下に流出した」社会学者濱野智史が案内する、地下アイドルの世界」

――今回は、濱野さんが推している地下アイドルについてお話を聞きます。どんなグループに注目していますか?

濱野:クオリティが高いと思うのは、やはり何年かキャリアを積んでいるグループです。例えば僕がいま一番入れ込んでいるのはアイドルカレッジで、現場もしょっちゅう行っています。ただ、アイカレはもうメジャーデビューもしているので本当は「地下アイドル」と呼んでいいか微妙な存在なんですけども、「しょっちゅうのように会いに行けるアイドル」という条件は十分みたしているので、名前を挙げます。

アイドルカレッジ『アイドルカレッジの伝えたいこと』収録「僕のシャッターチャンス」(ドリーミュージック)

 ここはけっこうキャリアが長くて、前身のB.L.T.IDOL COLLEGE時代から数えると、もう4年目になるのかな。とてもいい意味で「AKBフォロワー」なグループで、運営の人たちも明らかにAKBを好きなのがわかるし、楽曲の雰囲気や歌詞、制服風の衣装なんかもとてもAKBらしさがある。僕の知り合いのAKBの古参ファンも“初期の劇場で頑張っていたAKBを思い出す”と言います。パフォーマンスは全力努力系で、曲もパフォーマンスも良くて、だいたい知り合いを連れて行くと「アイカレ、いいじゃん」とか、「こんな子たちがなぜ売れないのかわからない」とか、みんな言ってくれます。僕もそう思っていて、本当にアイカレはもっと売れてほしいですね。

 ちなみに僕の推しメンは、さくらちゃん(床爪さくら)とゆいぽん(中島優衣)という子で、さくらちゃんはパフォーマンスがとにかくすごくて本当に毎回感動させられます。すごいですよ、アイドルの全力努力系のパフォーマンスに一度でも感動したことがある人なら、さくらちゃんは見なければダメです。あと、ゆいぽんは長身でスタイルがいいんですけど、なんかオタクな子で。不思議な感性を持っている子で、すごくお気に入りです。でも、どっちを一推しにするかいまだに決めかねていて、よくメンバーから「濱野さんの推しメンはどっちなの!?」と問い詰められて困っています(苦笑)。
 
 この夏にけっこう個人的に熱かったグループは、ALLOVERですね。ここは楽曲もパフォーマンスもいいんですが、何よりハマったのはそのゲーム的な仕掛けでした。というのも、ALLOVERは夏に新曲をリリースしたんですが、“21人いるメンバーのソロジャケット版を出して、一番売れたメンバーからユニット曲のセンターにしていく”という、まあAKBの選抜総選挙に似たような手法をやったんです。それで、みんな推しメンのCDを買う。最初はみんな恐る恐る買っていたようですが、運営が中間報告と称してどんどんランキングを発表するので、ファンもだんだんムキになって購入枚数がエスカレートしていく。どうやらひとりで1000枚近く買ったファンもいるみたいです(笑)。CDは累計1万3000枚以上売れたという話ですから、売り上げの13分の1をひとりで支えている。すごいですよね。

 で、僕も“さきぶ”という最近ALLOVERに入った子にハマって、その子がちょうどそのとき1位との差が60枚くらいあると発表されていたので、試しに50枚一気買いしてみたら、次の日にいきなり2位に上がったと発表されて、“やべえ、これは熱い!”と思わずガッツポーズですよ(笑)。何が熱かったのかといえば、これってAKBのかつての総選挙に近い面白さなのかな、と。AKBの古参ヲタの人も、“総選挙は第一回が一番面白かった”と言います。ちょっと油断すると順位が変わってしまうから、みんな大急ぎでCDを買いあさっていたそうなんです。それと同じことがALLOVERで起きていて、実際にその効果で、7月にリリースされた4thシングル『世界でイチバン夏が好き』がオリコンデイリーチャートで8位、ウィークリーでも13位になりました。これはALLOVERよりファンが格段に多くて知名度も高いグループに迫る数字。この週の12位がぱすぽで15位がベイビーレイズでしたから、大健闘でしたね。

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