UUUMはなぜクリエイティブとビジネスを両立できる? 「YouTube Works Awards」受賞の背景にある“五方よし”の考え方

UUUM、創造とビジネスの両立

 優れたクリエイティビティと高いビジネス成果を両立させたYouTube広告キャンペーンを表彰する「YouTube Works Awards Japan 2025」にて、UUUMはYouTube Creator Collaboration部門賞を受賞した。変化の激しい動画広告市場において、高い広告効果を生み出すクリエイティブは戦略的なコンテンツ立案とコミュニケーション設計が鍵を握る。今回、UUUMは動画本数2000〜3000本のなかから作品を厳選し、数カ月をかけて受賞に向けた準備を進めてきたという。

 UUUM株式会社 執行役員の宮﨑航氏に、アワード受賞の舞台裏と、これからの動画広告に求められるクリエイティブ制作や姿勢について話を聞いた。(編集部)

「どういう広告効果があったか」を選定基準に数千本の動画から厳選

UUUM株式会社 執行役員 宮﨑航

ーーまずは「YouTube Works Awards Japan 2025」でのYouTube Creator Collaboration 部門賞受賞、おめでとうございます。受賞をした率直な感想についてお聞かせください。

宮﨑航(以下、宮﨑):「YouTube Works Awards Japan」は2021年の第1回から参加していて、そのときは「YouTube Creator / Partner Collaboration」部門で賞をいただくことができました。今年ふたたび受賞できたことで、社内も大いに盛り上がりましたし、私自身もこれまでの取り組みが報われたと感じ、感慨深いものがありました。

 ある種、クリエイターの主戦場であるYouTubeのプラットフォーム上で、UUUMという社名をしっかりと打ち出していきたいという思いが強いからこそ、このアワードのエントリーに向けては数カ月の準備をかけて臨んでいます。UUUM全体で、1年間で世に出す動画は2000〜3000本ほどありますが、そのなかから「どれが一番このアワードにふさわしいか」を社内で議論し、厳選しながら応募するなど、相当力を入れて取り組んできました。

ーーアワードの基準である「高い広告効果を獲得した動画コンテンツ」というテーマが設定されているなか、応募する動画を選定していく際にはどんな基準を持って判断しているんですか?

宮﨑:「具体的にどういう広告効果があったか」を選定基準に据えています。単にクリエイターが発信するだけでなく、綿密なコミュニケーション戦略が練られており、再生回数や興味関心度の向上、コメント数、SNSでの言及数など、多様な指標をウォッチするとともに、どういった文脈のなかで、自分たちの取り組みが一番効果を発揮できたのかという視点で選定している点が我々の強みだと考えています。

ーーYouTubeクリエイターを活かした施策のほかにも、バラエティ豊かな動画が多数ノミネートもしくは受賞をされていました。これらの動画を作る上でのチームの方針や企画などは普段どのようにされているのでしょうか。

宮﨑:当社の組織体制はクリエイティブ企画を担当するチーム、営業・マーケティングを担うパートナーチーム、コミュニケーション戦略を構築するストラテジーチームの3つで構成されています。企画立案だけでなく、撮影から納品までの制作工程にも力を入れており、各チームが柔軟に連携しながらクライアントへの価値提供を行っています。

 動画の制作スタイルとしては大きく2つのパターンがあります。ひとつは、クリエイターが自ら発信したいアイデアをもとに企画を進めるケースで、もうひとつはこちら側でコミュニケーション設計を行い、具体的な企画内容をオーダーするケースです。どちらのアプローチを取るかは、クライアントのニーズやプロジェクトの内容によって柔軟に判断しています。

コンテキストに寄り添う広告クリエイティブのあり方とは

ーーYouTubeの仕様やトレンドの変化に伴って、アウトプットしていくクリエイティブの方向性はこの数年間でどのように変わってきていますか?

宮﨑:今回ノミネートされ、ファイナリストに選ばれた作品の多くは縦型コンテンツでした。数年前までは、クリエイターが紹介するだけでも十分に効果がありましたが、いまは広告が視聴者に届きづらくなってきており、より工夫されたアプローチが求められています。たとえば、シャウエッセンの場合は「パリッ!!」という音の魅力を伝えるうえで、もっとも効果的なのがショート動画だと判断し、企画段階から縦型で提案しました。

ASMRシャウエッセン

 商品やブランドによって訴求の方法は異なりますが、プラットフォームごとのトレンドや視聴者の視聴態度、さらにはクリエイターが発信しているコンテキストの内容を理解し、しっかりとコンテンツに乗せることでファンに届けることが重要なポイントです。

 クリエイターのリアクションが重要な要素であれば、活かした演出を行いますし、一方、ブランドらしさと広告配信を意識した縦型のクリエイティブを設計するなど、クライアントの課題と目的に合わせて、コンテクストに適した発信内容を最適なかたちで届けることが重要だと言えます。

ーー同じショート動画というプラットフォームや尺でも、ネイティブコンテンツのようにするか、CMのように上げるかで、作り方の違いがあります。どちらが適切かを判断する基準を明確化するのは結構難しいなと思いますが、何か抑えるべきポイントはあるのでしょうか?

宮﨑:よく広告では年齢や性別などのデモグラフィックでターゲティングしますが、視聴者の受け取り方や態度はクリエイターによって全然変わってきます。そのため、さまざまなタイプのクリエイターを起用することで、最適なクリエイティブを差し込んでいくことが非常に重要だと感じています。

 LINEの広告やタイアップのビジュアルではコミュニケーションを大事に考えていて、単純に広告クリエイティブもリアクションだけ取ればいいわけではなく、ターゲットの世代や気持ちに寄り添い、“自分ごと化”できるようなストーリーや表現を意識しています。

 また、“視聴者を置いていかない”ところも大事です。クリエイターを起用する際も、知名度が高い、ブランドイメージに合うといった理由で選ぶのではなく、その人とブランドやサービスとの親和性を見出して、クリエイターの過去の発言や原体験をしっかり見ながらアサインしていくことが大切だと考えています。

 視聴者の“コンテキスト”という言葉はあまり使わないかもしれませんが、「クリエイターのファンが喜びそうな要素がある」「将来的に潜在顧客になり得る」「ブランドにもマッチする」の三方のバランスを意識するといいのではないでしょうか。

「五方よし」を追求するUUUMのクリエイティブチーム

ーーマーケティングパートナーユニットには、どのようなバックグラウンドを持った方が在籍していますか?

宮﨑:メンバーのバックグラウンドは本当にさまざまですが、意外にも広告会社出身の人は少なくて。営業チームには、以前はまったく別の業界で商材を扱っていたようなメンバーも多くいます。そうした多様な視点や価値観が入ってくることで、いろんなディスカッションや新しい企画が生まれやすい組織になっていると感じています。一方で制作チームは専門性が必要なため、映像制作会社や長年クリエイティブに携わってきた人が多いです。ドラマの制作経験がある方など、広告畑以外のクリエイティブ出身者も加わっていて、それぞれの分野のプロが集まり、チームとして機能しているのが特徴です。

 チーム編成としては、クライアントと直接やり取りするフロント部門、グローバル部門。制作部門はディレクション部隊と、クリエイターのアサインを担当するキャスティング部隊に分かれています。後者は、所属クリエイターだけでなくサワヤンさんのような外部クリエイターとも連携しています。そのほか、技術部門、企画部門が約5名という構成です。

 特徴的なのは、営業メンバーが単に案件を受け持つだけでなく、最初のコミュニケーション設計からコンテンツの企画・制作まで一貫して考えている点です。どういった発信がユーザーとの関係性を深められるかという視点を持ちながら、クリエイターに対して提案できるのが強みだと言えるでしょう。

ーーそこまで裁量性があるのはすごいなと思いつつ、逆に入社してから勉強する量やインプットすることが多そうですね。

宮﨑:もちろん、インプットしなければならないことはたくさんありますが、クリエイターやSNS関連のコンテンツに興味を持つメンバーが多いため、トレンドや注目されているコンテンツを追いかけることに対しては感度を高く持っていると思います。

ーーそうしたクリエイティブをチームで作るにあたって気をつけているポイントや、UUUMならではのやり方・カルチャーなどがあれば教えてください。

宮﨑:クリエイティブチームでは「五方よし」という言葉を掲げています。クライアント・クリエイター・視聴者の「三方よし」に加えて、自分たち(自社)と未来という2つの視点も重視していて、5つの視点から関係者全員が「いいね」と思えるものを創っていこうと常に考えています。クリエイティブを成立させるには、クリエイターとの信頼関係が不可欠です。そのため、私たち自身が彼らよりも先にトレンドを把握したり、技術を積極的に学んだりする姿勢を大切にしています。

 好きなものを突き詰める姿勢は尊重しつつも、「常に時代に追いつく努力をしよう」という話は日常的にしていますね。メンバーそれぞれが自己研鑽を惜しまず、「新しいことにチャレンジしてください」と伝えるようにしています。そういう意味では、彼らもクリエイターだと捉えていますね。

 営業部門にあたるマーケティングパートナーのチームは、「日本一クリエイターとクライアントに愛される組織になろう」というビジョンを掲げています。愛されるとは何か、どうすればそう思ってもらえるかをチーム全体で日々考えながら行動しています。クライアントとクリエイターの両者のあいだに立ち、丁寧なコミュニケーションを通じて信頼関係を築いていくことを使命としています。

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