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椎名林檎は“大人と嘘”の物語『カルテット』をどう彩る? 主題歌「おとなの掟」を読む

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 松たか子、満島ひかり、高橋一生、松田龍平が主演を務めるドラマ『カルテット』(TBS系)の主題歌「おとなの掟」の配信がスタートした。また、エンディング映像も期間限定で公開となった。

「おとなの掟」エンディングフルver.

 同曲は、ドラマ限定ユニット「Doughnuts Hole」の楽曲としてリリースされ、椎名林檎が作詞作曲を担当。レコーディングメンバーにも、ヒイズミマサユ機、斎藤ネコカルテット、田村優弥、井上雨迩といった、椎名がかねてから共に楽曲を制作してきたメンバーが名を連ねる。椎名自身もドラマを楽しんでいるようで、オフィシャルTwitterアカウント『SR猫柳本線 椎名林檎オフィシャル』(@Nekoyanagi_Line)でも、たびたび彼女のツイートが投稿されている。

 ドラマ『カルテット』は、巻真紀(松)、世吹すずめ(満島)、別府司(松田)、家森諭高(高橋)が弦楽四重奏カルテットを組み、軽井沢で共同生活を営むという設定だ。「嘘つきはオトナの始まり」「全員片思い。全員嘘つき」「不器用な大人たちが奏でる、苦くて甘いラブストーリー」というキャッチコピーが付けられており、物語の中でも「嘘」が重要なキーワードとなっている。

 回を重ねるごとに、4人が自らの過去を告白しながらストーリーが進んでいく『カルテット』。真紀は夫が失踪中であること、すずめは幼い頃「魔法少女」としてインチキ超能力に関わっていたこと、別府は過去に真紀に出会ったことがあり、それ以来想いを寄せていたこと、家森はかつて結婚しており息子がいることを告げ、それぞれの人生の一端が明かされていく。そして、前回の第4話(2月7日放送)までには、すずめも別府も家森も、カラオケボックスで真紀と出会ったのは偶然ではなく、それぞれの思惑があり意図的に仕組んでいたことが明白になった。それでも、4人の生活は変わらず、嘘をついたり秘密を隠したりしながらも、一緒に食事をし、同じシャンプーを使い、共に音楽を奏でる。

 椎名林檎が手がけた「おとなの掟」にも、「大人」や「嘘」といったキーワードが含まれている。歌詞も現在オフィシャルサイト『SR猫柳本線』で公開されている。

 「おとなの掟」とは、すなわち「秘密を守る」ことであり、「グレーの中で生きる」ことであるーーそれが、同曲のテーマとなっているのではないだろうか。ラストの大サビでは、こう歌われる。
 
好きとか嫌いとか欲しいとか
口走ったら如何なるでしょう
ああ白黒つけるのは恐ろしい
・・切実に生きればこそ・・
そう人生は長い、世界は広い
自由を手にした僕らはグレー
 
 「好き」と「嫌い」。「嘘」と「真実」。「夢」と「挫折」。『カルテット』の4人は、常にその二極の狭間に身を置き、自分の身元さえはっきりさせないことで、その生活を成り立たせている。むしろ白黒つけることは、第1話で「唐揚げにレモンをかけることは“不可逆”」だとされたように、カルテットに<滅び>を導き、4人の関係性は元に戻らないものになってしまう。

 椎名林檎は、松たか子、満島ひかり、高橋一生、松田龍平と同世代でもある。知識や経験をいくら積んだとしても<正解不正解>を正しく選べるようにはなれないーーそんな大人の姿がユーモラスかつシリアスに描かれる『カルテット』の主題を、見事に掬いとって「おとなの掟」を書き上げた。

 毎週火曜日、『カルテット』の放送が終了すると、インターネット上には様々な解釈が飛び交う。佐野亜裕美プロデューサーはインタビューの中で「このドラマの不思議なところは、脚本家の坂元裕二さんとも話していたんですけど、視聴者の方が私たちも想像しなかったことを深読みしてくださるところです」と話している(参考:BuzzFeed News)。このように、視聴者それぞれが作品に解釈を与えていくことも、ドラマのひとつの楽しみ方だ。「おとなの掟」は、様々な設定や背景が複雑に絡み合う『カルテット』を、さらに深く掘り下げて楽しむためのヒントを与えてくれる主題歌である。

(文=若田悠希)

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