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柴 那典の新譜キュレーション 第6回

『君の名は。』、『怒り』、『シン・ゴジラ』……音楽と映画の新しい関係を柴那典が考察

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 今月の新譜キュレーションは「音楽と映画の新しい関係」を感じさせる5枚。というのも、ここ最近リリースされるサウンドトラックにとても興味深いものが多いのだ。『君の名は。』や『シン・ゴジラ』のように、映画のヒットとサントラ盤のヒットが連動している。しかも、単なるサウンドトラックという枠組みをハミ出した作品性を持つものが生まれている。

 そういう存在感のある5枚を集めてみた。

RADWIMPS『君の名は。』

『君の名は。』予告2

 動員ランキングは4週連続で首位となり、興行収入はついに100億突破。『君の名は。』の破格のヒットをもたらした要因はいろいろあると思うけれど、以前も筆者が当サイトで書いた通り(参考:http://realsound.jp/2016/08/post-8839.html)、その原動力の一つとなったのはRADWIMPSの手掛けた音楽だった。

 映画のサウンドトラックでもありRADWIMPSの新作でもあるアルバム『君の名は。』も、オリコンチャート1位を記録。バンドにとっても最大のヒットとなっている。

 映画の中で最も存在感を放っているのが予告編にも使われた「前前前世(movie ver.)」であることは間違いないのだけれど、実は「三葉の通学」「糸守高校」のように、温かいピアノやストリングスの音色を活かした日常パートの音楽も、映画の空気感において重要な役割を果たしている。物語がシリアスになりすぎない絶妙なトーンを保っている。

前前前世 (movie ver.) RADWIMPS MV

 ロックバンドであるRADWIMPSにとっては、こういう正統派の劇伴音楽に挑戦するのは初めてだったはず。いくつかの対談でも、新海誠監督とバンドが密にコミュニケーションをとりながら、1年以上の時間をかけてどっぷりと作品に携わってきたことを語っている。単に「主題歌を提供する」というところから大きく踏み込んだコラボになったことが、この作品の成功に結びついた。

 そう考えると、両者を結びつけた東宝の川村元気プロデューサーの手腕は本当に流石だと思う。

坂本龍一『怒り』

『怒り』予告2

 この原稿で主題にしている「音楽と映画の新しい関係」を語る上で、東宝の川村元気プロデューサーの存在はとても大きい。RADWIMPSと『君の名は。』だけでない。数々のアーティストを映画音楽に起用し、成果を上げている。

 昨年に公開された大根仁監督の『バクマン。』では、サカナクションが劇中音楽と主題歌「新宝島」を手掛けた。10月15日に公開される『何者』では、中田ヤスタカが劇中音楽を制作し、米津玄師を作詞・ボーカルに迎えた主題歌「NANIMONO」も手掛けている。10月5日には、その両方が中田ヤスタカ『NANIMONO EP / 何者(オリジナル・サウンドトラック)』としてリリースされる。サカナクションにしても、中田ヤスタカにしても、アーティストとしての新境地を開拓するようなチャレンジを成し遂げている。

 これらのポイントは、主題歌と劇伴を同じアーティストが手掛けていること。それによって作品に統一感が生まれる。アーティストにとっても、深く映画にコミットした上で主題歌も手掛けることで、自らの作家性を発揮する新しい回路が開かれる。そのあたりの座組みを作るのは天才的な手腕と言っていい。

 そして、そんな川村元気がやはり企画とプロデュースを手掛けたのが『怒り』。こちらでは坂本龍一が音楽を担当している。

坂本龍一 feat. 2CELLOS 『M21 - 許し forgiveness』(映画『怒り』主題曲)

 サウンドトラックは、美しさの裏側にピンと張った緊張感と強さを感じさせるようなピアノとストリングスから構成される。時おり訪れるノイズや不協和音も含めて、物語に寄り添い、その中に没入させる劇伴としての役割を徹している。さすが名匠・坂本龍一という筆致を感じさせる。

 そして、主題曲「M21 - 許し forgiveness」は、坂本龍一 feat. 2CELLOSという名義でリリース。ここで「feat. 2CELLOS」とするところに、やはり川村元気の天才性を感じてしまう。「M21」という曲名が象徴するように、この曲自体の持っている役割はあくまでサウンドトラックの一場面を担うものでしかない。が、そこに2CELLOSをフィーチャーすることで、一つの曲を「主題曲」として際立たせている。そしてカバー曲で人気を広めた2CELLOSの側にとっても、坂本龍一とのコラボレーションは自らの活動領域を広げる願ってもない機会になっただろう。

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