「AIはサポート、クリエイティビティは人に宿るもの」 ソニーG・吉田CEOが経営方針明かす

ソニー・吉田CEOが明かすグループ経営方針

 5月23日、東京・ソニーグループ株式会社にて、メディア、投資家、アナリストを招いた「2024年度 経営方針説明会」が開催され、ソニーグループ株式会社代表執行役会長CEO=吉田憲一郎が「経営の方向性」を、ソニーグループ株式会社代表執行役社長COO兼CFO=十時裕樹が「長期ビジョン」をスピーチした。

 吉田は「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動に満たす」というパーパスをキーワードに挙げ、これまでの取り組みを説明。「AIはクリエイティブをサポートするもの。クリエイティブは人に宿るもの」と話した。

 2023年度のグループ売上高の約6割がゲーム&ネットワークサービス、映画、音楽という3つのエンターテインメント事業であったことに触れ、そこにさらに注力しグループシナジーを加速させながら、金融事業などの業種にもおいてもさらなる進化を図るとコメント。

 そのための布石として、EMI Music Publishing、Crunchyrollの買収など6年間で1.5兆円の投資を行った。エンターテインメント・テクノロジー&サービスの分野では、営業利益の8割以上が、イメージング、スポーツ、バーチャルプロダクション、プロオーディオなどのクリエイションビジネスから創出されたものであることから、カメラに搭載されるCMOSイメージセンサー事業には、過去6年間で1.5兆円の設備投資を行った。

 また、CMOSイメージセンサーやEpic Games社のリアルタイム3D制作エンジン「Unreal Engine」の使用などによって、「リアルタイム」技術の向上を発表。例えばCMOSイメージセンサーはソニー製のカメラに搭載。3月にグラスゴーで開催された『2024世界室内陸上競技選手権大会』ではミラーレス一眼カメラ『α9 Ⅲ』が活用され、奇跡の一瞬を切り取った躍動感あふれる報道写真で、スポーツの感動を世界に届けることに貢献。また、デジタルシネマカメラ「VENICE」シリーズは映画業界でも採用され、映画『ゴジラ-1.0』のメインカメラとして使用された。

 「Unreal Engine」は、ユーザーのアクションに応じて、3DCGがリアルタイムに生成され、映像コンテンツのクリエイティブに欠かせない。それにより、リアルタイムのコンピューティング技術が可能に。ゲーム制作はもちろん、撮影現場での映像確認、さらに北米のプロスポーツリーグの生中継で選手の動きをリアルタイムで3Dアニメーション化することに使われ、新たなファンを獲得している。

 十時は、今後のテクノロジーの進化を見据えながら、10年後のソニーのありたい姿を描いた長期ビジョンを発表。

 まず「IP価値の最大化」として、ソニー・ミュージックエンタテインメント傘下のアニプレックスによる高品質なアニメ制作の加速を提言。A-1PicturesやCloverWorksと連携し、開発中のアニメ制作ソフト「AnimeCanvas」を使用することで制作環境の効率化と改善を図るという。

 また、1,300万人超の有料会員を抱える、日本アニメを海外に発信するポータルサイトCrunchyrollを通じて、海外に作品をさらに発信していくとのこと。さらにCrunchyroll社との共同でアニメクリエイターの育成アカデミーを海外に設立、Epic Gams社との連携で映像クリエイターを育成する計画もあるとのこと。

 過去8回開催され3,400万以上の投票数を集めたことのある「Crunchyroll Anime Awards」の開催や、『Horizon』や『God of War』などゲームの実写映画化の予定や、YOASOBIや乃木坂46、Stray Kidsなど個性豊かなアーティストのファンダムの拡大、アーティストの伝記映像作品化、リル・ナズ・XやThe Beatlesの伝記映画4本の同時制作などの予定も明らかにした。

 技術面においても、Unreal Engineを使用したリアルタイム3D処理についてや、『Marvel's Spider-Man 2』での活用を例に挙げながら、独自の音声認識ソフトを使った字幕の同期化などを説明。さらにクリエイターの発掘のため、インドやアフリカへの支援も行い、国籍性別を問わない人材の多様性を図ることをコメントした。

 説明会の後半ではメディア、投資家、アナリストからの様々な質問に答えた2人。最後に吉田は、「“リアルタイム”技術に価値を見いだし、世界を感動で満たすことに貢献していきたい」と締めくくった。

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