ぼくのりりっくのぼうよみが語る、ネットと音楽のリアル「僕自身すぐにコロコロ変わっちゃう」

ぼくりり、初インタビューで大いに語る

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「言いたいことが1番で終わっちゃうんです、基本的に」

ーーただ、ネットから始まり、10代限定のロックフェス『閃光ライオット』でも高く評価されて、徐々に多くの人に聴かれるようになっていったと思います。ウケているという実感はありましたか?

ぼくりり:このアルバムにも入っているんですけど、「sub/objective」という曲だけは、微妙にバズっているなと思っていました。ただ、僕としては、これはラップなのかな、叩かれそうだな、という感覚だったんですよ。それが、わりといい感じで受け入れられたというか。

ーー「sub/objective」は言葉の気持ちよさがあり、主観/客観というテーマ性も、作品の作り方に関わることだと感じました。日頃から、主観的であること、客観的であることというのは気にかけていることなのでしょうか。

ぼくりり:最近はそういうことはないんですけど、この曲をつくっていた時期は、なにかをやりたいと思ったときに、「でも、周りの人はどう思うかな」ということを考えていましたね。それでやってみようと。そういうのが、2番に出ています。

ーー<いつしかすり替わる1人称から3人称へ>というフレーズから始まって、客観的なオブジェクトである自分が出てきますね。

ぼくりり:そうです。自分がやりたいことより、人の目から見てどうなんだ、という方からしか考えられなかったな、という時期のことで。1番は、普通にやる気が出ないな、という感じ。主観、客観とふたつの“やりたくない自分”がいて……というのを曲にしました。

ーーそういう視点移動というか、2つのカメラがある、という構成はどの曲にもありますね。とても主観的な部分もあるし、一方でフッとカメラが遠のいて、ちょっと俯瞰的に眺めるようなところもある。1曲目の「Black Bird」もそうかもしれないけれど、自分をちょっと突き放して見る、というか。

ぼくりり:唐突に、別の人が出てきたりとか(笑)。

ーーそうそう。その押し引きがリリックの特徴の一つだと思うのですが、これは書くなかで自然と出てきたものなんですか?

ぼくりり:シンプルに、尺がもたないから逆のことを書くか、みたいなところがあって。「1番と2番で視点が違う」って、“Jポップあるある”じゃないですか(笑)。あとは、やっぱり言いたいことが1番で終わっちゃうんです、基本的に。初期衝動がもつのは1番まで。曲がつくりたい、つくろう、書けた!……でも、1分で終わり。それだとちょっと困るな、って。それなら、逆の立場とか、別の人の視点で書いてみよう、という感じですかね。

ーーなるほど。そうして仕上がってみると、多面的になって曲の完成度が上がりますよね。

ぼくりり:やったー!という感じです。

ーーちなみに、曲はいつごろできたんですか?

ぼくりり:6月にフルアルバムを出すという話になって、そこから夏休みにかけてつくりました。もともとできていた曲もあったし、発表はしていなかったけれどつくっていた曲もあって、それも含めて、1枚で見たときにバランスが取れた構成になるように、新曲をつくって。

ーー学校もあるなかでスゴいと思います。曲のつくり方もメジャー作品としては異色で、ネットを通じてトラックメーカーとやり取りし、作り上げていくんですよね。

ぼくりり:独特なんですかね。ほかの人のことはよくわからないので。あとは、別にラップを乗せるようなトラックではなくて、ただインストとしてかかっていた音源がめっちゃいいな、と思って歌詞を乗っけてみる、ということも多いですよ。別に売ろうとかじゃなくて、普通に楽しいから作りたいなって。3曲目の「A prisoner in the glasses」とか、4曲目の「Collapse」なんかはそうですね。

ーー気に入ったからとにかくやってみよう、という衝動で作る。

ぼくりり:そうですね。人に聴かせようというところからスタートした曲は少ないです。ただ、2曲目の「パッチワーク」なんかは、ラップをあまり知らない人にも刺さるような曲があったほうがいいと思って、意識的にポップ寄りに作った曲で。もちろん、自分がやりたくないことをやっているんじゃなくて、自分が持っていて出せる幅のなかで、ということですけど。そもそも、歌詞を書くタイミングでは、「この歌詞が多くの人に受け入れられる」なんてわからないですしね。基本的には、自分が一番いいなと思う言葉のリズムとか、気持ちのいいフレーズを書いている感じです。

ーー気持ちよく響く言葉と、意味の部分を一致させるのって難しいですよね。今作はそこがうまくいっていると思います。

ぼくりり:難しいです。ただ、昔からわりと本を読むのが好きで、言葉の引き出しは人より多いほうかな、と。最近はあんまり読めていないですけど、小学生のころは海外のファンタジー小説が好きでしたね。週に12冊くらい読んでました。それもあってか、歌詞から浮かぶイメージは街中というより、どこかよくわからないような、地名もわからない場所だったり。そこはボヤっとしていますね。

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