『Nintendo Switch Online』新サービスがリークの被害に 情報漏洩が跋扈する社会にどう向き合うべきか

任天堂の新サービスがリーク被害 情報漏洩問題にどう向き合うか

 10月24日にスタートした『Nintendo Switch Online』における新サービスのプレイテストが、異なる角度から話題を集めている。

 当たり前のように繰り返されるリークを根絶するために、業界とユーザー、社会に求められることとは。直近に界隈を賑わせた話題を振り返りつつ、インターネットを介した犯罪があふれかえる社会の末路を考える。

『Nintendo Switch Online』新サービスの内容が次々とリーク

 今回開始となったテストは、10月10日に任天堂より告知されていたもの。『Nintendo Switch Online + 追加パック』に加入済みの18歳以上のユーザーを対象に、10月11日から10月15日の期間にかけ、参加希望者が募られていた。実施期間は、2024年10月24日10:00から同11月6日9:59まで。募集人数は1万人程度を想定しており、応募者が多数だった場合には、国内では抽選、海外では先着順となることが公式よりアナウンスされていた。

 このような準備段階を経てようやく開始した今回のテスト。話題を集めているのは、その内容ではない。リークが続出している件についてだ。限定的に実施されるということもあり、おそらく参加が決まったユーザーとのあいだには、秘密保持契約が締結されているものと思われる。がしかし、SNS上ではさっそく、その内容に言及するアカウントの存在が確認されている。また、一部には配信プラットフォームを通じ、ストリーミングを行ったユーザーもいるという。当該コンテンツは、著作権保有者の要請によってあっという間に削除され、現在はチャンネルそのものがBANとなってしまったようだ。

 本来、こうしたプレイテストは、サービスのクオリティを向上させる目的のもと、メーカー/プラットフォーマーとユーザーの双方にメリットがある形で実施されるものである。特にクローズドの場合、「(SNS、配信などを通じ)内容を口外しない」という条件が付加されるケースも珍しくない。しかしながら、昨今では、このような性善説に基づいた両者の約束も、当たり前のように反故にされてしまう実態がある。一部のユーザーがローンチ時の不具合について糾弾している一方で、別のユーザーがテストから得た情報をリークするという、見方によっては、自分で自分の首を絞めているとも言える状況がゲーム業界に生まれつつある。

2024年10月には『モンスターストライク』をめぐるリーク騒動が話題に

 私は先月の初めに執筆した記事のなかで、モバイル向けアクションRPG『モンスターストライク』のリーク騒動を取り上げた。同タイトルをめぐっては、とあるYouTuberが投稿した関連動画のコメント欄に、その後の数か月のイベント内容を的確に言い当てるアカウントが出現。一連の行為に対し、発売元であるMIXIが厳正な対応を行うと発表したことが、界隈で話題となった。

 ゲーム業界では昨今、こうしたリークが残念ながら常態化してしまっている。話題に上るか否かはさておき、あらゆるタイトルで類似する情報漏洩が繰り返されてしまっている現状だ。業界全体に小さくない悪影響を与えているのが、一連のリークの問題である。

 ここには、インターネットが承認欲求を満たすためのツールとなっていることによる影響もあるのだろう。一部のYouTuberによる迷惑動画や、“映え”だけを追い求めるInstagram投稿などはその一例だ。これらは、アテンションエコノミー(人々の興味・関心を誘う発信が情報の質よりも重視される経済概念を指す言葉)の負の側面とも考えられている。ゲーム業界に蔓延る一連のリークもまた、同質の思想からあらわれた悪事であると言える。

“リーク問題”への毅然とした対応は、業界の悪しきトレンドを変えられるのか 『モンスト』騒動から考える

MIXIが配信するモバイル向けゲームアプリ『モンスターストライク』がリーク騒動に巻き込まれている。昨今、業界で悪しきトレンドとな…

リークが当たり前に繰り返される社会の行き着く先は

 このような悪しきトレンドを衰退させるために、業界ができることは何なのか。上述の記事のなかで私は、「関係者の規範意識と、リークに過剰反応しないユーザーの心持ちが大切である」とした。とはいえ、これらが担保されていたとしても、情報漏洩を完全になくすことは難しい。規模の大きいコンテンツであればあるほど、不特定多数の関係者が情報に触れることになり、結果として、規範意識に乏しい、そのなかの誰かがリーカーとなってしまうからだ。

 もしかすると、根絶のためには業界内からだけではなく、社会の仕組みからのアプローチも必要なのかもしれない。たとえば、著作権や秘密保持契約への違反の厳罰化、情報開示に至るまでの手続きの簡略化、さらにはすべてのインターネットアカウントの非匿名化といったアップデートがあれば、権利者が泣き寝入りしなければならないような状況は、改善へと向かうのではないか。

 とはいえ、おそらく先の2つが多くの賛同を得られる一方で、最後の1つは少なくない反発にあうだろう。しかしながら、インターネットを介した悪事を根絶へと向かわせるためには、こうした“最後の手段”を考慮しなければならないこともまた事実である。

 社会全体を見渡すと、インターネットアカウントが匿名であることを良いことに、誹謗中傷や名誉毀損、侮辱、業務妨害、著作権/肖像権の侵害といった犯罪行為が跋扈している。ゲーム業界で頻発するリークもまた、同様の背景のもと、繰り返されている犯罪行為であることがわかる。「このような社会が最後に行き着く先は、非匿名でインターネットを利用しなければならない世界である」。このことを意識できている人間は、意外と少ないのかもしれない。

 『Nintendo Switch Online』の新サービスをめぐるリーク騒動。情報漏洩を行う人間が悪いのはもちろんだが、私たち一人ひとりが、インターネットをめぐる犯罪行為にどのように向き合うべきかを考えていかなくてはならないのかもしれない。

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