連載:クリエイティブの方舟(第三回)
水溜りボンド・カンタ×映画プロデューサー・雨無麻友子対談 “高校&大学の同級生”からみた「クリエイターとしての変化」

プロデューサーを目指したきっかけは斎藤工?
ーー雨無さんがプロデューサーを目指したきっかけもお伺いしたいのですが。
カンタ:俺も、それ気になる!
雨無:高校時代に、斎藤工さんに「プロデューサーに向いてるよ」って言われたのがきっかけかな。
カンタ:待って、どういう流れ!?
雨無:学生の映画祭にぽんと現れたのよ。
カンタ:それは、ゲスト出演みたいな?
雨無:ううん。普通にフラッと観客として。なんか、そういう場所でインプットをされているらしくて。
カンタ:すごいなぁ。
雨無:そこで知り合って、いろいろお話しさせていただいて。
カンタ:どんな話をしたの?
雨無:「あの作品は、こういうところをもっと伸ばせばいいと思うんですよね」みたいな。いま考えたら、すごくおこがましいことを言ってたんだけど(笑)。
カンタ:そのときはまだプロデューサーをしていたわけじゃなかったんだ。
雨無:うん。それなのに、勝手にプロデューサー目線で話してたの(笑)。多分、そのころから、まだ見えていない才能に着目して、いろいろ考えるのが好きだったんだと思う。ちょうど同時期に、松永(大司)監督にも出会ったんだけど、松永監督にも「プロデューサーに向いてるよ」って言われて。
カンタ:うわっ、それもう導きみたいな感じじゃん。
雨無:何かしらのかたちで、映画に関われたらいいなと思ってたけど、プロデューサーかぁって。なんか納得したんだよね。
カンタ:でも、分かるかも。「こういうことがやりたいです」「こういうことができます」って言える人はいっぱいいるけど、死ぬ気でやるんだろうなというのが伝わってくる人ってなかなかいないから。雨無さんは、当時から気合いが入りまくっていたというか……。
でもさ、お互いもう10年とかやってるわけじゃん。よかったよね。どっちかがいなくなるとかなくて。何なら、2人ともいなくなる可能性だってあったわけだし。
雨無:そうだね。諦める可能性もあったと思う。
カンタ:おかげで、いまもいろいろ助けてもらって……。
ーーいろいろ相談されているんですか?
カンタ:映像のことはもちろんだけど、Arksをどうしていこうとかも、たまに相談しています。だって、経済誌『Forbes』が選ぶ世界を変える30歳未満の日本人に入ってるんですよ!
雨無:いやいや(笑)。
カンタ:そんなすごい人が近くにいてくれるって、本当にありがたいですよ。映像会社を設立してから、いろいろ不安なこともあるけど、雨無さんがいてくれると思うと、心強いもん。しかも、学生時代からの友達だから、めちゃくちゃ信頼できるし。
雨無:たしかに、そこがいいよね。
カンタ:あと、雨無さんがどんどんビッグになっていくことが、僕の希望にもなるんだよ。これだけ誠実にやっていたら、いいループに入っていくんだなって。そういうのを近くで証明してもらえると、自分も間違ってないんだなと思うことができる。
雨無:それは、お互いさまだよ!
カンタ:ってか、逆に悩みとかないの? いつも、俺が相談しちゃうから。
雨無:悩み? ないなぁ。
カンタ:ないんかい!
雨無:あっ、猫が飼いたいです! 忙しいなかで猫を飼うにはどうすればいい?
カンタ:それはもう俺には解決できない!(笑)
雨無:カンタは、習慣化みたいなのがすごいじゃん。スケジュールを組むのがうまいというか。
カンタ:最近、とくにね。週4くらいでジムに行って、朝6時に起きて、20時以降はパソコンを触らないっていう生活を続けてる。今日も、だって……。
雨無:えっ、パソコンを持ってきてない……!! 前は、タクシーを待っているあいだもパソコンで編集してた人が!
カンタ:この間、東海オンエアのとしみつに「亀が甲羅を背負わずに歩いてるところを見ちゃった感じ」って言われた(笑)。
雨無:あはは(笑)。いいたとえ! いつも持ってるから、なんか足りない感じするもん。どうしたら、そういうふうになれるの?
カンタ:1個変えたくらいじゃ生活って変わらないんだよ。だから、10個変えてみようと思って、でもそれでも変わらなくて。で、20個変えてみたら、全部ひっくり返って、めっちゃ朝型になった(笑)。
雨無:変えられなかった時期もあったんだ。
カンタ:あったよ。動画の編集を始めて、もうちょっとこだわりたいって思うと、だんだん時間が過ぎていって。
雨無:うわぁ、分かる。
カンタ:そうすると、気づいたら自転車操業みたいになっていくんだよね。効率が悪いのは分かってるんだけど。でも、会社を設立してからは、自分がちゃんとしないと、全員が時間を無駄にすることになるんだなと気づいて。
雨無:なるほど。素晴らしいことですよ。
カンタ:あとは、メンバーもそうだけど、家族ができたりとか。結局、幸せってなんだろう? って考えたときにさ、幸せじゃないと、幸せなものって作れないんじゃないかと思えてきて。普通さ、深夜まで編集作業をしてると、しんどいじゃん。でも、俺は永遠にできちゃうから、できない人の気持ちが分からなかったの。えっ、なんでやらないの? って思ってた。
雨無:わたしも、そういうときあったなぁ。
カンタ:他人の辛さに鈍感だったんだよね。あと、突発性難聴になったのもでかかったかも。気づいたら、精神的に疲れてたんだと思う。そのタイミングで、部屋もすごく綺麗になって。朝起きるのが辛くて仕方がなかったのが、早くから仕事した方が気持ち良くない? ってマインドに変わっていった。
雨無:生活習慣、やっぱり大事かぁ。
カンタ:やばい?
雨無:そこまでやばくはないけど、『Forbes』で選ばれてから、もっとクリーンに生きたいなと思うようになった。誰かを幸せにする方向に視点を変えていかなきゃなという気持ちも強くなってきたし。
カンタ:でも、20歳の時の自分たちに会えたとして、「ゆっくりやっていけばいいよ」とは言わなくない?
雨無:言わないね。
カンタ:だから、人生には頑張らなきゃいけない時期ってのがあるんだよね。でも、最近の日本はみんなが疲れちゃうループに入っている気がするから、雨無さんとか次世代のクリエイターたちが、カッコいい働き方はこれです! って提示してくれたら、変わっていくかもしれない。
雨無:そうそう。作品だけじゃなくて、そういうところにも情熱を注いでいかなきゃなと思ってる。わたしたちも、そんな年齢になったんだね。
カンタ:本当だよね。寝ずにやったら、2倍働ける。そしたら、2倍結果が出るでしょ? って考えを持っていた時期もあったもん。でも、上の人が休まないと、部下たちは休めないわけで。だから、20代のころにはなかった悩みにぶち当たってる。
雨無:職人じゃいられなくなってるよね。
「作り手としてのプライドを忘れちゃいけない」(カンタ)
ーー雨無さんは、YouTube業界をどう見ていますか?
雨無:わたしは、初めて会ったYouTubeクリエイターが、カンタとかアバンティーズとかだったから……。わりとレアケースだったのかな。クリエイター寄りのYouTubeクリエイターだもんね。
カンタ:そうだね。
雨無:今は、YouTube業界も変わってきて、芸人さんとかもチャンネルを開設したりするから、すべてがクロスオーバーしている感じがしますね。だから、垣根がなくなってきてるんだよなぁ。YouTubeというより、動画コンテンツとして見ています。
カンタ:だからこそ、作り手としてのプライドを忘れちゃいけないなと思ってる。いいものを広めていきたいんだよね。いいものの定義って曖昧だけど。
雨無:分かるよ。
カンタ:ショッキングだったり過激なもので数字を取る人もいるわけじゃん。でも、「面白い」という言葉で片付けちゃいけないことってあると思うんだよ。だから、「それってルール違反だよね」「そんなんやったら、誰だってバズるじゃん」という感覚は持ち続けていたい。もともと、すごい大金を手にしたい! とかいうタイプじゃないからこそ、カッコいい仕事をしたいって気持ちが強いのかも。そういう人たちには、負けたくない。
雨無:こっちは、それなしでやってんのに! ってなるよね。その分、考える時間も増えるわけだけど。
カンタ:会社としてはお金を稼がなきゃいけないし、むずかしいところではあるんだけどね。ただ、映画も本もYouTubeもシームレスになってきてるけど、全体的に質がいいものが評価される時代になってほしいという気持ちは変わらない。雨無さんは、世界に行きたいとか考える?
雨無:世界、行きたい! いろいろな勉強をしたいし、素敵なロケーションやバックグラウンドの中で物語を撮りたいし、国ごとの文化の違いとかも知りたいし。世界進出するぞ! というよりは、魅力的な俳優やスタッフ、景色に出会いたいって感覚なのかもしれないけど。
カンタ:僕も、いつか海外行きたいんだよね。ありがたいことに、20代で色々経験させてもらってきたわけだけど、これからもどんどんワクワクしていきたいし。困難にも立ち向かっていかないと!
雨無:海外のYouTubeとかも見るの?
カンタ:見る見る! 逆に、デカキンさんと一緒に歩いていた時に、海外の人に声をかけてもらったこともあるよ。日本で見てもらった先に、海外の人がいるんだなぁと思った。
雨無:やっぱり、海外でバズるのは言語が関係ないもの?
カンタ:そうだね。4億再生とかいったやつは、白線の上を歩いていたら、地面が割れて落ちたらどうなっちゃうんだろうみたいな動画なんだけど。
雨無:うわぁ、なんか懐かしい感じもする動画だね!
カンタ:でしょ? 海外の人からも、「小さい頃やってた!」ってコメントが来て、世界って繋がってんだなと思って嬉しくなった。
ーーでは、最後に。今後、お2人で何かやるとしたら、どんなことをしたいですか?
雨無:カンタはゲーム好きでもあるので、一緒にゲームと映画を作ってみても面白いかもしれません。
カンタ:なんでも作れちゃうんだもんな。だから、雨無さんと話していると勉強になることが多いんだよ。YouTubeで使ってなかった脳みそが刺激される!
雨無:いままでは一緒にMVとか作ってきたけど、今度はまったく別のものが作りたいよね。新しく仲間を迎えてもいいし。
カンタ:俺たちと似たマインドを持ってる人って、まわりにいる?
雨無:うん。アプリ開発業界の人とか。まったく違う業界の人と垣根を超えてタッグを組むのも面白いよね!
カンタ:うわぁ、ワクワクしてきた!

























