佐久間宣行が星野源&若林正恭との『LIGHTHOUSE』で感じた“セルフケアの重要性”  「共感性が高いことは大事だが、この時代に生きるのは大変」

佐久間宣行『LIGHTHOUSE』制作の裏側

星野源、若林正恭、そして佐久間宣行に訪れた“変化”

――番組タイトルでもあり、星野さんと若林さんのユニット名でもある『LIGHTHOUSE』は、どのような理由で付けられたのでしょうか。

佐久間:「灯台下暗し」とも言いますけど、それこそ星野さんと若林さんを表現するのに、人を照らしながらも足元は真っ暗なふたりだなと思っていたんですよね。それで企画書に書いたんですよ。最初は『星野と若林の1year』って仮タイトルだったんですけど、何かユニット名があったほうがいいなと思って。

――「人を照らしながらも足元は真っ暗」とおふたりのことを表現されましたが、佐久間さんから見た星野さんと若林さんの共通点は、ほかにどんなものがありますか?

佐久間:ふたつあります。ひとつは、繊細で柔和なように見せてめちゃくちゃファイターなところ。根性がすごいと思います。雰囲気や口調の柔らかさがありながら、そこに隠れた闘志がハンパない。だからおふたりと話すときは、とても緊張するんです。

 もうひとつは真逆で、世の中の痛みを全部自分自身の痛みのように感じてしまうところ。人のつらさもダイレクトに感じてしまって、ひいては自分の責任とまで感じてしまう。共感性が高いことはクリエイターとしては大事かもしれませんが、この時代に生きるのは大変だろうなと思います。

――全話を通しておふたりには変化があったように見えますが、最終的に、どちらかといえば若林さんは外側に広がって、星野さんは内側に思考が深まった結果となったように感じました。

佐久間:星野さんの場合は「曲を作る」という選択肢になっただけだと思いますね。会話によって考えたことや感じたものを溜め込んで、曲にして外に出した。若林くんはまた別の形で外に出ていて、そのふたりの対比を番組の中で見せられたのが面白いなと思います。

――星野さんが内へ、若林さんが外へというわけではなく、おふたりの表現方法が違うと。

佐久間:その通りです。曲を生み出していく星野さんと、笑いとして開いていく若林くん、それぞれの表現方法だったというわけですね。

――とはいえ、『#6 LIGHTHOUSE』で若林さんが話した決心は、あまりにも大きなことだと思います。でも、『#3 Christmas プレゼント』までの若林さんは決心するどころか、あらゆる判断を他者に委ね、諦めてしまったかのようにも見えました。なぜあそこまで大きな変化が訪れたのでしょう。

佐久間:やっぱ『#3』での、星野さんとの会話が大きかったんじゃないかな。あの会話の内容を、年末年始に自分の中で考えたんだと思います。ちょうどその時期に「オードリーのオールナイトニッポン in 東京ドーム」をやることも決めて。

 『#5 ドライブと決意』でも話していたように「オードリー」というコンビについてもう一度見つめ直したからこそ、『#6』であの決心を話したんだと思います。

 やってないことをやって人から笑われる人生のほうがいいっていう、自分のなかでずっと決まってたけど言えなかった結論にたどり着いたんだと思うんですよね。

――つまり、会話を経て考えた結論ではあるけれど、急に思い立ったというよりは、言えるようになったと。

佐久間:そうだと思います。言えるようになったし、言っても星野さんが受け止めてくれたし、星野さんだけじゃなく、みんなにわかってもらえるんだと思ったんじゃないかな。

――若林さんの葛藤に対して、佐久間さんも思うところがありましたか?

佐久間:そうですね。大抵の人は40代半ばくらいで自分と向き合って、本当に楽しいと思うことや、50歳を超えてもやっていけると思えるようなことを見つけないと、そこからけっこう大変だと思うんですよ。そうしないと、疲れ果てていっちゃう気がするから。僕も45歳で会社を辞めてますからね。

 だから『LIGHTHOUSE』は、星野さんや若林くんのファンだけじゃなく、たくさんの人に観てもらいたい。自分の人生を振り返って決断をするドキュメントでもあるから、いろんな人にとって生き方を考えるきっかけになると思うんです。

 でもドキュメンタリーとしてあんまり深刻さを出すと、観てくれる人が構えてしまうと思ったので、エンタメとして笑える番組だということをできるだけ伝えたいと思っています。

――ちなみに、星野さんや若林さんだけでなく、佐久間さんご自身が『LIGHTHOUSE』を通じて感じた変化はありますか?

佐久間:もうちょっと、自分を大事にしなきゃいけない。体調だけじゃなくメンタルも含めて自分で守らないとな、と思いましたね。

 星野さんと若林くんはそれぞれ悔しさやつらさを抱えた時期を乗り越えてきて、いまは実現できたこともあると思うけど、同時に病むようなことも多かった人だと思うんですよね。おふたりの実感以上に食らってきたものがあると思うし、ふたりだけじゃなく、多くの人がそうだと思うんです。

 現代社会を生きる人って、結果は気にするけど自分の状態は気にかけられていない人が多いと思うし、僕自身もそういう人間でした。

 日本社会で働いていく上では、へこたれないことが第一みたいなところがありますけど、やっぱりセルフケアが重要というか、自分のことを大事にしないと潰れちゃうし、いい仕事もできないなと。前からそう思ってはいたけど、今回、改めて思い直した気がします。

■『LIGHTHOUSE』Netflixで世界独占配信中(全6話)

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