アイドルソングはどのように作る? 濱野智史とCHEEBOWによるPIP楽曲ミーティング

th_140808_to_005.jpg
左、CHEEBOW氏。右、濱野智史氏。

 TwitterやUstreamなどを使った企画講座などを行っている「ツブヤ大学」のイベントとして『濱野智史&CHEEBOW、楽曲ミーティングなう! #PIP』が、8月8日に渋谷「The SAD cafe STUDIO」にて開催された。

 同イベントは、気鋭の批評家/情報環境研究者でありながら、重度のアイドルヲタクとしても知られる濱野智史氏が、自身がプロデュースするアイドルグループプロジェクト「PIP(Platonics Idol Platform)」のオリジナル曲作成を、週末音楽家のCHEEBOW氏に依頼、そのミーティングの模様を公開するというもの。

 本業はiPhoneなどiOS系のアプリ開発者で、じつは音楽的なバックボーンがほとんどゼロにも関わらず、「愛乙女★DOLL」などの人気曲を手がけてきたCHEEBOW氏は、どのようにしてアイドル楽曲を制作しているのか。そしてPIPの初オリジナル曲はどのような仕上がりを目指すのか。

 コンセプト設計やサウンドの調整、作詞の方法論まで、アイドル楽曲制作ならではのプロセスについて語り合うとともに、PIP楽曲の方向性を探った。

CHEEBOW「ライブアイドルの楽曲は、必ずしも多くの人の共感を得る必要はない」

濱野:作曲のオファーを受けた際、まずどういうことを考えますか?

CHEEBOW(以下:C):始めはやっぱり「どんな曲にするか」を考えるんですけど、その時に「そのアイドルに今どんな曲が求められているのか」「どんな曲を歌ったら新しいファンを呼び込めるのか」ということを意識して、そこから「ファンの人達が何を欲しているのか」というところまで掘り下げて考えます。実際に制作に入ると、曲を作って、歌詞を書いて、アレンジを考えて、ミックスして、マスタリングするという流れになります。今はネットで配信するので、ネット用マスタリングなんて工程もあります。僕はこのマスタリングという工程があまり得意ではないので、外注に出したりしていますね。濱野さんがプロデュースするアイドルの場合は、ライブ活動が主軸ですから、ライブでより盛り上がるチューニングをしなければいけません。だから、曲を作った後もできるだけライブに足を運んでいます。

濱野:だからCHEEBOWさんはよくライブ会場で見かけるんですね。らぶ☆けんの現場とかで「よく来てるなー」って思っていました。

C:会場に行って、ファンの盛り上がりや音を確認するんです。そうすると「ここはもう少し間奏を長めに取った方が良いな」といったことがわかります。

濱野:なるほど。では、具体的なアイドルソングの作り方についても教えてください。

C:例えば、5人組の女性アイドルグループで、メンバーはほぼ高校生だったとします。それで「夏の終わり頃に披露したい」というオファーが6月くらいに来たとしますね。夏の楽しさと、終わってしまう寂しさが両方欲しい、みたいな内容で。そこでまず「彼女たちにとっての『夏』って何だ?」と考えるのですが、そのキーワードは一般的に出てくる「夏休み」「プール」「天体観測」とかではないんですね。彼女たちにとっての夏をリアルに考えると、アイドルフェスであり、ライブであり、握手会などのイベントだと思うんです。なので基本的に僕はここを原点としてライブアイドルの曲を考えることが多いです。彼女たちの夏の寂しさって、ライブの日々が終わってしまう寂しさとか、来年もこんな風にいられるかわからない寂しさとか、そういうことも含んでいると思うので。

濱野:すごい! 俺が今、書いてる歌詞と全く同じ発想です(笑)。たぶん、今のアイデアをそのまま使うことになるんじゃないかな。

C:なぜこういう風に考えるのかというと、ライブアイドルに限って言えば、曲が共有されるのはアイドルとファンの間だけで、普通にテレビを見たり、CD屋でCDを買ってくれるリスナーが聴くわけではない。だから、必ずしも多くの人の共感を得る必要もないんですね。アイドルが多くの人に「見つかる」手前までは、僕はこの手法は大いにアリだと思っています。そういうわけでコンセプトは決定です。「夏のライブでのファンとの思い出」「野外ライブでファンのサイリウムがきれいだった」といった感じですね。それに「でも来年もここにいられるのかな」みたいな寂しさも込めると。アイドルの子たちはみんな「夏の夕暮れのサイリウムは本当に綺麗で嬉しい」って言ってますからね。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「音楽シーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる