『VALORANT』が重きを置く“カルチャーと体験”ーー2体目の日本人エージェント実装の可能性にも言及した開発者インタビュー
5vs5のタクティカルシューター『VALORANT』の国際大会である『VCT Masters Tokyo』が6月25日に閉幕した。日本で開催される初の国際大会となった今大会は、日本代表の不参加という事態に見舞われながらも、日本ファンの「ノーサイドの精神」に基づいた熱い応援により大盛況のなか幕を閉じた。
リアルサウンドテックは、大会開催に伴い来日していた『VALORANT』のエグゼクティブプロデューサー・Anna Donlon氏と、シニアディレクター・Andy Ho氏にインタビューをする機会を得た。『VALORANT』における初心者の扱いやバランス調整、それからゲームとともに人気を誇るトレーラーや音楽について、制作におけるポリシーや気をつけていることなど話を聞いた。また、最後に「2体目の日本人エージェント実装の可能性」についても質問したので、ぜひ最後までお読みいただければ幸甚だ。
〈取材対象者〉
Anna Donlon(Riot Games Senior Vice President/『VALORANT』Executive Producer)
Andy Ho(Riot Games Senior Director/『VALORANT』Game&Product Direction)
ーー『VALORANT』は期間限定モードだった「スイフトプレイ」の常設化や、「チームデスマッチ」の実装など、初心者に向けた導線作りを意識的に行っているように感じます。実装の経緯などを教えてください。
Andy:おっしゃる通りです。私たちは常に、「初心者の方をどのように『VALORANT』に引き込めばいいのか」ということを考えています。挙げていただいたように「スイフトプレイ」などはそれを示す良い例ですね。プレイヤーが気軽に撃ち合いの仕方やスキルの使い方といった『VALORANT』のコアとなる部分を学べて、マネーシステムについてそこまで厳密にならずとも楽しめるので、導入にはおすすめできるモードです。
Anna:今回の「チームデスマッチ」を導入するにあたっては、初心者はもちろんですが、現在『VALORANT』を楽しんでくれているプレイヤーにもきちんと喜んでもらえるようなモードにしようと考えていました。
現在の『VALORANT』を遊んでいるプレイヤーたちは、「コンペティティブ」などで、シビアな戦いを楽しんでいますが、そこに新規プレイヤーがいきなり参戦し、 味方とVCを繋ぎながら、ゲームシステムや撃ち合い方、エージェントのスキルやその使い方を学ぶのは大変ですよね。
開発チームとしては、もう少しリラックスした環境の中で、学んでほしいというところもあるんです。そこで、もう少しプレイヤーがひと休みできるような、“緊張を緩和させるような形式のモード”にしようと特に意識してデザインしたのが「チームデスマッチ」というわけです。基礎的な部分から、エージェントの使い方や特性などをどういう風に使えばうまくプレイできるのかを、自分で考えながら上達できるような場所にしていただければと考えています。
Andy:Annaがいま言ったように、チームデスマッチは「『VALORANT』というものはどういったゲームなのか?」といったことを学ぶ助けになると思います。さらに加えて重要だと思っているのは、「なぜ『VALORANT』をプレイするべきなのか」を知ってもらうということ。
具体的にいうなら、「スポーツのような競技性を持った楽しさ」があるということです。高度な駆け引きが生まれる環境だからこそ、プレイヤーには上達への熱意が生まれるし、友だちとともに切磋琢磨する楽しさを感じられると思うんです。
このゲームは自分の時間を投資する価値のあるものだよ、ということをもっと多くの人に知ってもらって、長く『VALORANT』を楽しむプレイヤーになっていただきたいです。始めたばかりの人たちがそういった楽しさを知らないまま、すぐ挫折してしまうような先細りの環境にはしたくないと思っています。
ーー2022年頭のネオンの登場以来、長らくデュエリストが追加されてこなかったことが気になっていました。デュエリストは調整次第でゲーム性を崩壊させかねないポテンシャルを秘めているために、実装に対して慎重になっているのでは、と睨んでいるのですが、こちらはいかがでしょう?
Andy:じつは、今回追加された「デッドロック」に加え、2023年のうちにもう一体デュエリストを追加する予定です。デュエリストが追加されなかった理由についてですが……別にあえてデュエリストを避けてきたわけではないんですよ(笑)。
ただ、ゲーム全体のバランスを考えたときに、コントローラーやイニシエーター、センチネルなど、他のロールにも追加すべきエージェントがいたというだけのことなんです。いろんなロールを幅広く公平に取り扱おうとした結果、ここまでお待たせしてしまったというところになりますね。
ーー新エージェントを設計する際に、とくに調整に気を遣うロールはどのロールでしょうか?
Andy:それに関しては、すべてのロールが当てはまりますし、それぞれに慎重になるべきポイントがあります。『VALORANT』におけるロールには、エージェントをカテゴライズするだけでなく、“ゲームに色を添える”という役割もあると考えています。
それから、健全なゲームを作ることも我々の使命です。たとえば「デュエリスト6連続実装!」みたいなことはしたくないですから。ロール感の格差が出ないよう、公平性をもたらすこと。これが非常に重要だと考えています。