SKY-HIが明かす、エンターテインメントの強度を追求する理由「階段をおりたところに真のポップミュージックはない!」

SKY-HIが語る“真のポップミュージック”

「ポジティブだけど、やっぱり根底はものすごく渇望してる」

ーー徐々にいろんな方向からの偏見を解消できてる実感もあると思うけど、話を聞いてるととてつもなく高い目標設定の入口にもたどり着いていない感じなのかなと。

SKY-HI:そうですね。得ているものがある分、いかに得てないものがあるのかも痛切に感じるし。ネガティブな意味ではなく、強く渇望している。『カタルシス』の2曲目、「Ms.Liberty」では自由について歌ってるけど、自由になりたいと思ってる時点で自由じゃないから。自由って追いかければ追いかけるほど遠のいていくと思うんですけど、同時に追いかけてるその瞬間はきっと高揚感に満ちあふれてるから。だから、この曲もハッピーなサウンドで届かない自由を追いかけたかった。そういう意味でもつらい日々だけではないし、ポジティブだけど、やっぱり根底はものすごく渇望してるし、孤独感を覚えてるんですよね。

ーーだから、これもネガティブな意味ではなくSKY-HI氏はどこまで行っても満たされないんだと思う。

SKY-HI:そう思います。ホントに世界中の70億人に自分の音楽が届きましたという証明書がないかぎりはずっと渇望は続くと思いますね。でも、そこは覚悟もしていて。闇雲にバトルに出てるときって、自分の努力が報われる先がわかってなかったんですよね。ひょっとしたら間違った努力をしてるかもしれないし、とにかく努力をブンブン振り回してる感じで。でも、そうするとだんだん霧が晴れてきて、この方向の努力が正しいことがわかってきた。さらにそっちに向かって歩いていくと、高みにあがる階段があるんですね。それと同時に、階段をあがれば上がるほど、霧が晴れれば晴れるほど頂点がいかに高いかもわかって。

ーーそして、この『カタルシス』では大衆と向き合って、自分の音楽を届けることに全力を傾けてる。

SKY-HI:今の自分が勝負する対象ははっきりしていて。敵わないのはわかってるけど、それはゲスの極み乙女。だし、ONE OK ROCKだし、SEKAI NO OWARIだし、ゆずであって。たとえば、ゆずのジャンルがJ-POPなのかフォークなのかみたいな議論はされないじゃないですか。ゲス乙女やセカオワもそういう議論はされないでしょう。SKY-HIとしてそこと渡り合わないといけないと思ってるんです。そういう意識が強いから、取材でもヒップホップやAAAを引き合いに出されることのフラストレーションはすごくある。まだSKY-HIのみで語ってもらえないのかって。俺の自己評価では、このアルバムを聴いたらSKY-HIのみで語ってもらえるというくらいの作品性とクオリティを誇っている自信があるので。

ーーでも、このアルバムを聴いたらラッパーとしてのSKY-HIに注目せざるを得ないですけどね。

SKY-HI:ああ、どうなんでしょうね? 『カタルシス』ってどれくらいラップアルバムなんでしょうね?

ーー俺は多様な音楽性をたたえたポップなヒップホップアルバムだと思います。

SKY-HI:なるほど、「スマイルドロップ」とか「アイリスライト」も1曲通して歌ってるけど、感覚としてはバースでラップして、フックで歌うということを全編通してやってるのかもしれないですね。ただ、ずっとラップしてるナンバーがあるのも、ずっと歌ってるナンバーがあるのも全部1シーンにすぎないというか。映画的であるアルバムとしての『カタルシス』は、どのジャンルに位置づけられるかわからないけど、どのジャンルのフィルターを通しても無条件に楽しめるものになってるという強い自負があります。

ーーその自負はこちらもすごく感じてます。

SKY-HI:しっかりエンターテインしたうえでメッセージを渡せるアルバムだと思う。コンセプトアルバムとしての構成とかアルバム全体にダブルミーニング、トリプルミーニングを波及させる方法論はヒップホップから一番強い影響を受けてるのは確かですね。そのうえでオンリーワンなアルバムを作れたという自信があって。ヒップホップ的でもあると思うけど、考え方によってはロック的でもあり、ポップ的なアルバムだと思う。

ーー何よりSKY-HI氏のラッパーとしてのスキルの高さが際立っているから、こちらがヒップホップを聴く耳になるというのもあると思いますけどね。いい、悪いの話ではなく、SEKAI NO OWARIやゲスの極み乙女。がラップをしていてもヒップホップを聴く耳にはならないから。

SKY-HI:なるほど、俺、ラップ上手いからなー! そうか、ラップが上手いし、2枚目だからな(笑)。

ーーいやいや、もちろんラップのスキルが高いことに越したことないわけで。スキルの高いラップを誇示しながら、SKY-HI氏だからこそ表現できるポップネスを満たしてると思うし。

SKY-HI:そうですね。クオリティは絶対に落としたくないという感覚はナチュラルにあるから。最初に言ったとおり作品性も歌詞もフロウのアプローチも 発声も歌の強度も突き詰めるべきところはたくさんあるし、それを突き詰めなきゃいけないと思う。だって、単純にクオリティの低い音楽よりクオリティの高い音楽のほうが聴きたいじゃないですか。

ーーもちろん。間違いないですね。リスナーの目線に合わせてサービスとしての音楽を作るなら、ポップミュージックのアート性は消失すると思うから。

SKY-HI:そうですね。それは階段をおりるってやつですよね。

ーーSKY-HI氏はこのアルバムでリスナーの目線を上げようとしていると思うんですね。

SKY-HI:うん、そうですね。僕も階段をおりたところに真のポップミュージックはないと思います。階段を行ききった先じゃないとポップとしての輝きは絶対に得られないと思う。結果的に売れた曲に簡単なコード進行やわかりやすいメロディ、シンプルな歌詞が多いのは、行ききったからだと思うんですよ。ポップミュージックの表現を研ぎ澄ませた結果、シンプルになったというだけで。それを踏まえないで過去の音楽家が生んだ財産を拝借するだけではポップミュージックの輝きは得られないと思う。

ーーこのアルバムでSKY-HI氏が目指すべき立ち位置が明確になったと思うんですよね。それは、全能のエンターテイナーとしての立ち位置で。

SKY-HI:そうですね。強烈に伝えたいメッセージがあるからこそ、エンターテインしなきゃいけなくて。それこそ『カタルシス』に“語る死す”というダブルミーニングを込めたのも俺に強烈に伝えたいメッセージがあるからで。ただ、そういうメッセージをひたすら重たいトラックで放っていくと、映画と勝負するエンターテインメントとしての強度が下がると思ったから。音楽的な振れ幅が広くて、強烈に伝えたいメッセージをエンターテインする、俺にしか作れないアルバム。それが『カタルシス』だと思ってます。

(取材・文=三宅正一)

■リリース情報
『カタルシス』
発売:2016年1月20日
【CD+DVD】¥3,996(税込)
DVD収録曲
01 Ms. Liberty(Music Clip)
02 スマイルドロップ (Music Clip)
03 F-3(Music Clip)
04 Seaside Bound (Music Clip Making)
05 アイリスライト(Music Clip)
06 カミツレベルベット(Music Clip)

【CD+DVD】¥4,860(税込)
DVD収録曲
01 As a Sugar (LIVE @ZEPP NAGOYA)
02 Critical Point(LIVE @ZEPP NAGOYA)
03 逆転ファンファーレ(LIVE @ZEPP NAGOYA)
04 愛ブルーム-short-(LIVE @ZEPP NAGOYA)
05 スマイルドロップ(LIVE @ZEPP NAGOYA)
06 Blanket (LIVE @ZEPP NAGOYA)
07 WHIPLASH(LIVE @ZEPP NAGOYA)
08 Diary(LIVE @ZEPP NAGOYA)
09 Serial(LIVE @ZEPP NAGOYA)
10 サファリ・システム(LIVE @ZEPP NAGOYA)
11 Enter The Dungeon(LIVE @ZEPP NAGOYA)
12 Tyrant Island(LIVE @ZEPP NAGOYA)
13 F-3(LIVE @ZEPP NAGOYA)
14 Prelude -RULE-
15 RULE(LIVE @ZEPP NAGOYA)
16 トリックスター(LIVE @ZEPP NAGOYA)
17 -センテンス-
18 Jack The Ripper(LIVE @ZEPP NAGOYA)
19 Limo(LIVE @ZEPP NAGOYA)
20 TOKYO SPOTLIGHT(LIVE @ZEPP NAGOYA)
21 VERY BERRY(LIVE @ZEPP NAGOYA)
22 Tumbler (LIVE @ZEPP NAGOYA)
23 Seaside Bound(LIVE @ZEPP NAGOYA)
24 アイリスライト(LIVE @ZEPP NAGOYA)
25 カミツレベルベット(LIVE @ZEPP NAGOYA)
26 愛ブルーム(LIVE @ZEPP NAGOYA)
27 またね(LIVE @ZEPP NAGOYA)
SKY-HI TOUR 2015 ~Ride my Limo 2~ライブ映像収録(@2015/11/23 ZEPP NAGOYA)

【CD】¥3,240(税込)
CD収録曲
01 フリージア~Prologue~ (Track produced by SHIMI)
02 Ms.Liberty  (Track produced by FIRE HORNS , DJ WATARAI)
03 スマイルドロップ (Track produced by UTA)
04 Count Down  (Track produced by BROKEN HAZE)
05 Luce  (Track produced by 夢幻SQUAD)
06 As A Sugar  (Track produced by KREVA)
07 F-3  (Track produced by DJ WATARAI)
08 Young,Gifted and Yellow  (Track produced by Mummy-D)
09 朝が来るまで (Track produced by ist)
10 Seaside Bound  (Track produced by SONPUB)
11 アイリスライト (Track produced by Nao’ymt)
12 カミツレベルベット (Track produced by 蔦谷好位置)
13 フリージア~Epilogue~ (Track produced by SHIMI)

■ツアー情報
「SKY-HI HALL TOUR 2016 ~Ms. Libertyを探せ~」
2月14日(日) 金沢市文化ホール
2月18日(木) 福岡国際会議場 メインホール
2月19日(金) 広島 JMSアステールプラザ 大ホール
2月28日(日) 仙台電力ホール
3月5日(土) 愛知県芸術劇場 大ホール
3月11日(金) オリックス劇場
3月13日(日) TOKYO DOME CITY HALL

http://avex.jp/skyhi/

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