金子一馬から学習した“AIカネコ”……唯一無二のカードでタワマンを駆け上がれ デッキ構築ローグライク『神魔狩りのツクヨミ』プレイレポート

『神魔狩りのツクヨミ』レビュー

 『神魔狩りのツクヨミ』をプレイした。

 本作はゲームクリエイター・イラストレーターの金子一馬が手掛ける基本プレイ無料の「カード創造ローグライク」ゲームだ。一般的なデッキ構築ローグライクにオリジナリティを一味足したデザインと、金子一馬による美麗なグラフィック、そしてそれらを補完する画像生成AIの使い方がとてもユニークなゲームだった。

 なお、執筆にあたってiOS版をプレイしている。

 ストーリーはこうだ。東京の湾岸エリアにそびえ立つ最新鋭の超高層複合施設「THE HASHIRA」。このタワーマンションが閉鎖空間と化し、異形の存在「神魔(じんま)」が徘徊し始めた。プレイヤーは国家を守る組織「ツクヨミ」として、最上階にいるターゲットを討伐するために戦いを繰り広げるのであった。

 本作は『Slay the Spire』に代表されるようなデッキ構築ローグライクだ。神魔を封じ込めたカード「神魔札」で構成されたデッキからカードを引き、オド(マナに相当する)がある限り使用して、なるべく効率的に敵を倒していく。

 戦闘終了後には新しい神魔札を手にすることができるので、それによってデッキを強化したり、ランダムイベントを踏んでデッキ全体に予期せぬ効果をもたらしたりしつつ、さらなる強敵を倒していくことが求められる。

 すでに類次作が大量に出ているジャンルではあるが、本作はいくつかの点においてユニークさを保っている。まず面白いのが戦闘中の攻撃と防御のバランスだ。

 ほぼすべての神魔札には攻撃力と防御力が設定されている。左下の赤い枠が攻撃力、右下の緑色の枠が防御力だ。本作はデッキ構築ローグライクには珍しく、攻撃用・防御用のカードが分かれていない(どちらかに向いているカードは多く存在する)。なので、敵の攻撃を受ける際に、あえて使わずに残しておくということが肝要である。

 この作りを採用していることで、特定のビルドに偏重したデッキを作るだけのゲームにならずに、毎ターンちゃんと考えて最適な行動を取らなければならなくなっている。一気に削ってひとり落とすのか、あえてオドを使わずに防御に回るか、すべてはその場の判断次第だ。

 また、この作りを地味に支えているのが、デッキの循環における仕組みだ。本作は手札補充がその都度行われるが、捨て札がデッキに戻るのは「ターンの開始時にデッキアウトしている場合のみ」である。これにより、たった1枚でもカードが余っていると次のターンはほんの少しのカードで戦わなければならなくなり、大ダメージを受けてしまうことになる。

 デッキを全部使い切って気持ちよく次のターンを迎えるためにぶん回したいものの、オドが足りなかったり、どうでもいいカードが手札を埋めてしまったりして蒼ざめることになるのだ。これもまた先述した「攻撃するか、防御に残すか」といった駆け引きと良い感じにマッチしており、毎ターンひやひやしながら遊ぶことになる。

 ローグライクらしく、全滅すると進行度に応じて恒久的なアップデート(ツクヨミ神授)が入るものの、どんなに強くなってもそれなりに泡を喰うことになるバランスなのが心地良い。運営型タイトルゆえに、ツクヨミ神授は課金によって一気に進めることも可能だが、筆者が遊んでいる限りでは無課金でも特に問題なく楽しむことができた。むしろ歯応えを求めるユーザーなら、ツクヨミ神授はあまり気にしなくてもいいかもしれない。

 ゲームデザインについては、小さなアイデアや細かい調整が良い塩梅で効いており、同ジャンルの秀作という感覚を覚えたが、それ以上にキャッチーな特長が存在する。それが「AIカネコ」だ。

 本作はダンジョンの攻略中に偽神「オオカミ」というキャラクターが出現し、カードを創造してくれる。オオカミはプレイヤーがダンジョン内でどんな選択をしたかを参照し、オリジナルカードを生み出すのだが、その際に画像生成AIを使用している。

 金子一馬のクリエイティブを学習したAIによって生成された画像は、どことなく不気味で、なおかつ冒涜的で、このゲームのフレーバーに沿っている感じがした。「誰も知らない神」を仲間にして戦わせるという遊びは、なんとも妙な心地がするものだった。

 また、ホーム画面右下の創成回廊をタップすると、AIが提示した二枚の画像からどちらかを選択し、お気に入りの画像を作ってもらう遊びも楽しめる。ついでに触ってみてもいいかもしれない。

 ゲーム全体を貫くフレーバーも、アトラス時代からの金子一馬が得意とする伝奇SFの香りがして、とても安定感がある。敵はソロモン72柱の悪魔たちの名を冠し、味方には四十代目蘆屋道満を名乗る女性がいるなど、外連味たっぷりだ。かと思いきや、ランダムイベントでは推しのホストに貢ぎたくて結界から出ようとするゴスロリ少女が出てくるなど、妙に現代的である。まさしく彼らしい作風と言える。

 現時点では四つのシナリオが用意されており、どれもさして課金をしなくてもやりこむことができるので、むしろ課金誘導の甘さを心配したくなるほどだ。デッキ構築ローグライクのファンから、金子一馬の描く伝奇SFのファンまで、さまざまな層にリーチできる良作だろう。

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