UUUMはなぜクリエイティブとビジネスを両立できる? 「YouTube Works Awards」受賞の背景にある“五方よし”の考え方

UUUM、創造とビジネスの両立

クリエイターの「やりたい」を引き出す企画設計の極意

ーークリエイターからの信頼関係があったからこそ、今回の受賞につながったと思うのですが、何かプロジェクトを進めるなかでクリエイターとの絆が深まり、より良いアウトプットが生まれたエピソードがあればお聞きしたいです。

宮﨑:私はよく、「どんな企画をやってみたいか」「どういった案件がほしいか」というのをクリエイターの方にヒアリングしていました。本人が「やりたい」と感じているものに対しては、すごく能動的に動いてくれるんですよね。逆に仕事となると、どうしても仕事脳になってしまって、クリエイターの良さが発揮できない部分もあります。だからこそ、彼らの関心やモチベーションと、案件の目的や課題をどう結びつけるかが肝になります。そこを丁寧に設計していくと、「すごく楽しかった」と言ってもらえるようになるんです。

 クリエイターの楽しいと思う原動力は、動画越しに視聴者にも伝わって、エネルギーのあるコンテンツになるんですよね。それが積み重なって、「またUUUMと一緒にやりたい」と思ってもらえる関係性が生まれていくんだと思っています。もちろん、細かなディテールの部分にも気を配り、最後まで安心・安全に進行できるような運用体制を整えているのが組織の特徴になっています。

ーー広告における動画クリエイティブも、いままさに変化の最中だと思いますが、未来を見据えたときに核となるような考え方や姿勢について、現段階で考えていることがあればぜひ教えていただきたいです。

宮﨑:ちょうど最近、Z世代の若い方たちと話す機会があって、そこから学ぶことがいくつかありました。とくに強く感じたのは、「広告が届きにくくなってきている」ということです。いまの時代、ある種決めつけてしまうようなマーケティングだとターゲット層には響かないですし、Z世代の方からも「そういう風に決めつけられたくない」という声が聞こえてきます。だからこそ、彼らのリアルなインサイトや日常の感覚をしっかり理解した上でコミュニケーションを設計しないと、いくら広告を出しても見向きもされないわけですね。

 もちろん、広告効果とコストの維持とのバランスは見なくてはなりませんが、商品やサービスのブランド価値をプロモーションしていくうえでは、若い世代にどう寄り添っていくかが大事な部分だと思います。

 Z世代という括り自体も良くなくて、彼らの価値観は年齢や属性といった単純なデモグラフィックで切り分けられるものではないんですよね。だからこそ、ターゲットをどう理解するかという点は、マーケターにとって一番難しく、かつ重要な部分だと感じています。

 数年前と比べて大きく変わったのは、“多様な価値観”が当たり前として受け入れられるようになってきたことです。そのように、一人ひとり異なる価値観を持つ人たちに対してどう届けるのか、どんなアプローチができるのかを考えるのがマーケターに求められている力であり、腕の見せ所なんじゃないかと考えています。

ーー多様を肯定する世の中になってきているからこそ、逆にひと括りにしたことによって、炎上が生まれてしまう部分もありますし、その辺りの絶妙な塩梅は難しいところですよね。

宮﨑:必要なのは、やはり“バランス感覚”だと思っています。未来の話で言えば、まさに可処分時間の奪い合いであり、いまは生活のあらゆるタイミングでメディアやコンテンツに接触するようになってきています。そうした状況のなかで、コンテンツの質や体験設計はもちろん、どのプラットフォーム、どのフォーマット、どんな技術がいいのかなどをしっかり見極めて、先手を打っていく必要性は感じています。また、“購買行動の変化”にも注目していくべきだと考えています。

 従来の消費者が商品やサービスを認知してから購入に至るまでの心理プロセスであるAIDMA(アイドマ)のようなマーケティングモデルが崩れつつあり、スマホを操作中に偶然目にした商品を、その場で気に入ってすぐ購入してしまう「パルス型消費」をはじめ、様々な購買行動が増えてきています。購買プロセス自体が大きく変化しているいま、その変化をどう捉えていくかが非常に面白くて、重要なテーマだと思っています。

「視聴者にどう届くか・どう響くか」という視点を大事にしたい

ーー今後はどのようなクリエイティブを作っていきたいとお考えですか?

宮﨑:最近では、新たにBeRealとの取り組みをスタートしました。BeRealを軸に活動しているクリエイターと連携したタイアップ広告メニューの提供を進めています。最新のトレンドに敏感な若い世代や、「いま何が流行っているのか」という動きをキャッチし続けることが、これからのマーケティングでは非常に重要だと感じています。

ーー最後に、広告を出すプラットフォームとして、YouTubeとどのように向き合っていくのかについてお伺いできればと思います。

宮﨑:ここ数年でも、YouTubeの長尺動画は以前よりも長くなってきており、クリエイター自身が「何を発信したいか」といった意識も変わってきています。そのため、マーケティングの手法も使い分けや設計の仕方が大きく変わってきていると感じます。また最近では、コネクテッドTVのようなテレビのようなリッチな大画面で動画を視聴する人も増えていて、ショート動画とは対照的な視聴体験になっています。

 クリエイティブの使い分けについては、ショート動画ではどう想起させるかを意識し、テレビのようにじっくり見てもらえる環境ではいかに商品の詳細を伝えて興味・関心を高められるかがポイントになるでしょう。ただ、私たちとしては、あえてテレビ用とかショート用といったように細かく分けて制作するのではなく、“視聴者にどう届くか・どう響くか”という視点を大事にしていきたいですね。

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