RIDDLEの躍進、FENNELの謝罪…VCJ決勝から読み解く、VALORANT国内競技シーンの現状
「VALORANT Challengers Japan 2024 Split 2 Playoff Finals」が、2024年7月27日〜28日の2日間、有明GYM-EXにて開催された。激戦の末、RIDDLE ORDER(以下、RID)が初優勝。9月に開催される国際大会「VCT Ascension Pacific 2024」の切符を手にした。
RIDのVALORANT部門が発足したのは2023年12月のこと。結成してから、まだ日が浅いRIDの優勝に会場は湧いた。
序盤リードされるも、ポジティブなRIDファンたち
FENNEL(以下、FL)が2本先取したタイミングで、会場内のFLのファンにインタビューをしてみた。
「RIDはオフライン大会への慣れが足りず、緊張が見える」
「FLは落ち着いていて、普段の実力が出せている」
どうやらRIDの動きが芳しくないというのは、FLのファンたちも感じ取っていたようだ。
一方、RIDのファンにも話を聞いてみたが、意外にもファンたちは楽観的だった。
「RIDのメンバはいつもどおり、感情表現が豊か」
「今日もポジティブな雰囲気が伝わってくるから、きっと大丈夫!」
実際、試合中にRIDの選手たちは「ネガティブな話はやめてポジティブな話をしよう」と、円陣を組むなどしてチームの士気を高めていたそうだ。
敗北後、椅子から動けないGON選手
結果的に3試合目以降、Aace選手のクラッチプレイが試合の流れを変え、RIDが逆転優勝となった。試合後のインタビューでもAace選手は「MVPは俺です」と自画自賛していた。
2マップ目終了時には、チームの緊張した空気感を変えるため、JoxJo選手が語気を強めるシーンもあったそうだ。
また、Vorzコーチは「個人ではなくチームでMAP3から戦った結果、良かった」とコメントし、チームとしての結束力が勝利の鍵であったことを強調した。
一方、Split1を優勝してSplit2に有利な立場から挑んだFLだったが、惜しくも決勝で敗れることとなった。
現在の『VALORANT』の競技シーンでは、たとえSplit1で勝利しても、Split2に優勝しなければ無意味となる。
個人的に、試合後に印象的だったのは、FLのGON選手が椅子からしばらく動けなくなっている様子である。
試合後、選手たちがSNS上で発した言葉は「悔しさ」ではなく、ファンへの「謝罪」だった。FLに限らずだが、国内リーグの選手たちの多くは、常にファンのことを気にかけている。
今回のVCJにおいても、RID、FLともにファンとのつながりの強さを感じた場面が多かった。
これからVCJはどこに向かうのか
ここからは、先述した「ファンと選手のつながり」を踏まえつつ「これからVCJはどこに向かうのか」について考えていきたい。キーワードは「追加されたSplit3の意義」「相次ぐ国内チームの解散」だろう。
Split3については、「試合数が増える=アピールの機会が増える」なので、チーム間の移籍を狙う選手にとってはメリットになるが、オフシーズン中に別の活動(就職活動、配信活動)を予定していた選手にとっては、拘束期間が増えたともいえる。
現地のファンたちにも「追加されたSplit3についてどう思うか」を聞いてみた。
「見られる試合が増えるのはうれしい」
「シーズンオフが短くなり、選手が十分に休めなくなるのではないか」
「オフシーズン中のファンミーティングを楽しみにしていた」
素直に喜ぶ意見から、選手を気遣う意見、また「推し活に支障が出る」といった類の意見までさまざまだった。
これらのコメントを受けて、筆者は、Split3が追加され、試合数が増えることは、必ずしも盛り上がりに直結するとは限らず、むしろ特定のファン層(特に女性ファン)は減ってしまうのではないかと危惧している。
会場でも「試合が増えて、ファンミの機会が減るのがちょっと寂しい」と答えたのは女性ファンが中心だった。
ちなみに『VALORANT』部門の解散が相次いでいる国内リーグだが、他の地域リーグと比較すると、VCJの平均視聴者数は著しく高く(※2)、数字面では盛り上がっていると言える。
※2:海外掲示板のRedditのあるユーザーが作成した世界各地域のチャレンジャーズリーグのSplit 2の平均視聴者数ランキングによると、日本で行われた「VCJ 2024 Split 2」の約6.5万人が1位を記録。2位のフランスの6倍以上の視聴者数。
この盛り上がりについては、VCJが従来のeスポーツ経済圏に留まらず、「日本特有の“推し活”の経済圏と合流した」ことも理由のひとつだと考えている。
プロゲーマーの「アイドル化」に成功したVCJだが、その副作用として「試合をさせる」よりも「ファンと交流させる」ほうが顧客満足度につながるという、一種のジレンマに陥っているのかもしれない。
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