DECO*27×いよわが語り合う、ボカロPとしての“矜持”と“希望” 現在のシーンに欠かせない存在とは

DECO*27×いよわが語り合う、矜持と希望

さまざまな“新しい出会い”をもたらす『プロセカ』

ーー今回お二人は『劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク』のユニット曲としてMORE MORE JUMP!に新曲を書き下ろしました。お二人はそれぞれが『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク(以下、プロセカ)』に楽曲を書き下ろしたことのあるボカロPですが、『プロセカ』に抱く印象を教えてください。

DECO*27:若いファン層がすごい熱いコンテンツですよね。登場人物たちも学生で、プレイヤーと年が近かったりするから、ストーリーの内容に共鳴して、より世界観に没入しているような気がします。そこにバーチャル・シンガーのキャラクター性とボカロPの作る音楽が噛み合っているというか。各ユニットの書き下ろし曲を聴く時点で色んなストーリーがプレイヤーの中に入っているので感情移入しやすいですし、より特別な曲として受け取られているからこそ、魅力的に映っているのかなと。これはメディアミックスならではの強みですよね。

ーー『プロセカ』と音楽という切り口だと、長く活動しているボカロPにとっては、過去の楽曲に出会ってもらえるきっかけになっている側面もあると思うのですが。

DECO*27:そうですね。昔の曲って、どうしても僕個人を掘ってもらえないとたどり着かないのですが、「ヴァンパイア」や「ラビットホール」から知ってくれていた10~20代の方が、『プロセカ』経由で「モザイクロール」を聴いて「これ同じ人が作ってるの?」と思ってくれたりするんです。

 昔から追いかけてくれているファンの方々は、僕が「ヴァンパイア」をリリースしたときに「これまでのDECO*27と違う!」と感じたと思うんですが、その逆の現象が起こっているというのは面白いですよね。

ーー今回は作詞・作曲をDECO*27さん、編曲をいよわさんが手掛けていますが、基本的には作詞・作曲→編曲という順で進んでいったのでしょうか。

いよわ:そうですね。打ち合わせの際にDECO*27さんから「好きにしてもらって大丈夫」と言っていただけたので、コードのリハーモナイズもガッツリやったりと、遠慮せずに自分のスタイルを出していくことにしました。

ーーDECO*27さんとしては、いよわさんに好き勝手暴れてもらうために、作詞作曲の際に編曲の“余白”を意識して多めに残していたりしたのでしょうか。

DECO*27:ミク曲の場合はしっかりフレーズを作り込んで渡すことが多いので、たしかに今回はいつもより薄味にしている部分はあるかもしれません。

いよわ:リズム周りはしっかり作り込まれていましたし、ここは変えないでくださいという指定もしていただいたうえで、ほかは結構お任せいただきました。

ーー事前に聴かせてもらいましたが、個人的には「こんなに重心の低い いよわさんの曲を初めて聴いた!」という印象を持ちました。いよわさんの楽曲は中高域に音が固まっているイメージなのですが、DECO*27さんのしっかりとしたリズムの上にいよわさんのアレンジが乗るとこうなるのか、と。

いよわ:自分の曲は結構低音の成分が足りなかったりするのですが、そこが最初から解決されている状態で渡していただいたので、あとはその上に好き放題肉付けしていくだけでした(笑)。

DECO*27:僕がいよわさんを肩車して、上でいよわさんが花火を好き放題振り回している感じです(笑)。

 

ーー良い例えですね(笑)。

DECO*27:あらためて、いよわさんにお願いしてよかったです。こうして新しい形の曲を生み出せたのは本当にうれしい。

ーーいよわさんにとって、今回の共同作業はDECO*27さんの制作データを見れる良い機会でもあったのかなと思ったのですが……。

いよわ:そうですね。発見はたくさんありましたし、そこに自分が手を加えたりするわけなので……絶対に手に入るわけがない超高級食材を目の前に並べてもらって「好きに味付けして料理していいよ」と言われているような感覚でしたね。作業中も作り手としての自分と、リスナーとして聴いている自分の二人が同時に存在していて「いま、すごく貴重なことをやっている……」と不思議な気分になりました。

ーー実際にDECO*27さんはアレンジされた楽曲を受け取ってみて、どのような感想を抱いたのでしょうか。

DECO*27:いよわさんのリハモがとにかく面白くて。DECO*27の曲では聴けないコード進行が山ほどあるんですよ。

いよわ:そのあたりの化学反応を起こしたくて、かなり弄らせてもらいました。途中から「怒られるかも……」と思ってデモに忠実なバージョンとアレンジマシマシの2パターンを提出したんですが、結果的にマシマシのほうを選んでいただいて(笑)。

ーーより個性の強い方を選ばれたんですね(笑)。歌詞はDECO*27さんが書き下ろしていますが、通常の『プロセカ』への書き下ろしと意図的に差別化した部分はあったのでしょうか。

DECO*27:そこまで意識はしていませんが、しいて言えばユニットごとの書き分けには苦心しました。歌詞で各ユニットが伝えるメッセージ性は同じなので、それを各ユニットのカラーに沿って自然な言葉で伝えることが大事だったんです。ちなみに、一番書きやすかったのはモモジャン(MORE MORE JUMP!)で、一番書きづらかったのはニーゴ(25時、ナイトコードで。)でした(笑)。

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