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ステージ上には“最新形”のローゼズがいた 熱狂の空間に包まれたThe Stone Roses武道館公演

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 それはもう、最高の夜だった。武道館を満員にしたオーディエンスの誰もが踊ってて、唄ってて、笑ってる。場所によっては椅子からも通路からもハミ出て、肩を組んだりハグしながら大合唱というお客さんも。そんなハジけっぷりがおかしくてしょうがない……と、かく言う僕自身も、彼らと同じフレーズを口ずさんでるわけだが。とにかく、細かいことなんか誰も気にしていなかった。ステージの上には、間違いなくローゼズの4人。そう。あの夜の開放感というかバカ騒ぎは、とてもローゼズらしかった。

 僕が足を運んだのは、東京・日本武道館での2デイズの初日、4月21日。今回の来日はThe Stone Rosesにとって通算で5度目となるものだった。しかし単独ライブでの来日は、なんと1995年以来。これだけ熱狂的なファンが多数いるバンドなのに、日本でのフルセットのギグは22年ぶりだった。だから待ちわびたオーディエンスの爆発力はものすごかったわけだ。そりゃみんな唄いたいし、騒ぎたいし、飲みたくもなるだろう(終演後、会場の廊下には空になったビール缶を多数目撃した)。

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 その肝心のローゼズは、文句のつけようがないほどの熱量を放っていた。高い一体感を終始キープしながら、リズム隊は鉄壁のグルーヴを、ギタリストのジョン・スクワイヤは鮮やかなフレーズやリフを紡ぎだす。そしてイアン・ブラウンは手を挙げながらステージに現れるや「元気デスカ?」とひとこと。この男の歌がうまいとは言えないのは相変わらずだが、その野太い響きとふてぶてしいたたずまいがバンドの起爆剤になっているのは明白。いや、むしろあの武骨なボーカルこそが、ローゼズの音楽に宿る「何でこんなにカッコいいんだ!?」という快感を増幅させてくれる。それに今夜のライブは音程が保たれていたほうだし、何よりもイアンの存在はアウトローでタフなこのバンドの象徴である。昨年のツアー以来バンドの目立った動きが途絶えていたので、果たして万全の状態で来日してくれるのか不安に思うところも若干あったが、まったくの杞憂だった。

 全体で100分強、アンコールなしの構成は、見どころの連続。「I Wanna Be Adored」で始まり「I Am the Ressurection」で終わるセットリストは、彼らのデビュー・アルバム『The Stone Roses』を模しているかのようだ。イアンは序盤からジョンのアンプの裏に隠し置いた棒状のタンバリンを時々持ち出し、唄いながら振り回したあとに、客席に投げ入れる。名曲「Sally Cinnamon」を唄い終えた時には、右肩を押さえながら「肩ガ痛イ」と言ってファンをどよめかせた。この来日に至るまでに何かあったのかと思わせたが、結果的に不調そうな気配はまるでなかった。“悪い奴”について言及した曲「Bye Bye Badman」の演奏前にイアンは「次の曲は、すべての場所のすべての政治家に捧げるぜ」と語った。中盤では日本国旗を掲げ、集まったファンに対しての感謝の意を示すような場面も。ついでに、日本向けにピコ太郎のマネをした? という話がTwitter上で飛び交ったほどの、謎の動きもあった(笑)。

 セットの後半でヤマ場となるのは、何といっても10分を超える「Fools Gold」の超絶グルーヴと、ラスト・ナンバー「I Am the Ressurection」の怒涛のビート攻撃だ。1989年にリリースされた先述のデビュー・アルバムは音楽ファンに衝撃を与えた……と言いたいところだが、現実には当時このバンドの革新性に気づいていたのはごく一部。むしろあの傑作に漂うサイケでファジーな質感は、少なくとも世界規模でのリアクションという点では、年を追いながら徐々に浸透していく感じだったのを記憶している。「Fools Gold」はそんな状況下に投下されたシングルで、「このバンドはやはりとんでもなかった!」という事実を突き付けた曲だった。今回、とくにドラムスのレニの超人ぶりが目いっぱい発揮されるこの曲のファンクネスの陶酔感は、メンバーがアラフィフになった現在でも破格の魔力を誇っていた。そして「I Am the Ressurection」が招く快感と混沌! この4人がガッシリと組み合ったサウンドは、本当に無敵だ。

 そしてもうひとつ特記しておきたいのは、サウンドにみなぎるソリッドでハードな質感についてである。それはジョンのギターに負うところが大きいわけだが、こうした傾向は2作目『Second Coming』に色濃く出ているハードロック的な要素……つまりはLed Zeppelinを参照したブルージーでハードなサウンドを思い起こさせる。この硬質な音の感覚は当然あのアルバム収録の「Begging You」や「Love Spreads」のプレイで顕著になるわけだが、決してそれだけでなく、バンドの出音のそこかしこにも表出していた。このことは、その前回の武道館を体験している自分としては感慨深かった。なぜならファーストの鮮烈さに対し、セカンドでハードロック志向を見せたローゼズにはどうしても違和感を覚えてしまい、それは22年前のライブの場でもそうだったからだ。もっともあの時すでにレニは脱退していて、バンド自体もその翌年限りで活動を停止してしまったわけだが。

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 これは余談だが、そうしてローゼズが1996年に休止し、解散してしまったあと、何年も経ってから日本の音楽シーンにASIAN KUNG-FU GENERATIONが現れた際、彼らのライブのオープニングSEでこの『Second Coming』からの「Driving South」が使われているのを聴いた時には、うれしいような、困ったような気持ちになったものだ。そうか、君たちもローゼズ好きなんだ? でも、うーん、俺はもっと他に好きな曲があってさ……。今になってみれば、そんなふうに思ったのも素敵な思い出だ。ちなみに彼らは数年前に「ローリングストーン」という曲でもThe Stone Rosesのことを歌詞に織り込んでいる。こんなふうに時間が経過してもリスペクトを示し続けるアジカンの姿勢は、今では一点の曇りもなく、うれしく感じる。

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