宇多田ヒカル、F・オーシャンらと共演 ラッパーKOHHがいま世界で注目される理由とは

 宇多田ヒカルが8年ぶりにリリースしたオリジナル・アルバム『Fantôme』に参加した日本人ラッパー、KOHH。彼がほぼ同時期に参加したほかのアーティストのアルバムが、アメリカのR&Bシンガーでありグラミー・ウィナーでもあるフランク・オーシャンのアルバム『blonde』であることは、すでに本サイトでも柴 那典氏が述べている通り(参考:宇多田ヒカル『Fantôme』、国内外で大反響ーーグローバルな音楽シーンとの“同時代性”を読む)。『Fantôme』が全米iTunesチャート20位にランクインした際、 同チャートの13位にランクインしていたのが、フランクの『blonde』だった。アメリカ音楽シーンのトレンドを形成する2作に参加している日本人アーティストなんて、後にも先にもKOHHくらいではなかろうか。

 東京都北区王子。これはKOHHが生まれてから今も住んでいる場所であり、間違いなく彼のルーツと言える場所だ。彼の楽曲におけるフッド(地元)の描写や、昔からツルんできた仲間たちなど、地元に宿る“イズム”は「結局地元」や「Tokyo」などに顕著であり、いかに「王子」という地元が彼の活動にも大きく影響しているかが読み取れる(ちなみに彼は北区のシンボル・マークのタトゥーを自らの身体に彫っている)。

 これまでに幾度となくインタビューで語られていることではあるが、彼は北区王子の団地で育ち、母親は薬物中毒、そして異父兄弟の弟、LIL KOHHがいる。LIL KOHHもまた、まだ中学生ながらラッパーとしてのキャリアを持ち、もともとはLIL KOHHが小学生の時に発表したシングル曲「Young Forever」が、KOHH、そしてLIL KOHHが注目を浴びるきっかけの一つでもあった。そして、KOHHは幼い頃に実父を亡くしている。彼がよくシャウトしている「T20(ティートゥエンティー)」というフレーズは、実父の名前「達雄(タツオ)」に由来しているもの。KOHHの家族に対する思いやバックグラウンドに関しては、「FAMILY」、そして般若との共演作「家族」に詳しい。

LIL KOHH「Young Forever」

 また、彼の初期からのキャリアを彩るトピックの一つといえば、異性の話題だろう。2012年3月にYouTube上にて発表された、Mony Horseとの「We Good」や、VITOが発表した「I Need Her (REMIX) feat. Cherry Brown, NIPPS, KOHH」ではあからさまな描写を臆することなくクールにラップする様子が受けて、これまでの日本人ラッパーとの違いを見せつけた。その後も「ビッチのカバンは重い」やDJ SOULJAH&MARIA (SIMI LAB)との「aaight」などで、キワドいパンチラインを多く生んできたこともよく知られている。

KOHH & Mony Horse「We Good」

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