コンビニプリントの市場規模、なぜ飛躍的に向上? UUUM×BITが若年層向けに取り組む“新たなコンテンツのかたち”とは

コンビニプリントの市場規模、なぜ向上?

サービスの幅を広げても、売上が増えるとは限らない

ーーUUUMと今回のようにイベントや動画プラットフォーム以外の収益構造を一緒に作っていくことについて、長谷川さんはどう感じていますか?

長谷川:どのような商品でも共通することですが、ストーリーのない商品は購入されにくいと考えています。コレクターのように集めることだけに熱意を持っている方は一部に限られていて、それ以外の多くの方にとっては、その商品を“買いたい”と思わせる理由や動機付けが必要なんですね。

 そのために、イベントやキャンペーン、良い商材など色々な要素をうまく組み合わせて、商品の持つ魅力を最大限に引き出すことが重要だと思っていますし、そうした仕組みづくりが、今後ますます求められていくと感じています。

英山:イベント事業に関して、たとえば周年記念などの節目のタイミングに合わせて何かを仕掛ける際に、eプリントという新たな手段がひとつ増えたのはメリットだと感じていますね。実際にクリエイターの方々も、イベントやタイミングに応じてeプリントの企画をうまく組み合わせて活用しているケースが増えてきています。

長谷川:メニューや選択肢が広がったからといって、必ずしも売上が比例して伸びるわけではありません。これは多くの人が誤解しやすい点ですが、サービスの幅を広げること自体は、クリエイターやアーティストのやりたいことに沿ったケースが多いため、それが必ずしも成果に結びつくとは限らないわけです。

 むしろ、そういった想いをどうやってファンが「欲しい!」と思ってもらえる企画に変えていくかという部分がエンタメとって非常に大切です。そこを支えるマネジメント的な視点から企画を作ることを強く意識していますね。

英山:コンビニで実際にモノを売るって、実はかなりハードルが高いんです。全国のコンビニで販売しようと思うと、約2万5000店舗分の在庫をあらかじめ用意しないといけない。クリエイター側も、売れ残った商品の値引きや在庫処分に対するプレッシャーが伴うんですよね。

 でも、eプリントを活用すれば、そうした在庫リスクや心理的な不安を回避できる。しかも、コンビニという物理的にアクセスしやすい場所で展開できることは、クリエイターにとって大きな価値になります。

 さらに、eプリントと提携しているコンビニのマルチコピー機のパネルで告知してもらったり、店内放送と連動させるなど、情報発信やプロモーションの手段がコンビニを通じて得られるのも、クリエイターにとって大きなメリットだと言えます。

ーー長谷川さんにお聞きしますが、インフルエンサー業界での事例を経て何か気づいたことはありましたか?

長谷川:私自身が今回の取り組みを通じて非常に強く感じたのは、「クリエイターとファンの距離感の近さ」でした。これは弊社内ではもちろんのこと、コンビニ各社やコピー機メーカーにとっても、新たな発見だったのではと思っています。テレビに出ているような有名人のファンとの関係性とはまったく異なる距離感が、インフルエンサーやYouTubeクリエイターといったクリエイターのファン層には存在していて、我々にとっても衝撃を受けた部分でした。

 いま振り返ると、本当にコンテンツの力のあり方そのものが変わってきていることを実感しましたし、売上面の成果以上に、"ファンとの関係性" という根本的な部分に対する理解と認識が大きく変わった経験だったなと感じていますね。

市場規模は200億円超へ成長。eプリントの新たな収益モデル

ーーまさに両社の協業による取り組みは、コンビニプリント市場で新しい事業をやっていくうえでの大きな転換点だったかもしれないですね。

長谷川:コンビニやマルチコピー機メーカーを含めたマーケット全体の規模感について、あくまで感覚的な話にはなりますが、eプリントの取り組みが本格化する前は数十億円規模だったのに対して、現状では200億円を超えており、実際にはもっと大きな数字になっていると理解しています。

 また、従来の物販のように在庫を抱える必要がないため、コンビニ側にとっても非常に魅力的なビジネスであることは間違いありません。実際にコンビニ側でも、この分野に関わる担当者が増えている印象を持っていて、それだけこの事業が社内でも注目されているのではないでしょうか。

 このように数年でマーケットが大きく成長した要因として、我々が手がけた取り組みがひとつの大きな契機になったと言えるでしょう。

英山:究極的には、コンビニに設置されているマルチコピー機で印刷できる仕組みを活かしたさまざまな展開が可能だと考えています。私たちがコンビニプリントを通じて展開しているコンテンツの主な購買層は、小中学生といった若年層が中心ですが、コンビニという全国各地にあるロケーションを活用すれば、訪日外国人観光客を対象にしたインバウンド施策にも応用できるでしょう。

 また、「自分のブロマイドを作って販売する」という企画自体も、YouTubeなどの動画コンテンツの“ネタ”になりやすいという点にあらためて気づきました。実際にある人気YouTubeクリエイターの方が「自分はこれからブロマイド系YouTubeクリエイターになる」という企画を打ち出し、コンビニでブロマイド制作する様子を動画に収めてSNSで発信したところ、当初の予想を大きく上回る1000万円単位での収益につながったという事例もありました。

 こうした動画コンテンツと連動させた販促や企画開発にも、大きなポテンシャルを感じていますね。

ーーファングッズとしても購入するし、一緒に遊ぶ感覚でコンビニプリントを楽しむファンの方もいらっしゃるというのはたしかに面白いですね。

長谷川:もともと、私たちはエンタメとはまったく関係のない業界にいた人間だからこそ、現在も模索している段階です。最初のエンタメ関連商品は、先述した声優さんとの取り組みだったと記憶しています。

 競馬関連で取引があったフジサンケイグループさんから、「文化放送の番組内でファンとの交流から生まれたコンテンツを写真として販売したい」とお声がけいただいたのが始まりでした。写真集にするほどの経費はかけられないという制約のなかで、最終的にコンビニプリントで提供するというかたちで企画に落とし込んだところ、なんと5000万円もの売上を達成したんですね。

 そこから本格的にエンタメ領域にチャレンジする価値を見出し、さまざまな可能性を探っていくことになりました。とはいえ、当初はいまのようにヒット商品を次々と出せるわけでもなく、関係者のつながりをたどりながら、BLACKPINKとのコラボや突発的な企画など、あらゆる手を試しました。改善と工夫を重ねていくうちに、ようやく少しずつ成果が見えてきて、「これは売れるかもしれない」と初めて手応えを感じたのがYouTubeクリエイターのナナオさんとの取り組みでした。

 とくに印象的だったのは、ナナオさん(ナナオは立派なユーチューバー)がYouTubeで「いまから写真を撮るよ。それをコンビニで買えるようにするからね」とリアルタイムで発信してくれたことです。私たち自身は、そのような展開はまったく想定していませんでしたし、それが実際に大きな反響につながるとはまったく思っていませんでした。この経験から、インフルエンサーとファンのダイレクトなやり取りのなかで商品が生まれ、反応が返ってくる面白さこそが、この領域の魅力なんだと実感しましたね。

英山:一般的に知名度のあるIPやキャラクターだからといって、必ずしも売れるというわけではなく、動画の企画やSNSでの発信などをうまく絡めることで、「コンビニでプリントを買う」という行為が、ある種の「ムーブメント」に変わる感覚があるんですよね。そのような“ノリ”にファンが自発的に乗っていけるような独特の空気感が、インフルエンサーを起点としたプロジェクトにはあると思っています。

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