ゲームキャスター・岸大河、育ちつつあるeスポーツ“観戦文化”への思い「選手の背景や意図を汲み取ってくれたらうれしい」

ゲームキャスター・岸大河インタビュー

 株式会社 CyberZ、エイベックス・エンタテインメント株式会社、株式会社テレビ朝日が運営する国内最大級のeスポーツエンターテインメント組織「RAGE(レイジ)」は、8月5日にパシフィコ横浜展示ホールA・Bで『RAGE SUPER MATCH Presented By Rakuten Optimism』を開催した。イベント終了後、キャスターを務めた岸大河氏に、イベントの感想や日本におけるeスポーツの現在とこれからなどについて聞いた。

僕らの言葉を知ってほしいというより、選手のすごみを分かってほしい

――本日の感想から教えてください。

岸大河(以下、岸):今年はこういったイベントがそこまで多くなかったなか、本当にたくさんの方にお集まりいただきました。Masters Tokyo以外のところで、久しぶりにたくさんのお客さんと触れ合えたことが一番楽しかったです。どこかでお客さんも交えたりして何かできたらよかったんですが、お客さんが満足して帰ってくれたならいいかなと思います。

――今回はMasters Tokyo後の最初の大きなVALORANTのイベントでした。Masters Tokyoを経たことで変化したものは感じられましたか?

岸:今日来てくださったお客さんとMasters Tokyoを見た方の層がどれだけ同じなのかは、僕自身も分からないところではあります。それでも例えばストリーマーの配信を見るなどの影響で、今回来てくれたという方もいらっしゃると思います。これからまだ盛り上がっていくVALORANTにより興味を持ってくれた瞬間だと思うので、新規開拓にはつながったんじゃないでしょうか。

――日本におけるeスポーツの“観戦文化”という視点では、変化してきた部分はあるでしょうか。

岸:良い意味で“にわか”の層がすごくたくさん、(eスポーツ観戦に)入ってくださったと思います。 だからこそ、ゲームでどういうことが起きているのか、何がすごいのか、我々は伝える側として「伝わっているかな」という不安もあります。感覚的に見ている方が多いと思いますし、すごく主観的な話になってしまいますが、実況で的を射たことを言っても、誤った表現をしてしまっても、受け取り方が変わらない、特に気にしない層がまだ多いと感じています。だからこそ、我々が言っていることに対して理解を示してくれたりとか、選手の凄さを分かってもらえたりするように(レベルを)引き上げることも、僕らの役割です。僕らの言葉を知ってほしいというよりは、選手のすごみを分かってほしい。そのために僕らがいると思っています。

――日本ならではの良さと、逆にもっと良くなることができる部分はどのあたりにありますか?

岸:両チームを称えてくれるというのは、本当に素晴らしい文化だなと。Masters Tokyoで驚いたことなのですが、皆さん大事なところで拍手をしたり、声を出したりしていたんです。本当にいいところで声を入れてくれるので、僕らが盛り上げているというよりも、選手も含めて全員で盛り上がっているという状況でした。全体的にかなり良い文化にはなっているなと感じています。

 あえて言うとすれば、選手の背景や、選手の意図を汲み取ってくれたらうれしいですね。これはすごく難しくて、選手視点じゃないと分からない部分もたくさんありますし、実況・解説が神視点で見えているからこそ言えることもあって、もちろん僕らが間違っていることもある。でも極力、結果的に選手が失敗したとしても、何かしらの意図があったということを察しながら、僕は実況・解説をしているつもりです。「やらかした」「ミスをした」「なんでこう動いたの」じゃなくて、「こういう意図があったから仕方がなかった」というところまで分かってくれたらなとは思っています。ミスはミスとして伝えるようにしていますが、仕方のないものもありますから。もちろん、基本的には皆さんお行儀よく観戦してくださっていると思います。

 あともう一つ、日本だけではなく、世界中に素晴らしい選手がいることを、もっと知ってほしいですね。Championsでも皆さん、日本代表のZETA DIVISI0Nをもちろん応援すると思いますし、僕も日本人として日本の選手を応援したい気持ちもあります。でも、世界で戦う人たちは国籍に関係なく、世界一を目指してやっている。僕ももともと選手として世界一を目指してやっていましたし、どの地域でもその気持ちは一緒だと思います。その気持ちが分かるからこそ、全選手を僕らはピックアップしていきたいなと。出場している選手はみんな同じ気持ちだと思って、観戦してほしいですね。その結果、負けるチームも当然出てきますし、 そこにドラマがあるからこそ、観る価値があると思っています。

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