電波少女が語る、ネットラップの強み「表に出るのが苦手でも、ヒップホップで表現できる」

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左、ラップ担当のハシシ。右、ダンス・DJ担当のnicecream

 ネットラップシーンで注目を集めている2人組のヒップホップユニット・電波少女(でんぱがーる)が、2ndアルバムにして初の全国流通盤となる『WHO』を7月8日にリリースする。同アルバムは、収録曲のほとんどがフィーチャリング楽曲となり、NIHA-C、抹 a.k.a ナンブヒトシ、NOBY、TWOFACEなど、ネットラップシーンで活躍するアーティストが多数参加。幅広いジャンルのサウンドで、同シーンの“いま”を切り取った作品であると同時に、電波少女のラップが存分に楽しめる内容となっている。ラップ担当のハシシと、ダンス・DJ担当のnicecreamは、同アルバムをどんなコンセプトのもとに制作したのか。また、ネットラップシーンは現在の日本語ラップシーンとどう異なり、どんなメリットを持っているのか。結成のきっかけから、ネットラップならではの魅力についてまで、幅広く語ってもらった。

「ネットラップには音楽以外のしがらみがほとんどない」

ーー今回のアルバムは電波少女にとって初の全国流通盤となるわけですが、この作品をリリースするまでには紆余曲折があったと思います。まずは結成の経緯を教えてください。

ハシシ:地元の宮崎でもともとヒップホップクルーを組んでいて、そこにはnicecreamもいたんですけど、けっこう体育会系のノリで先輩後輩の上下関係とかが煩わしかったんですよ。それで「20歳を過ぎてそういうのに縛られるのはイヤだな」と感じて、まずは僕がひとりでネットラップシーンに行ったんです。2008〜2009年頃、らっぷびとなどが活躍していた時期でした。そこで、そのコミュニティの中で知り合った友人たち6名と、週に一回、ネットラップのかっこいい曲を紹介したりする2時間くらいのラジオ番組をやろうということになって。メンバーには当時、中学生3年生の女の子がいて、その子がいわゆる“電波”な感じの変わった子だったので、グループ名は僕が「電波少女」と名付けました。でも、いろんなルールをガチガチに決めすぎたからか、3〜4回やったところで頓挫してしまって。だけど僕は大々的に告知もしてしまったから途中で辞めるのが恥ずかしくて、そのまま電波少女として活動し続けることにしたんです。その後、だんだんと認知があがってきたところで上京しました。当初はもう一人のメンバーと一緒にライブをしたりもしていたのですが、バックDJが欲しいということになり、先に上京していたnicecreamに声をかけて、最終的にはいまの2人体制に落ち着きました。

nicecream:僕は高校3年のときに、宮崎でも都会の方の学校に通っている先輩に「いっしょにダンスをしないか?」と誘われたのがきっかけで、軽い気持ちでブレイクダンスを始めました。でも、映画の『YOU GOT SERVED』などを観たら衝撃を受けて、気付けば本格的に踊るようになっていました。その後、上京してしばらく経ったところで、ハシシに「ボタン押すだけでいいから」って誘われて、やっぱり軽い気持ちで電波少女のバックDJをするようになりました。それで、たまたまライブのステージが大きかったときに「せっかくだから踊れば」っていわれて、曲間でブレイクダンスをするようになって、いまのスタイルに繋がった感じですね。

INVADER feat.RAq

ーーネットラップシーンは、いわゆる日本語ラップのシーンとはまた異なる位置にあるように思います。それについてはどう捉えていますか。

ハシシ:インターネットのサイトに音源をアップすることがメインの活動となっているアーティストが、いわゆるネットラップシーンに属していて、良い意味で敷居が低く、誰でも参加しやすいのがこのシーンの特徴だと思います。ただ一方で、ネットラップ自体に対する偏見もあって、「オタクっぽい」とか「家からぜんぜん出ないでパソコンばっかりやっているんでしょ?」みたいなイメージもあるようです。まぁ実際、僕はほとんど家から出ないんですけどね(笑)。最近はそういった偏見も減ってきて、日本語ラップのシーンでも越境的に活躍するアーティストも増えていますが、やはりまだ壁を感じています。

ーー日本語ラップシーン、とくにクラブなどの現場を中心としたシーンには、たしかに閉鎖的な部分もあるかもしれません。

ハシシ:僕自身は、ネットラップシーンをオタク文化とヒップホップ文化のハイブリッドとして捉えていて、そこに先端的な魅力を感じていたのですが、このシーンで音楽を続けてきて感じるのは、やはりこの2つの文化はなかなか混ざりにくいということです。でも、だからこそやりがいもあると思っていて。本来、ヒップホップは誰でも始められるものだと思うのですが、日本語ラップのシーンは少し敷居が高いイメージがあり、クラブもなかなか行きにくい。僕自身がそうだったように、体育会系のマッチョな気質が、そう感じさせるのかもしれません。でも、ネットラップはそうした部分があまりなく、だからこそ表には出るのが苦手なタイプのアーティストでも、ヒップホップで表現ができる。実際、僕らのライブには、普段はあまりクラブにはいかないというお客さんも足を運んでくれていて、そうした間口の広さはネットラップシーンの良いところだと思っています。もちろん、僕自身はTwiGyさんが大好きですごく影響を受けているので、日本語ラップのシーンでもちゃんと認められたいという気持ちはあります。

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