「バイオハザード」シリーズ30年の軌跡 最新作『レクイエム』が背負う役割と、支持され続ける理由

カプコンは2月27日、「バイオハザード」シリーズの誕生から30周年を迎える3月22日を前に、『バイオハザード レクイエム』を発売した。
サバイバルホラーの金字塔として、生誕から30年が経ってもなお、広く愛されている「バイオハザード」。人気の秘密はどのような点にあるのか。シリーズのこれまでから、その魅力に迫る。
人気サバイバルホラー「バイオハザード」から最新作が登場
「バイオハザード」シリーズは、1996年にPlayStationで発売された同名タイトルを初作とするサバイバルホラーゲームだ。プレイヤーは、前代未聞のバイオテロによって発生したゾンビなどのモンスターたちと対峙しながら、舞台となっている場所からの脱出、仲間・家族の救出、事件をめぐる謎の究明の物語を、各作品の主人公の目線から見つめていく。
シリーズからはこれまでに、10作の本編(※)とさまざまなスピンオフ、リメイク/リマスターなどが展開されている。全世界における累計販売本数は、2025年12月31日時点で1億8,300万本超。初期の作品が成功を手にして以降は、映画やCGアニメ、マンガなど、メディアミックスも盛んに行われている。2002年、ミラ・ジョヴォヴィッチ主演で制作された映画『バイオハザード』の存在は誰もが知るところだろう。2022年にはNetflixで実写ドラマ化も果たした。
今回発売となった『バイオハザード レクイエム』は、本編の11作目にあたるタイトル。シリーズ全体を通じては、2024年にサービスを開始したモバイル向けシミュレーション『バイオハザード サバイバルユニット』以来、本編としては、2021年にPlayStation 5などでリリースされた『バイオハザード ヴィレッジ』以来の新作となる。
対応プラットフォームは、PlayStation 5、Nintendo Switch 2、Xbox Series X|S、PC(Steam、Windows)などで、価格は、通常版が税込8,990円、デラックスエディションが税込9,990円となっている。
ファンのあいだでは、過去の作品にも登場したキャラクター「レオン・S・ケネディ」が主人公の1人であることも話題を呼んでいる同タイトル。記念すべきタイミングで発売されるナンバリングがどのような体験を届けてくれるのか。注目が集まっている現状だ。
※本編にあたるすべての作品に順番どおりの数字が振られているわけではないが、便宜上、本稿では「ナンバリング」と表現する
ゲーム性/作品性の変化がターニングポイントに 「バイオハザード」が30年にわたって支持を獲得できた理由
いまやゲームフリーク以外にも広く知られるIPとなった「バイオハザード」シリーズ。誕生した当初はどちらかと言えば、含まれる体験の珍しさから手に取られる、エンターテインメント色の強い作品だったように思う。
当時のゲームカルチャーには、ホラーに特化したタイトルが(特にアクションやアドベンチャーの分野では)それほど多くなく、プレイヤーが本当の意味で怖さを味わえるようなものも珍しかった。そのようななかにあって、第1作『バイオハザード』は、「ゾンビをはじめとした得体の知れない存在との対峙」からくる恐怖を巧みに表現していた。こうした部分が評価され、同作はコア層を中心に広く人気を博していった。
そうした支持の性質を現代の言葉で表現するのであれば、“アテンション・エコノミー的”となるだろうか。アテンション・エコノミーとは「情報過多の社会では、情報自体の正しさや優劣よりも希少性が価値を持ち、目的化/資源化されるなど、より重要視されていく」というありさまを表した言葉だ。InstagramやTikTokといったSNSに散見される“映え”の文化はその象徴である。使われ方次第では、そうした風潮を批判するニュアンスを含むケースもある。エンターテインメント性に軸足を置いた評価基準であるとも言えるだろう。
「バイオハザード」に関しては、初期の作品ほど、このような制作アプローチ/訴求が強く、プレイヤーからの支持もそうした考え方に基づくものが多かったように感じている。その後、シリーズ作品は少しずつアドベンチャー性を強め、より物語を重視する方向へと進化していった。
このことは、新旧のナンバリング作品の比較から容易に見て取れる。その端緒とも言えるのが、『バイオハザード7 レジデント イービル』以降で採用されている一人称視点のシステムだ。同要素は、ゲームプレイを第三者として俯瞰的に見つめるのではなく、物語の主人公として主観的に体験するために盛り込まれているものであると推測する。これにより、シリーズは、主産物としてのシナリオへの没入感、副産物としての過去の作品とは異なる恐怖の演出を手に入れた。
「バイオハザード」は近年、誕生当初の支持基盤だったコア層以外にもプレイされる人気シリーズとなりつつある。今回発売となった『バイオハザード レクイエム』は、シリーズの誕生から30周年のタイミングで制作されたという背景も相まって、前作以上の注目度を誇っている。2026年屈指の話題作に推す声も少なくない。
なぜ「バイオハザード」シリーズは、多くの競合が淘汰されていくなかで、高い求心力を維持し続けることができたのか。ここには、先述したゲーム性/作品性の変化が影響していると考える。もし制作アプローチや訴求、プレイヤーからの支持の根幹が、誕生から変わらず、珍しさに支えられた恐怖であったとしたら。30年間、ペースを変えずに新作がリリースされ、かつメディアミックスが繰り返されるようなIPにはなり得なかったはずだ。
また、設定やテーマを変えることなく、ひと続きの物語を紡いできたことも、求心力の維持と拡大には前向きに作用した可能性がある。そのようにして描かれるシナリオは現在、「バイオハザード」の無二の個性となっている。揺るがぬ世界観の構築によって、シリーズは競合する他作品との差別化に成功した。
このように独自の進化を遂げられたのは、制作陣のシリーズへの愛着とたゆまぬ努力のおかげであると言える。一連の背景から、「バイオハザード」は恐怖とアクションだけに頼ったゲーム性からの脱却、ナラティブを前面に押し出した作品性の確立に成功し、年齢・性別を問わない支持を獲得するに至った。
現在、「バイオハザード」を「バイオハザード」たらしめているのは、珍しさに支えられた恐怖などではなく、このナラティブにほかならない。変化の方向性を間違わなかったことが、シリーズの求心力を支えているといっても過言ではないだろう。
紹介したアテンション・エコノミーという言葉が批判的な文脈で使われやすいのは、そこに含まれる興味や関心、注目が、対象の本質的な部分に根ざしたものではなく、一過性となりやすいからである。その意味において、シリーズの初期の作品は「流行り物として支持されていた」と言い換えることもできるのかもしれない。
しかしながら、その後のゲーム性/作品性の変化によって、「バイオハザード」は「恐怖」という享楽に酔うための“レジャー”ではなく、物語として線で楽しむ“作品”へと変化を遂げた。ここがシリーズの分岐点となったのは言うまでもない。
生誕から30周年のタイミングで発売される『バイオハザード レクイエム』は、アニバーサリーイヤーを彩るにふさわしい成功を手にできるだろうか。もし話題性どおりに好評を博すとすれば、おそらく世界観やシナリオがその評価点となるはずだ。
そして、同タイトルのリリースは、シリーズの次の10年のスタートでもある。サバイバルホラーの生ける金字塔として求心力を維持/拡大していくために、最新作『バイオハザード レクイエム』には重要な役割が求められていくことになる。



























