DECO*27×いよわが語り合う、ボカロPとしての“矜持”と“希望” 現在のシーンに欠かせない存在とは
登竜門としても影響力を増す『ボカコレ』 いよわが打ち明ける、楽しさと苦しさ
ーーところで、今回のインタビューは『The VOCALOID Collection』にも関連するものです。過去に出演していただいた際に『The VOCALOID Collection』への思いを聞いていますが、そこから少し時間が経って、そのときと見え方は変わっていますか?
DECO*27:それなら、この機会にいよわさんにお聞きしたいんですが……『ボカコレ』って楽しいですか? 今まで参加したことがなくて!
いよわ:高い順位が取れたらうれしいのはもちろんですが、順位よりも周りのクリエイターがSNSで自分の曲に言及してくれたり、友達から「めっちゃ良かったよ!」と言ってもらえる喜びが大きいですね。
一方で、『ボカコレ』の規模感が大きくなればなるほど、思うような結果が残せずに苦しむ人たちを見たりもするんです。自分が高い順位に行けたということは、その人たちの入るはずだった場所を奪っていることと同じなので、そこに気まずさを感じることもあります。「そんなこと気にしなくても」と言われるんですが、お祭り的な盛り上がりの裏には、そうした競技としての苦い部分もあるのが『ボカコレ』なんです。
ーーたしかに第一回はお祭り感が強かったですが、好成績を残してブレイクするボカロPが出てきたこともあってか、回を追うごとに「TOP100」ランキングの競技性は高まってきているように感じます。
いよわ:『ボカコレ』はシーンの盛り上げとしてものすごく大事な役割を果たしてるんですけど、クリエイターすべてのモチベーションを上げるものかどうかといわれれば、そうじゃないものにはなっていると思います。とはいえ、すべての人を救うことはできないし、ルーキーとTOP100以外の線引きをしたり、部門をより細かく設けたりするのも正解かどうかわからないし……。そういう意味では、運営のみなさんは本当に大変なんだろうなと思います。
DECO*27:もし僕がサプライズで参加したらどうなるんだろう(笑)?
いよわ:自分はめちゃくちゃテンションが上がりますね。
ーーまらしぃさん&堀江晶太さん&じんさんが三人で参加したように、誰かと組んでみるのもありかもしれません。
いよわ:もう、レジェンドのみなさんが一気に参加しちゃえば良いと思います! 多ければ多いほど、きっとハチャメチャなお祭りになるので。
DECO*27:それは面白そう(笑)。『ボカコレ』のために作品を用意された方は、あとからYouTubeとかにも上げると思うんですけど、実際勢いが長続きしやすいのはどちらなんでしょう?
いよわ:個人的には、ニコニコで評価されたほうが長続きする印象です。単純なユーザー数というより、シーンに愛着のあるユーザーの割合が高いことが特徴だと思っているので。それに『ボカコレ』などイベント開催時にはユーザー数そのものも多くなるので、そこがのちの固定ファンを獲得するタイミングになるボカロPさんも多いように感じます。
DECO*27:なるほど。別のインタビューでも話したことがあるんですが、一回バズった人が次の曲はそこまで振るわない、というのを見て、勝手にもどかしくなったことがあるんです。だから今の質問をしてみたんですけど……。いよわさんが話してくれたみたいに、濃いファン・長続きするファンの方と出会える環境もクリエイターにとっては幸せな気がするんです。売れる場所・たくさんの人から評価される場所も大事だけれど、「長続きするための場所」というのは素敵ですよね。
ーーDECO*27さんはさまざまなプラットフォームをフラットに使いこなしているように見えていたのですが、そういう考え方だったんですね。
DECO*27:入口は多ければ多いほどいいですし、ひとつのプラットフォームに頼りすぎないことで、色んな場所で色んな人に興味を持ってもらえる。それはシーンが続いていくためにとても大事なことだと思うんですよね。
ただ、シーンが生き物だとしたら、クリエイターはそこを流れる血液のようなものじゃないですか。その血液を巡らせるようにするには“局所的なバズ”に頼らないことが大事なんです。「こういう曲をもっと聴きたい」「ボーカロイドって面白いらしい」みたいな感覚がどんどん広がっていくことが重要で、その点でメディアミックスやお祭りのようなイベントは有効な手段だと思います。そういう意味で、『プロセカ』や『ボカコレ』の存在は大きいんでしょうね。
いよわ:導火線に火がついてないだけの、爆弾のような才能を持ったクリエイターはまだゴロゴロ転がっていますから、『プロセカ』や『ボカコレ』のようなものがもっと出てきて、どんどん“爆発”していってほしいですね。