『hollow world』リリースインタビュー
ぼくのりりっくのぼうよみが語る、ネットと音楽のリアル「僕自身すぐにコロコロ変わっちゃう」
「今度は完全に想像上の人から見た景色を描写してみたい」
ーー「だから元気出していこうぜ!」みたいなメッセージより、自分が見ている世界のあり方というものを曲のなかに表現していると。先ほど、「人に聴かせようというところからスタートした曲は少ない」と言っていましたが、その先に「多くの人に聴かれたい」という思いはありますか?
ぼくりり:どうせアルバムを出すんだったら、売れたほうがうれしいです。だから、多少は“寄せ”はしますけど、絶対にこのラインは守ろう、というのはありますね。グルーヴ感だったり、自分が聴いていて音として気持ちがよかったり。たぶん、小さい頃に母親の影響で聴いていた音楽の影響もあるんでしょうね。EGO-WRAPPIN'とかMONDO GROSSOをすごく聴いていたので。
ーーそんな音楽的なバックグラウンドがあるんですね。本作のタイトルについてもうかがいます。「hollow world」というのは、そのまま日本語にすると空虚な世界、みたいな意味ですね。
ぼくりり:それこそ、鏡の向こう側の世界、という感じです。インターネットもそうだし、もともとそっちにフォーカスしていることが多い……というか、メインは絶対にそっち側ですね。
ーーさっきも話に出た「A prisoner in the glasses」の世界ですよね。例えば今後、もうひとつの世界であるところの“現実”側に視点が移動することもありそうですか?
ぼくりり:どうなんでしょうね。大学に行ったら変わるかもしれないけれど、今の環境についてあまり感じることがなくて。現実でもネガティブな感情を刺激するようなことが起きたら、そういう曲も作るんじゃないかな。現実の話はしない、みたいな考え方はしていないので、視点が移ることは全然あると思います。
ーー例えばニコ動出身の米津玄師さんは、1stアルバムではネット時代の混沌とした曲がほとんどだったと思うんですけど、最近の作品にはシンプルなラブソングもあります。
ぼくりり:そうですね。そのことでショックを受けるとか、ハチさんは変わってしまったというふうには全然思っていないです。ただ、ネット時代の曲の何を言っているのか全然わからないのに聴いてしまう、あの強さも好きでしたね。
ーー「ぼくのりりっくのぼうよみ」の楽曲も、音で聴いただけだったらすべて理解できる人は少ないでしょうね。あえてわかりやすくせず、混沌としたままの状態で出したい、という思いが強いんでしょうか?
ぼくりり:そうですね。逆に抽象化したい、と思っていて。例えばハチさんなら、入れたい思いがあって、それをフィルターにかけて、抽象的すぎる言葉を抜くみたいな作り方だと思うんですけど、僕は逆に、具体的な言葉をろ過するフィルターがあるというか。そういう言葉を使っている人がどうこうじゃなくて、僕が「おでん」とか「缶コーヒー」みたいな言葉を使うとダサいんですよ。僕としては、わかりやすすぎると面白くない。こういうことなのかなって想像して、解釈が違うのも面白いじゃないですか。僕自身、どんなつもりで書いた歌詞か覚えていなかったりするんで、正解も何もなくて(笑)。
ただ、メロも聴きにくくて、トラックも奇抜で、歌詞もめちゃくちゃだと、聴きたくならない。だから、僕はメロだったりトラックだったりに、シンプルな部分を託していて。そういうバランスは考えていますね。
ーー大学受験も控えているし、これからどんな活動をしていくのかも気になります。
ぼくりり:普通にライブもやってみたいなって。まだ4回くらいしかやったことがなくて、最後は閃光ライオット、1年以上前なんです。自分はやりたかったんですけど、ライブハウスの水道管が破裂して流れちゃったりして(笑)。勉強も音楽もやりたいことなので、どっちもがんばりつつ、という感じですね。作りたい曲もいくつかあるんですけど、今はまず、このアルバムがどう受け入れられるのか、みんなにどう刺さるのか、ということが知りたいです。模試の結果を待っているような状態で、ワクワクしつつも、E判定だったらどうしようって(笑)。
ーー作りたい曲がある、ということですが、今作とはまた違ったタイプの曲も?
ぼくりり:そうですね。今回は架空の人でも僕の中にある感情の何%かを拡大した人なので、今度は完全に想像上の人から見た景色を描写してみたい、とは思います。
ーー完全にストーリーテラーとして。このアルバムにも、そのヒントになりそうな曲がありますね。7曲目の「Venus」とか、8曲目の「Pierrot」とか。
ぼくりり:そうですね。別の窓を作りたいなっていう感じで、いろいろやってみたいですね。
(取材=神谷弘一/写真=神藤剛)
■リリース情報
『hollow world』
発売:12月16日(水)
価格:¥2,000(税別)
<収録曲>
1.Black Bird
2.パッチワーク
3.A prisoner in the glasses
4.Collapse
5.CITI
6.sub/objective
7.Venus
8.Pierrot
9.Sunrise (re-build)
■関連リンク
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