ときに恐ろしく、ときに愛らしく。特撮ジャンルの花形“怪獣”を読み解く、3本のインディーゲーム

特撮ジャンルの花形“怪獣”インディーゲームレビュー

 季節も本格的に冬を迎えているが、先日、特撮ファンを賑わせる大発表が行われたのをご存知だろうか。その内容とは、日本が生み出し、ともに半世紀以上愛され続けている2大怪獣「ゴジラ」と「ガメラ」の新展開である。

【特報映像】『GAMERA -Rebirth-』ガメラ、復活ーー。

 思い返せば、2022年は年間を通して特撮コンテンツが盛り上がった一年だと言える。庵野秀明監督が手がけた『シン・ウルトラマン』の公開をはじめ、異色のコラボ展開で話題を集めた『ウルトラ怪獣 モンスターファーム』の発売など、通年で放送中の仮面ライダー/ウルトラマン/スーパー戦隊シリーズを含め、各種メディアで特撮ジャンルが取り上げられる機会が多かったように思える。

 また、特撮とビデオゲームの関連性についても言及したい。両ジャンルは展開される媒体こそ違えど、メディアミックスという形式により、四半世紀以上も前から密接に結びついている。ビデオゲーム市場では「ゴジラ」や「ウルトラマン」といった版権モノはもちろん、『キング・オブ・ザ・モンスターズ』などのオリジナル作品も発売された。特撮の代名詞とも言えるヒーローや怪獣は、古くからビデオゲームと相性が良かったのだ。

 そこで本稿では、昨今のインディーゲーム市場で確かな存在感を放つ”怪獣ゲーム”にフォーカス。特徴的な3本を取り上げ、そのゲーム性や魅力を紐解く。

GigaBash

 数ある怪獣ゲームのなかでもアクション作品はとりわけ人気が高く、これまでにも「ゴジラ」シリーズを筆頭に良作(ときには迷作も)が作られ続けてきた。そのエッセンスを踏襲しつつ、美麗なグラフィック表現をともなって生まれたのが、大戦アクションゲーム『GigaBash』だ。今年の夏にリリースされたばかりの新作だが、早くも「ゴジラ」との正式コラボが発表になったりと、クオリティの高さでユーザーから注目を集めている。

 「怪獣映画からインスパイアされた」と公式が銘打つとおり、本作はアリーナ型のバトルフィールドを舞台に、多種多様な巨大生物が激戦を繰り広げる。約10種類のキャラクターたちは外見にくわえて性能が異なり、それぞれに得意なファイトスタイルも設定されている。近距離のパワーファイトに長けたもの、中遠距離から光線技で撹乱するもの、人類の叡智が結集した巨大ロボット……など、王道から変わり種まで、一通りの怪獣が揃っている。その戦いぶりは(良い意味で)純度100%の暴力。建造物を破壊しながら暴れまわる様子が、否応なしにアドレナリンの分泌を加速させるだろう。

 なお、『GigaBash』のストーリーモードは”怪獣”の視点で話が進むため、人類側が必然的に敵として描かれている。ゆえに、人間に対する遠慮は無用。むしろ作中では自然を破壊する人類の方が悪なので、圧倒的な腕力をもって徹底的に”分からせる”のが吉だ。

GigaBash(Steam)

Kaiju Wars

 『GigaBash』は怪獣側の視点に立ったアクションゲームだが、『Kaiju Wars』は一転して、”人類が世界を救う”ストラテジーゲームとなっている。プレイヤーは戦略兵器を携えた防衛チームを指揮し、凶暴な怪獣から都市部を防衛しなければならない。将棋やチェスのように盤面へユニットを配置し、怪獣の侵略ルートを先回りして妨害する工夫が求められる。

 怪獣vs人類という構図は特撮ジャンルにおけるスタンダードだが、『Kaiju Wars』における人類は、序盤からかなり窮地に立たされている。市街地を蹂躙する怪獣の前では戦略兵器など無に等しく、ピンチを救ってくれる光の巨人が現れることもないからだ。計5種類の怪獣は種族こそ違えど、”人類に立ちはだかる最大の障壁”という点で共通している。ゆえにプレイヤーは怪獣を倒すのではなく、撤退の可能性にかけて奮戦するほかない。

 キャラクター間に設けられた超えようのない性能差により、怪獣の恐怖が十分に味わえる『Kaiju Wars』。マップエディター機能を使えば、自分だけのミッションを手軽に作成できるのも嬉しい一作だ。

Kaiju Wars(Steam)

Kaichu - The Kaiju Dating Sim

 3本目は、まさかの”恋愛シミュレーション”。もちろん学園モノではなく、主役はれっきとした巨大怪獣である。その名も『Kaichu - The Kaiju Dating Sim』。純粋な愛に興味を持つ怪獣「Gigachu」を操り、計6種類の怪獣たちとラブロマンスに没頭。コミュニケーションを交わし、生涯を添い遂げるパートナー選びに奔走していく。タイトル名の通り、全編にわたって怪獣の恋愛模様をフィーチャーしている点が本作の独自色を最大限に強めている。

 ゲーム開始後のルートはプレイヤーの手に委ねられているため、自由に好きなロケーションへおもむき、お目当ての怪獣とデートすることができる。デート中は求愛ダンスでお互いの相性を確かめる、初めての共同作業で建築物を破壊する……などなど、いずれも本作でしか見られないユニークなものばかり。時には防衛軍がGigachuの恋路を妨害することもあるが、”2体の怪獣が愛の力で兵器を破壊するという”、恋愛映画顔負け(?)のシチュエーションもあるから驚きだ。

 愛らしいアートワークと怪獣×恋愛シミュレーションという唯一無二のゲーム性が特徴的な『Kaichu - The Kaiju Dating Sim』。暴力性や格好良さを表現した怪獣ゲームと比較すれば異色な存在かもしれないが、「怪獣だって恋をするのではないか?」という発想力、そしてしっかりと恋愛シミュレーションとして落とし込んだ開発者の意気込みが詰まった力作と言えるだろう。

Kaichu - The Kaiju Dating Sim(Steam)

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