「情報発信にはエンタメが必要」ホリプロデジタル鈴木秀が語る、自治体×SNS発信の成功の要因

景井ひなを始めとした人気タレントを擁してタレント事業を展開する、ホリプロデジタルエンターテインメント。所属タレントはSNS活動にとどまらず、大手企業のCMに出演するなど、さまざまな舞台で活躍中だ。
近年はタレント事業で培ったエンタメやSNSの知見を活用して、自治体のプロモーションをサポート。運用する山梨県の公式TikTokアカウント「【公式】山梨県が良すぎる」はフォロワー2万4000人を誇る。(2024年12月5日時点)
今回は代表取締役社長を務める鈴木秀氏に、エンタメ業界にも大打撃を与えた新型コロナウイルス以降の会社経営、数年前から取り組んでいる自治体のSNS戦略、α世代へのアプローチを含めた今後の展望について話を聞いた。
タレントに必要なのは「インフルエンス力」と「芸能スキル」
ーー2019年にもインタビューさせていただきました。それからの5年間にはコロナ禍も含まれますが、会社としてどんな影響を受けましたか?
鈴木:コロナが流行しはじめた頃は、主軸であるタレント事業の舞台や撮影のお仕事がすべてキャンセルになってしまいました。そこで以前経営していた会社がSNSを活用した広告マーケティングに強かったこともあり、自社のタレントのSNSを強化することを考えました。あとはコロナ需要に対応した商品やサービスを販売していて、認知拡大したい企業も多かったので、いかにうちのタレントを起用していただくかにフォーカスしてなんとか生き延びました。
前回取材していただいたときはまだ景井ひなのフォロワーは80万人ほどでしたが、いまでは1000万人を超えています。(2024年12月5日時点)コロナ禍だからこその戦略で、世の中の状況に合わせた投稿を考えたことが功を奏しましたね。正直コロナがなかったら、今のフォロワー数はなかったと思います。本当に苦しい時期ではありましたが、経営判断を素早く行ったことで、いまの会社の土台をつくる事ができた期間になりました。
ーータレント事業はどんな形で行っているのでしょうか? 5年前と変化したところはありますか?

鈴木:成功も失敗も両方経験したので、まずは失敗のお話から。以前の取材で「タレントがビジネスを自分で展開できるように(=経営者に)なってほしい」と話しましたが、現在はトーンダウンしています。ここ数年でタレントの発言が社会に与える影響力が増していて、彼らが会社を自身でやることのメリットより、デメリットの方が大きくなっていると感じたからです。もう1つの理由は、ほとんどがグッズを販売するだけで終わってしまい、それ以上展開しないことが多いからですね。タレント性とビジネス性は相反するものだと思いました。全員を社長にする構想は撤回しました。
ーープレイヤーとしての活動と経営は分けるべきだと考えたんですね。
鈴木:次に成功の部分でいうと、以前もお話しした「インフルエンス力」と「芸能スキル」を磨くことにフォーカスしたことです。なにか1つ特技があったり、見た目が良かったりすると、フォロワーは一定数伸びていく。その分、知名度があることそのものの価値は減ってきました。そこで僕らは知名度などの「インフルエンス力」に加えて、演技やトークといった「芸能スキル」も重要視しました。弊社は7期目なのですが、実は専属タレントがまだ15名以下なんです。もちろんタレントが多ければ売り上げは上がりますが、僕らの強みは「インフルエンス力」と「芸能スキル」を兼ね備えていることですから。この信念を曲げなかったことが、弊社がいま生き残っている理由だと考えています。
ーータレントさんの数が大きくは変わらない中で、社員さんはかなり増員されていますよね。新たに入社された方たちは、どんな業務を担当されているのでしょうか?
鈴木:2軸目として成長している、企業向けのマーケティング事業を担当してもらっています。戦略設計から企画、撮影、編集、分析までをすべて行っているので、それらを担うメンバーを大幅に増強しました。