DECO*27×いよわが語り合う、ボカロPとしての“矜持”と“希望” 現在のシーンに欠かせない存在とは
コラボに楽曲提供、多数のオリジナルまで……なぜDECO*27は“走り続けられる”のか?
ーー最後に、せっかくの対談なので、お互いに聞いてみたいことなどはありますか?
いよわ:DECO*27さんは長く活躍されていますが、モチベーションを保つ秘訣はありますか? 自分はモチベーションによって制作の速度がかなり変わってしまうタイプで、作れないときは全然作れないんです。逆に、過集中状態で一気に作品を作り切れてしまうこともあるがゆえに、それを待ってしまうことも多くて……。
DECO*27:僕は逆に、モチベーションを意識的に上げることがあまりないですね。年齢を重ねるにつれて「モチベの浮き沈みをやめよう」と思うようになってきました。4~5年くらい前からかな、「環境や状況に左右されるのはもうやめよう」と思って、曲が書きたい・書きたくないに関わらずに机に座って書く、というルールを自分の中に設けました。そう決めて活動を続けていくうちに、モチベの上下に関係なく曲が書けるようになってきました。
いよわ:それは本当にすごいですね……僕も頑張って自分の弱点をなくせるようにします。
ーー逆に、DECO*27さんからいよわさんに聞きたいことはありますか?
DECO*27:曲を作る際、どのタイミングで自分が描くイラストのイメージが出来上がってますか?
いよわ:曲によるんですけど、最初に考えた全体のコンセプトとか、キーやリズムなどの聴こえてくる音とかから頭にイメージを思い浮かべるんです。それを基に、マッチしたイラストを描き下ろしています。詳細を決定するのは楽曲完成後の作業になりますが、おおまかな構想は楽曲の制作中から持つようにしています。
DECO*27:いまでは忙しくなって状況も変わっていると思うんですけど、その辺りの作業を誰かに任せたりはしないんですか?
いよわ:作業をお願いするの、苦手なんですよね……制作に他者とのコミュニケーションを介在させることがめちゃくちゃ不得意で。ここまで一人でやってこれてしまったからなのかもしれませんが……。
ーーキャリアの先輩として、DECO*27さんからアドバイスをするとしたら?
DECO*27:僕から言えるのは「人に頼りまくった方がいい」ということですね。というのも、20代後半ぐらいの頃に「このままやり続けることを考えると、自分が世に出せる楽曲の数はこのくらいなんだ」と計算してみたとき、60歳までにつくれる曲数と自分が作りたい曲数にかなり乖離があって。あまりにも時間が足りないな、と思うようになってきたんです。
なので、制作の工程を「作曲」「編曲」「調声」……といった風に並べていって、そのなかから、自分にとって「絶対にこれは手放せない、自分でやるんだ」というものをいくつか選んで、それ以外を人にお願いするようになりました。
ーーそこまで先を見据えて計算し、活動の仕方を変えたんですね。すごい……。
DECO*27:アルバム単位で作りたいコンセプト・世界観を考えたときに、それを表現するために必要な曲数と時間が足りなかったんですよね。アルバムといえば、最新アルバム『TRANSFORM』にはいよわさんにも協力いただいて。
いよわ:法人特典のRemixとして「ハオ」をRemixさせていただきました。DECO*27さんの世界観の一部になれて光栄です……!
ーー『TRANSFORM』は個人的にもDECO*27さんの進化と変化を感じる1枚で、すごく良かったです。話を戻しますが、DECO*27さんが活動ペースを落とさずそこまでストイックに制作を続けられている理由として、表現したい作品・世界観があること以外になにかモチベーションになるものがあるのでしょうか。
DECO*27:「待っている人を待たせたくない」ことですかね。自分が学生時代に好きだったアーティストやバンドが、どんどん活動を休止・解散していく時期があったときに「自分が好きになる人たちってみんな辞めていくんじゃないか」と辛い思いをした時期があるんです。だから、自分がいま応援してもらえる身になったときに、同じことを経験してほしくなくて。そういった不安を一切感じさせないように、2~3ヶ月に1回は絶対に新曲をアップしようと決めているんです。
いよわ:いやー、頼もしすぎる。一番トップのところで活躍しているボカロPがそれをやり続けられるというのは本当にすごいです。僕自身も、自戒を込めて「投稿しているやつが一番偉い」と思っていて。SNSでたまに巻き起こる議論を見ていても「そんなことしてる暇あったら曲作れ!」と言いたくなる瞬間があります。
そういったものをついつい見てしまう自分に対しても「スマホ見てないで曲作れ!」と叱って、スマホをぶん投げて机に向かうようにしています。
先ほどDECO*27さんにモチベーションの話を聞いたのもまさにそこにつながるのですが、6年ほどキャリアを積んできて、初期衝動だけではカバーできない部分がでてきたので、より自分の出力を安定化させるためにいろいろな策を講じ続けているんです。
SNSを使うなら、どこの誰だかわからない人に反論するよりも、新曲のお知らせがしたいし、作品で黙らせることができたら一番かっこいいじゃないですか。
DECO*27:コメントやリプライをしているということは、良くも悪くも興味を持っているということですからね。それなら「作品でひっくり返す」というのは、たしかにできるかもしれない。それにしてもいよわさんってこんなに熱い人なんですね……! 意外な一面を見ることができて、今日はすごく良い日でした。
■映画情報
「劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク」
公開日時:2025年1月17日(金)
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©「劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク」製作委員会
〈STAFF〉
原作=セガ / Colorful Palette / クリプトン・フューチャー・メディア
監督=畑 博之
脚本=米内山陽子
キャラクターデザイン/総作画監督=秋山 有希
サブキャラクターデザイン/総作画監督=辻 雅俊
音響監督=明田川 仁
音楽=宝野聡史
アニメーション制作=P.A.WORKS
配給=松竹
製作幹事=サイバーエージェント
■イベント概要
『The VOCALOID Collection ~2025 Winter~』
開催日時:2025年2月21日(金)~24日(月・祝)
開催場所:ニコニコTOPページなどのネットプラットフォームほか
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■ニコニコニュースORIGINALでは いよわの単独インタビューも掲載中!
「悔しがるのは嫌いじゃない」競争を避けていた高校生がボカコレと出会い、映画プロセカ挿入歌の編曲を手掛けるまで【ボカロP いよわインタビュー】