ドープ&サイケデリックな世界観から優れたナラティブまで――異彩を放つインディーゲームたちを先取り紹介

異彩を放つインディーゲームたちを先取り紹介

 先日、大盛況のうちに幕を閉じた『東京ゲームショウ2023(以下、TGS2023)』。同イベントにて出展された大型タイトルのプレイレポートや現場の模様、発表されたニュースなどについてはそれぞれの記事を参照いただくとして、本稿では、その取材の合間に個人的に試遊したインディータイトルの中から、特にお気に入りの作品を紹介したい。

 TGS2023では、インディーゲームコーナーが(いくつかのパブリッシャーを除いて)会場となる幕張メッセの9-11ホールにまとめられており、現場では国内外のさまざまなゲーム会社やクリエイターがブースを構え、自身が関わった作品をお客さんに紹介したり、開発者同士で談笑したりと、全体的にポジティブなムードであふれていた。本稿で紹介するのはあくまでほんの一部であるため、公式サイトの「インディーゲーム企画」ページ(https://tgs.nikkeibp.co.jp/tgs/2023/jp/program/indie/)などを参考に、ぜひ自分だけのお気に入りを見つけてみてほしい。また、もし少しでも気になる作品があれば、Steamのウィッシュリストに追加いただけると幸いだ。

『SONOKUNI』(2024年発売予定。開発:DON YASA CREW、パブリッシング:Kakehashi Games)

SONOKUNI - Official Trailer | TGS 2023

 本作を手掛けるDON YASA CREWはそもそも7人組の日本語ヒップホップ・クルーであり、ゲームを作ることを目的に生まれたチームではない(パンデミックを機に、メンバーがゲーム作りに興味を持ったのが制作のきっかけである)。そんなところから鮮烈で大きな期待を感じさせる作品が出てくるというのが、インディーゲーム文化の面白いところだ。

 『SONOKUNI』は見下ろし型のハードコア高速アクションであり、閉じられた空間の中で容赦なく襲いかかってくる一撃死の猛攻を、己のスキルと反射神経で切り抜けるプレイフィールと、2Dドット絵で描かれる肉体の断片や内蔵と思わしき物体が鮮やかに飛び散っていく暴力的でクールなビジュアルは、かのカルト的名作『Hotline Miami』を自然に想起させる。

 数えきれないほどに存在する同作のフォロワーと『SONOKUNI』が一線を画するのは、明らかに何か得体の知れない、禍々しいものに触れているような手触りにある。その要因となっているのは「バイオテクノロジーの発達した日本神話」という設定を見事に再現したアートスタイルと、殺戮のループに呼応するように言葉とビートが鼓膜に纏わりつく日本語ヒップホップのBGMが生み出す、徹底的にドープな空間作りにあるのだろう。試遊の時点ですっかりその世界観に病みつきになり、そのまま最初のボスを倒すところまで進めることができたのだが、クリア後に感じたのは「ゲーム1本分、この世界に浸かったらヤバいな」という、興奮と恐怖の入り混じった奇妙な感情だった。

Steam : https://store.steampowered.com/app/2054380/SONOKUNI/

『Ultros』(2024年発売予定。開発/パブリッシング:Hadoque)

Ultros - Reveal Trailer | PS5 & PS4 Games

 『Hotline Miami』といえば、その強烈なアートワークも同作を語るうえで欠かせない要素の一つだが、それを手掛けたEl Huervo氏によって描かれる世界を舞台とした横スクロールアクションゲームが、この『Ultros』である。開発を手掛けているのはスウェーデンの新興デベロッパーであるHadoque、ジャンルとしてはいわゆるメトロイドヴァニアであり、試遊時点では攻撃の切れ味や探索の在り方に『Hollow Knight』や『Dead Cells』といった名作に近いものを感じた。

 特に近接戦闘には強いこだわりを持っているようで、一つひとつのモーションの美しさやスムーズな動きはもちろん、スライディングやカウンターといったメカニクスの存在によって、戦略性や手ごたえ、スタイリッシュな爽快感をしっかりと感じられる仕上がりとなっている。試遊の後半ではダイナミックなボス戦が待ち構えており、ステージ全体を襲うギミックや多彩な攻撃などに翻弄されながら、ここぞというタイミングで決死の攻撃を決めるという、優れたメトロイドヴァニアらしい充実した戦闘を味わうことができた。

 とはいえ、メトロイドヴァニアはインディーゲームの代表的なジャンルであり、あまりのリリース量に飽和状態を迎えているといっても過言ではない。それでも本作に強い魅力を感じたのは、やはりゲーム全体を覆い尽くす強烈にサイケデリックな世界観だ。本作のビジュアルはこれまでの傑作に匹敵するほどに美しく緻密に作り込まれており、過剰な色彩や奇妙な質感、自然とSFと宗教的要素をミックスしたかのような禍々しい光景がプレイヤーをユニークな体験へと導いてくれる(倒した敵の内蔵を食べて体力を回復するというメカニクスも素晴らしい)。試遊だけではストーリーの全貌を掴めなかったが、子宮で目覚めるという展開や、ゲーム内で出会うシャーマンの存在からは、本作が生命、あるいは輪廻をテーマにしていることが想像できる。メトロイドヴァニア好きはもちろん、ひとつのアート作品としても注目の一作だ。

Steam : https://store.steampowered.com/app/2386310/Ultros/

『SCHiM - スキム -』(発売日未定。開発:Ewoud van der Werf、Extra Nice/パブリッシング:Extra Nice, PLAYISM)

『SCHiM - スキム -』PGS Reveal Trailer

 『SCHiM - スキム -』はオランダ在住の個人開発者であるEwoud van der Werf氏が中心となり、インディーゲームスタジオのExtra Niceとともに開発中のプラットフォームアクションゲームだ。昨年の東京ゲームショウでは「センス・オブ・ワンダー ナイト2022」の大賞を受賞しており、日本国内でも注目を集めている期待の作品である。

 なんといっても目を引くのは、「影から影へと飛び移る」というゲームシステムと、それにピッタリとフィットする、どこか優しい手触りを感じられる手書き風のアートスタイル。可愛らしい世界の中で、“静物にも生き物にも宿っている魂”である「スキム」(世界中のすべてのものがそれぞれのスキムを持っている)を操作して、影と影の間をピョンピョンと飛び跳ねたり、さまざまな物体に干渉する(例えば、自転車の影に入ってボタンを押すと、「チリン」とベルの音が鳴る)のは、それだけで楽しくてすっかり癒やされてしまう。

 だが、それ以上に驚かされたのが、わずかな試遊時間でも感じられたナラティブの強さだ。本作の物語は、ある人物の人生にずっと寄り添い続けてきたスキムが、突然その人と離ればなれになってしまうというもの。試遊ではその「人生に寄り添う」部分がしっかりと描かれており、まるでプレイヤー自身がスキムとなり、その人の人生を追体験するような感覚を味わうことができた。「別の存在」の視点を通して人生を見るというストーリーテリングの構造には、個人的には『Unpacking アンパッキング』や『Hindsight』といった優れたナラティブを誇る作品に通ずるものを感じる。触る感覚はもちろん、その中にある物語の体験にも期待したいところだ。

Steam : https://store.steampowered.com/app/1519710/SCHiM/

 本稿はここまでだが、実際の会場では数えきれないほどの世界中の作品が出展され、そのどれもがユニークな個性を放っていた。ぜひ、公式サイトの「インディーゲーム企画」ページ(https://tgs.nikkeibp.co.jp/tgs/2023/jp/program/indie/)などから、お気に入りの作品を見つけてみてほしい。

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