「MVは大喜利だよね」映像作家・関和亮と水溜りボンド・カンタが捉える“映像表現の面白さ”

水溜りボンド・カンタ×関和亮対談

共通点は繰り返し見たくなる面白さ ネット文化との親和性も

ーーさまざまな映像作品があるなかで、カンタさんは関さんの映像のどんなところに惹かれますか?

カンタ:普段からいろんな動画を見てますし、僕自身も企画を4000本以上作ってますけど、YouTubeに関さんが作ったMVがアップされると、こんなに面白いことを考える人がいるんだ、と力でねじ伏せられる感覚があるんです。

関:僕が1番最初に見たカンタ君の動画はチャーハンのやつだけど、トリックアートというか、映像の時間軸があるなかで物体が止まるのが面白いところじゃない? カンタ君はちょっとトリッキーなことが好きで、僕の作品のトリック的な部分を面白がってくれてるのかもね。

本気でチャーハン作るドッキリwwwwww

ーー関さんのMVもカンタさんの動画もトリッキーで、何度も見たくなる作りですよね。動画を繰り返し見るネット文化にもマッチしていて、お2人をつなぐ部分なのかなと思いました。

カンタ:関さんの作品を見て、僕が寄せてるんです。たとえば喋ってるのに合わせてテロップが上から下にどんどん積み重なっていく動画とか、ダンボールで全部手書きにして、テロップを出したり効果音をその場で周りで鳴らしたりして、無編集で上げた動画なんかも、自分のアイデアだと思ってたんですけど、サカナクションの「アルクアラウンド」から影響を受けている気がします。勝手にYouTubeに引っ張ってきてるんですけど、どの引き出しから出てきたアイデアなのかがわからないことが多くて。

サカナクション - アルクアラウンド(MUSIC VIDEO) -BEST ALBUM「魚図鑑」(3/28release)]

関:僕の場合は、1つの企画に対してアイデアをバーっと書き出して、既視感のあるものをどんどん削っていくパターンが多いかな。よくアーティストが「急にメロディーが浮かんだ」とか言いますけど、あんなのズルいですよね(笑)。たくさん考えて、会議しないと無理です。

カンタ:YouTubeに毎日上げる動画は、粗くても成り立つというか、それもまた愛嬌になるんですけど、MVや映像だと、クオリティを担保しながら本番でアーティストさんがいても成立してないといけないし、編集して完成させるという、はるかに長い道のりですよね。

関:YouTubeだったら自分で撮って自分で面白くして、自分が納得できればいいもんね。

カンタ:ダメだったら自分の責任だし、撮り直すこともできる。そこがもう絶対的に違います。僕が「アルクアラウンド」のアイデアを思いついても、実現は難しいって思っちゃいます。予算だけじゃなく、推進力も必要じゃないですか。関さんはゴールが明確に見えていてそこに向かって走ってるのか、悩みながらも“絶対に完成させてやる”っていう執念で作っているのか、どっちですか?

関:2つあって、ひとつは作品を絶対にいいものにするという推進力で進みます。僕の場合だと、最初に企画を作るときに200点が取れるくらいの内容を詰め込みます。もしすべてが理想通りに実現したら、200点の作品になるように。ただどうしても時間や予算には制約があるから、最終的には100〜120点、最低でも80点のラインを超えるくらいの気持ちかな。最初から100点を目指していると、50点ぐらいに収まっちゃうんだよね。もうひとつは、MVはどこまでいっても「音楽のビデオ」だから、“音楽を成立させるための映像を付ける”っていう最終防衛ラインにどう向かっていくかだね。

 極論、そんなにアイデアを詰め込まなくても、ただボーカルのカットを取ってるだけでも成立はするんですよ。YouTubeは0から作らないといけないけど、MVは音楽があるだけで50点からのスタートだからね。最初からお題が存在するのと、お題から全部作るのでは、大きく違う気がする。

カンタ:そうですよね。現場でアイデアの実現が難しそうだとわかったら、どうするんですか?

関:別のアイデアを探すかな。たとえば飛びこむシーンを撮るにしても、現場に行ってみて厳しいとわかったら、なにかしら違う表現ができないか考えます。物を落としてみるとかね。瞬発力が求められるところです。

カンタ:簡単そうに聞こえるけど、絶対できないな。引き出しの数もとんでもなく多いだろうし。

関:でもひとりじゃないからね。どんな現場でも何十人というスタッフと、カメラマン、プロデューサー、アシスタント、当然ミュージシャンもいて、みんなからアイデアをもらいます。現場でのディスカッションもするから、孤独感はないな。もちろん譲れないところもあるけど、核が崩れない限りは面白い方がいいと思うから、その場でいろんな撮り方を試したりして、臨機応変に対応していきます。

カンタ:ワンカットの作品も多いですよね。何回も撮り直してるんですか?

関:たくさん撮ります。結局何回もやるしかないんだよね。体育館のような場所で1回テストしてみたりするけど、現場とは違うし、やる人も違う。撮影地に行ってリハーサルの時間をたくさんいただいて、ゴールをすり合わせたうえで、泥臭く汗をかきながら撮影してます。

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