THE COLLECTORSのレイジーな日曜日 Vol.2〜12ヶ月連続クアトロワンマン 4月公演レポート〜
ザ・コレクターズ、結成31年目にして加速する勢い マンスリー公演で示した過去を超える姿
ごく個人的な話から始めると、初めてザ・コレクターズを見たのは11年前。20周年の企画(ルーツとなるTHE MODSのカバー集、また若手が楽曲提供した特別盤)をきっかけに興味を持ち、その翌年に出た『東京虫BUGS』を愛聴、当時から彼らのホームとなっていた渋谷クラブクアトロに足を運んだのだ。
会場は中年女性ばかりだった。おそらくは、若かりし頃にハートを撃ち抜かれ、今なお醒めないロマンを追いかけているコアファンたち。新曲も普通に盛り上がるが、ハイライトはやはり1993年の代表曲「世界を止めて」であり、新参の私がそこで感極まることはない。ないけれど、それを言い出すのは野暮という空気があった。メンバーも変に意地を張ることなく、聴きたい曲があるのなら喜んで演奏しましょうとサービス精神を見せているのだ。もはや若くないバンドとファンが、こうして共に歳を重ねていくのは悪くないこと。むしろ非常に美しい形なのだと納得したのが、今から11年前の出来事だ。
「……満員電車みたいだな」「前より混んでるんじゃね?」。開演直前のフロアで男性二人の会話が聞こえてくる。「あー、早くコータローくん出てきて~」ときゃらきゃら笑っている女の子たちの声も。まじかぁ、と思う。11年前のあの記憶は何だったのか。やたらと男性客が目につくし、若年層も驚くほど増えている。これが、年間を通して行われるマンスリーライブ『LAZY SUNDAY AFTERNOON』、第4回目の様子である。
このシリーズでは普段やらないレア曲が披露されるが、1曲目が藤井フミヤに提供した「JOIN TOGETHER」、2曲目に1989年の「ご機嫌いかが?おしゃべりオウム君」、続いて1991年の「おねがいホーキング博士」というのは、ちょっと大胆すぎるセットに思える。そんな曲知らない、ていうか生まれてない、みたいな世代も実際にいるだろう。しかし始まってしまえば心配は杞憂に終わる。どよめきと共にフロアは揺れ続け、曲が終われば大声援が巻き起こる。
ちなみに曲名にある「ホーキング博士」とは、言わずと知れた宇宙物理学者。先月亡くなった彼に対する追悼の意味もあるだろうが、〈本気でミサイル飛ばす〉〈地面に線を引いては自分のものだと主張する〉人々をさらりと批判してみせる歌詞は、今の世界情勢と見事にリンクする。二重の意味でタイムリーな曲だった。ただし楽曲自体はシリアスではないし、むしろ非常にチャーミング。力強く突き進むサビ以外はBPMが大胆に変わり、呑気なカントリーやサイケの要素などを挟みながら、後半に向けてぐいぐいと加速していく。ロックンロールへの一本気な情熱と、余裕ある遊び心。このバランスがことさら秀逸だ。
加藤ひさし(Vo)の佇まいも然りだ。もともと彼は天才的な音域と声量を誇るシンガー。歌だけでもショーは成立するだろうが、ただ立派なものに人は不思議とそそられないものだ。この日の彼は赤とピンクのユニオンジャック柄、本人いわく「宝石商みたいな(笑)」スーツである。1月~3月はダークカラーの装いが続いたそうで、「あれはカッコよすぎた」「いつもの加藤さんが戻ってきましたよ!」とMCで笑いを取っていく。まさにバランスの妙味。これが中毒性の高いエンターテインメントに結びついていくのだ。
長いキャリアを一足飛びにするセットを、4人のメンバーは自然体で進めていく。山森“JEFF”正之(Ba)は2014年から、古沢 'cozi'岳之(Dr)は2017年から加入したメンバーであることをうっかり忘れてしまいそうだ。こと、古沢のドラミングは武道館前哨戦で見たクアトロの時とは余裕がまるで違う。ミドルテンポの「希望の船」。加藤の甘い歌声、古市コータロー(Gt)のソロパートに酔いしれた後は、力強い三連のリズムが曲を引き締めていく。「華のあるシンガーとギタリスト」の組合せは優れたロックバンドに必要不可欠だが、かといってそれだけでは成立しない。ボトムの強さ、曲にメリハリを与えるリズム。そういうものに支えられてこそカリスマの魅力は増していく。加藤がいつも以上にキラキラ輝き、古市がことさらセクシーに見えたこの日は、つまり4人がバンドとして盤石になってきた、ということなのだろう。