ビジネス的観点からも注目の『コーチェラ』　配信文化を成熟させたフェスに学ぶこと

　リアルサウンドテック編集部による連載「エンタメとテクノロジーの隙間から」。ガジェットやテクノロジー、ゲームにYouTubeやTikTokまで、ありとあらゆる「エンタメ×テクノロジー」に囲まれて過ごす編集部のスタッフが、リレー形式で毎週その身に起こったことや最近見て・試してよかったモノ・コトについて気軽に記していく。

　第22回は、春先の忙しない日々で積読の量が1ヶ月で1冊から15冊に激増してしまい、頭を抱えている編集長の中村がお送りします。

　毎週末、休日になると本を読むことが多い筆者。先述したように最近はバタバタとしており積読が消化できていないので、そろそろまとめてどこかで読む時間を……と思っていたところ、Xのタイムラインに流れてきた『Coachella』の文字。そうだ、今週末はコーチェラだった、本を読んでいる場合ではない！　と、早々に書を捨て（捨ててない）、街には出ずに画面の前にかじりつくことを決めたのでした。

　『Coachella』は『Coachella Valley Music and Arts Festival』を正式名称とした、アメリカ合衆国・カリフォルニア州のコーチェラ・バレーで1999年より行われている世界最大級の音楽フェス。2011年からはストリーミング配信もスタートし、現地へ行かずともグローバルなアーティストを見ることができるようになっているのです。ラインナップもバンドが大勢出るロックフェスというわけではなく、ポップス、ロック、クラブミュージック、HIPHOP、インディーといった様々なジャンルの世界的スターから期待の新人までが入り混じっており、新しい音楽に出会いたいという知的好奇心と、あのスーパースターのパフォーマンスを見たいという欲求を同時に満たしてくれるので、全力でオススメさせてください。

　また、『Coachella』は日本の音楽文化とも縁が深いフェスでもあります。

　初年度の1999年にCorneliusが出演して以降、チボ・マットや東京スカパラダイスオーケストラ、Bo Ningen、X JAPAN、おとぼけビ～バ～、Perfume、きゃりーぱみゅぱみゅ、宇多田ヒカルなどが出演。今年は新しい学校のリーダーズ、Awich、Number_i、初音ミク、YOASOBIと5組の名前が連なっており、日本にいる我々の視点でいえば、世界のオーディエンスに向き合う歴史的瞬間をみることができるわけです。

　そんな『Coachella』は先述した2011年のストリーミング配信開始以降、“フェスの音楽配信”という文化に大きな影響を与えたフェスでもありました。

　YouTubeでのストリーミング配信という今では当たり前になった文化を次第にアップデートし、マルチチャンネル配信や配信スポンサーの獲得、YouTubeと協力して技術的な挑戦を行ったり、チャット欄がより活発になったり、CMやアーティストインタビューなども作り込んだものが増えてきたり、マーチャンダイズの購入がリアルタイムでできるようになったりと、視聴者にとってはどんどん快適に、フェス側としても年々進化を続けてきました。

　その影響は客層やパフォーマンスにも次第に影響していきます。オーディエンスはフェス好きだけでなくライト層やインフルエンサーも増え、世界的アーティストは全世界に配信されることを前提に、いちフェスのステージとは思えないほどに予算をかけたセットや演出を展開するようになりました。つまりは配信する側・出演する側の双方にメリットがある、理想的な構造を作ることができたわけです。日本でもフジロックやサマソニがここ数年で配信に関するシステムを構築しているわけですが、『Coachella』はその最先端をいく存在です。世界最大級のエンタメとそれを成立させるテクノロジー・ビジネスの好例として、音楽好きはもちろん、ビジネス・テクノロジー的な観点からもこのフェスを見てみてはどうでしょうか。

https://www.youtube.com/@Coachella

　ちなみに筆者はThe Japanese HouseとThe Bethsで心地よい朝を迎え、Sabrina CarpenterからSkeptaを経て、Lil Uzi Vert・NEIL FRANCES・YOASOBIを状況に応じてハシゴし、Lana Del Reyで1日目を締めくくる予定。明日はTyler, the CreatorやアルバムをリリースしたばかりのVampire Weekend、K-POP勢からの出演となるLE SSERAFIMや来日公演も盛況だったOneohtrix Point Never、明後日はDoja CatにKhruangbin、Lil Yachty、88RISING FUTURES（Awich、Number_i、YOASOBI、新しい学校のリーダーズ、 Tiger JK、XIN LIU、Yoonmirae）などのパフォーマンスに期待しています。