超能力者たちが織り成す推理アドベンチャーを堪能しよう 『Staffer Case:超能力推理アドベンチャー』プレイレポート

『Staffer Case:超能力推理アドベンチャー』レビュー

 『Staffer Case:超能力推理アドベンチャー』をプレイした。本作はTeam Tetrapodが開発した推理アドベンチャーゲームだ。手がかりや証言をもとに犯人を追い詰めていくオーソドックスな推理ゲームだが、出てくる容疑者が超能力者ばかりという点がユニークである。

 現実ではありえないような状況下のミステリーを解き、事件の裏に隠された真相を見つける遊びは、非常に独特だ。一般的なミステリーの面白さと、異能力バトルの醍醐味があわさった体験だった。

超能力×ミステリーの新鮮な面白さ ヒリヒリする推理合戦

 本作は196X年のロンドンが舞台だ。主人公のノートリック・ケース(通称ノート)は、管理局マナ事件専任チームに引き抜かれた青年。なぜか頭にペンを巻いていて、何事にも物怖じしない性格である。

 彼が配属されたチームは「ステッパー」と呼ばれる超能力(スキル)を扱える人間が起こした事件を捜査する。ノートは何の能力も持たないながら、持ち前の知恵を駆使して、現実では有り得ないような事件を解決していくのだ。

 容疑者がステッパーなら、捜査官もまたステッパーだ。たとえば、チームのメンバーであるテナは、尋問した相手の心拍を細かく聴き取り、相手が興奮しているかどうかを判定できる。これによって相手が嘘を吐いているかどうか判定できるのだが、人間は殺人や死に関する話題が出ただけでも興奮してしまうため、その点は注意が必要だ。

 ノートは手始めにテナの取った事情聴取書を見て、尋問した相手がいつ嘘を吐いたかを判断するよう求められる。事情聴取書は一行ずつまとめられており、心拍に異常が出たかどうか、殺人や死に関する話題が出ていないかどうかをチェックして、嘘を吐いている箇所を見つけるのだ。

 ほかにも、ブリアンは部屋のなかの痕跡をくっきりと浮かび上がらせたりすることができるし、チーム長のパンドリア(パニ)は物の記憶を読み取ることができる。彼らのスキルを駆使して捜査を進めていくのだが、肝心の真相は巧妙に隠されており、それらの手がかりを使ってノート=プレイヤーが真相に辿り着かなければならないのだ。

 本作はオーソドックスな推理アドベンチャーであるため、ほとんどは会話を聞いて、手がかりを繋ぎ合わせることでゲームが進行する。特に操作で躓くことはないだろう。捜査資料や音声ログなどを眺め、違和感のあるポイントを1つか2つ指摘していくだけのポイント&クリックの遊びがほとんどを占める。

 唯一気になるのは、事件の最後に六角推理というものがあり、重要な手がかりを6つ指摘するパートがあるのだが、こちらはカタルシスこそあるものの、ヒントが表示されないので、一段階難しくなっている。また、ローラー作戦(間違っている箇所をひとつずつズラしていくこと)が効いてしまうため、あまり美しい問題になっていないのだ。

 とはいえ、それ以外の箇所はちょうどよい難易度の謎解きが多く、事件全体をしっかり把握する手助けにもなっている。推理アドベンチャーの初心者から上級者まで幅広く楽しめることだろう。

 また、本作の最大のフィーチャーである「超能力」だが、これがなかなか素晴らしい。

 上記で説明した以上に、容疑者たちの能力も面白いものばかりだ。放射型に炎を撒き散らすいかにも危ないスキルもあれば、哺乳類に憑依して操るちょっと地味なスキルもある。彼らはそのスキルで普段から生活や仕事をしており、また心拍に異常が出ないように巧妙にごまかしてくるため、誰がどのタイミングでスキルを使って殺人を行ったのかを特定しなければならないのだ。

 作中世界ではスキルを偽って申告することは重罪なため、ほとんどの場合は資料に書いてある通りなのだが、ちょっとした誤解や言い換えが発生し、プレイヤーの思考の穴を突いてくる。

 容疑者にいいように謀られる感覚と、それらを見抜いて真相を手繰り寄せる気持ち良さが交互に訪れる、とてもよく練り上げられた構成だ。これだけ自由なプロットでも「それはいくらなんでも無理筋では?」と思うような話や、後出しはあまり見られず、ちゃんと筋の通ったミステリードラマになっているのも素晴らしい。

 『Staffer Case』は全5話構成で、DLCとして1950年代のアメリカを舞台にした『Staffer Reborn』が発売している。この度、Nintendo Switch版が発売され、キャラクターボイスが追加された。ぜひこの機会に遊んでみてほしい。

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